着付けを行う上で、「襟芯(えりしん)」というアイテムは欠かせません。
しかし、着付け初心者の方は、襟芯がどういったものなのか、どう使うのかなどが分からない方も多いでしょう。
そこで本記事では、襟芯に関する基礎的な知識を網羅して解説します。襟芯の概要や入れ方・種類・素材・保管方法・代用品を順番に解説していくので、ぜひ最後までお読みください。
襟芯の選び方も分かるようになるので、あなたに合う最適なものを見つけられるようになるでしょう。
着物の襟芯とは
襟芯とは、着物の下に着る長襦袢の襟に差し込むアイテムのことです。サイズは、幅が4~5cm程度、長さが80~90cm程度です。
長襦袢の襟に襟芯を差し込むことで、襟元にハリが生まれ、着姿が美しく見えます。
反対に、襟芯なしで着物を着ると襟元にシワが寄ったり、形が崩れてよれたりしてしまいます。
つまり、襟芯は襟の形を綺麗に仕上げるために欠かせない小物なのです。正しい使い方を知り、美しい着姿を目指しましょう。
着物の襟芯の入れ方
襟芯の入れ方を知る前に、長襦袢の襟元に「半襟」がついているかを確認しましょう。
半襟とは、幅15cm~20cm程度、長さ100cm~110cm程度の襟のことで、基本的には着用者が後から長襦袢に縫い付けるものとなっています。
長襦袢には元々、地襟というものがついていますが、襟元が汚れないよう保護するために半襟を付けるのです。
まずは、半襟の付け方を確認していきましょう。すでに半襟がついている方は、「襟芯の入れ方」の章を読み進めてください。
半襟の付け方
半襟を手縫いでつける手順は、以下の通りです。
- 半襟にアイロンをかけます。
- 半襟の中心にまち針を刺し、長襦袢の背中心に合わせます。
- 中心から端に向かって、まち針をとめます。
- 縫い針に縫い糸を通します。
- 半襟の上から2mm程度の部分を、端から約5cm間隔で縫っていきます。
- 端まで縫い終わったら、玉留めをします。
- 長襦袢を裏返します。
- 長襦袢の襟の幅に合わせて、半襟を内側に折り込みます。
- 中心から端に向かって、まち針をとめます。
- 半襟の上から2mm程度の部分を、端から約5cm間隔で縫っていきます。
- 中心から半径10cmの範囲は、まつり縫いで縫います。
- 端まで縫い終わったら、玉留めをします。
上記の他、安全ピンや両面テープで簡易的に半襟を留める方法もあります。また、マジックテープやファスナーがついた半襟などもあります。詳しくは以下の記事で解説しているので、ぜひ参考にしてください。
襟芯の入れ方
襟芯は、下記の手順で入れましょう。
- 地襟と半襟の間の、長襦袢の内側の方に襟芯を差し込みます。
- 襟芯をどんどん奥に差し込んでいきます。
- 背中心から見て、襟芯が左右対称になるように整えます。
地襟と半襟の隙間は、長襦袢の外側と内側の2箇所がありますが、襟芯は必ず内側に差し込んでください。外側に差し込むと、襟芯が透けて見えたり、襟が凸凹したりする可能性があります。
着物の襟芯の種類
着物の襟芯には、ストレート型と湾曲型の2種類があります。それぞれの特徴やメリット・デメリットを確認していきましょう。
ストレート型
ストレート型とは、その名の通り真っ直ぐの襟芯を指します。
半襟の中で安定しやすく、襟回りがスッキリと見えるのがメリットです。
ただし、襟芯と半襟の幅が合わない場合は浮いてしまう可能性があるので、サイズについてはしっかりと確認する必要があります。
湾曲型
湾曲した形の襟芯を湾曲型と呼びます。
湾曲型の襟芯を使うと、衣紋が綺麗に抜けやすくなります。また、湾曲した形状が胸を包み込む点もメリットです。
デメリットとしては、ストレート型と比べて襟芯の中で浮きやすい点が挙げられます。襟回りをスッキリとさせるには、湾曲型の中でもさまざまなサイズや形状を試す必要があるでしょう。
着物の襟芯の素材
着物の襟芯には様々な素材が用いられます。今回は、主な4種類について確認していきましょう。
- 塩瀬
- 綸子
- プラスチック
- メッシュ
それぞれの特徴を詳しく解説します。どの素材が自分に合うか、読み進めながら検討してみてください。
塩瀬
塩瀬とは、細い糸を密にした経糸に、太い緯糸を平織りで打ち込んだ素材のことです。生地表面には横畝(よこうね)が現れている点が特徴です。
塩瀬の半襟は柔らかく、カーブを作りやすくなっています。ただし、柔らかいがゆえに、重い着物には耐えられずへたってしまう可能性があるので注意してください。留袖や振袖など、重量のある礼装には向かない場合が多いです。
塩瀬の半襟は、普段着着物や浴衣に適しています。
綸子
綸子とは、繻子織で織られた後染めの素材のことです。光沢と、手触りの柔らかさが特徴です。
綸子の半襟は厚手で、固さがあり、重い着物も支えられる耐久性があります。一方で、固さがあることで体には沿いづらくなるため、細身の方の場合、襟元だけが浮いて見えてしまう可能性があります。
