本記事では、化繊着物の特徴や魅力・注意点を解説しています。また、化繊の種類や洗い方・おすすめのコーディネートも紹介します。
化繊着物についての基礎知識を網羅しているので、ぜひ最後までお読みください。この記事を通して、化繊着物の知識が深めていきましょう。
化繊着物ってどんな着物?
化繊着物とは、化繊の生地で仕立てられた着物のことです。
化繊着物は比較的歴史が浅く、流通するようになったのは約30年前からとされています。当初は見た目が安っぽく着心地も悪かったため、化繊着物を好まない方もいましたが、今では技術が発展し、見た目・着心地ともに大きく改善されました。正絹着物と遜色ない仕上がりのものも少なくありません。
また、化繊着物の価格は3千円〜1万円程度とお手頃なので、さまざまな着物を着たい方からの人気も高いです。
そもそも化繊とは
化繊は「化学繊維」