綸子の半襟は、襟元をかっちりと仕上げたい方におすすめです。
プラスチック
襟芯のなかで最もよく使われるのがプラスチック素材です。プラスチックの襟芯は薄手ですが程よい固さがあり、表面はツルツルとしています。
また、プラスチックの襟芯は価格が最も安く、流通量も多いので初心者の方が試すのには最適な素材です。
折れ跡が付きやすい点はデメリットですが、正しく管理すれば問題ありません。
メッシュ
メッシュ素材の襟芯は通気性が良く蒸れにくいので、夏におすすめです。絽・紗・麻など盛夏の着物に合わせると良いでしょう。
反対に、メッシュの半襟は袷の着物にはあまり合いません。柔らかいので重量に耐えられず、襟元がくたっとへたってしまう可能性が高いです。
着物の襟芯の保管方法
襟芯は、着る着物や季節によって使い分けるため、使用しない期間は正しく保管しておく必要があります。
襟芯の主な保管方法は下記の2つです。
- クリップで留める
- ケースにしまう
それぞれ詳しく説明します。
クリップで留める
襟芯を保管する際は、クルクルと丸めてクリップで留めましょう。
洗濯バサミや着物クリップで留めるほか、ゴムで固定しておく方法などもあります。
ケースにしまう
クルクルと丸めた襟芯を、丸いケースに収める方法もおすすめです。収納専用のケースはないので、空き缶やペットボトルを切ったものや、ガムテープの芯などを活用してください。
なお、収納方法として襟芯を折りたたむことは絶対にNGです。折り跡がついてしまい、使えなくなってしまいます。
着物の襟芯の代用品3つ
着物の襟芯が無い場合は、代用品として下記の3つを使ってみてください。
- クリアファイル
- 厚紙
- 100均グッズ
順番に説明していきます。襟芯がなくて困っている方はぜひ参考にしてください。
クリアファイル
衣紋がきれいに抜けた気がするー!!
— らっと/ホンブチョー🦚 (@rararat83) July 24, 2021
掛け衿?がめっちゃ短くて持ってる襟芯だと長すぎたので、
クリアファイルを切って貼っての即席襟芯。
いや全然これでいいな。
イヤリングと腕時計、アイメイクもオレンジ🍊#rakimono pic.twitter.com/8Fy7fgaPn6
襟芯はクリアファイルで代用できます。クリアファイルを使った襟芯の作り方は以下の通りです。
- クリアファイルを幅4~5cm程度でカットします。
- 切ったクリアファイルをテープで接続し、長さ80~90cmになるよう調整します。
- 長襦袢に差し込み、余った部分をカットします。
使用するクリアファイルは、固めのものを選んでください。柔らかいクリアファイルだと着物の重さに負けてよれてしまう可能性があります。
厚紙
厚紙を襟芯の代用品として使う方法もあります。襟芯を作る方法はクリアファイルの時と同様で、幅を揃えて厚紙をカットし、長さが合うようつなぎ合わせるだけです。
厚紙の襟芯は、長襦袢に差し込む過程や着付けの最中に折れてしまう場合があるので慎重に取り扱いましょう。
また、繰り返し使うのには不向きなので、あくまで半襟がないときの代用品であることを覚えておいてください。
100均グッズ
100均グッズで襟芯の代用品を作ることもできます。
例えば、100均にはまな板シートやランチョンマットが売っています。上記で紹介した、クリアファイルや厚紙も購入できるでしょう。
これらを切ってつなぎ合わせることで半襟の代用品が完成します。
100均グッズを代用品として使いたい場合は、厚さ・大きさ・デザインを必ず確認しましょう。
厚すぎるものはカットしづらく、使い心地も固めになります。反対に、薄すぎるものは耐久性がなく、着物の重さに負けてしまいます。
また、大きさが足りないものは接続部が増えてしまい、強度に不安が残るので、大きなグッズを選ぶのがおすすめです。
デザインは、シンプルなものが好ましいです。派手な柄や色味のものは、半襟から透けてみえてしまう可能性があります。柄は無地で、色は透明もしくは白のグッズを選びましょう。
まとめ
本記事では、襟芯の基礎知識をひと通り解説しました。あたらめて記事の内容をまとめると以下のようになります。
- 襟芯とは、長襦袢の襟に差し込むアイテムのこと
- 襟芯は、地襟と半襟の間の、長襦袢の内側の方に差し込んで使う
- 襟芯にはストレート型と湾曲型の2種類がある
- 襟芯の素材は、塩瀬・綸子・プラスチック・メッシュの4つが主流
- 襟芯を保管する際は、丸めて留めるか、ケースにしまう方法がおすすめ
- 襟芯の代用品として、クリアファイル・厚紙・100均グッズが活用できる
本記事を通して、襟芯に対する理解は深まったでしょうか。
襟芯の使い方や、着付け全般のスキルは着付け教室で習うこともできます。着付けに精通した講師から直接教わることができるので、効率よく習得したい方におすすめです。
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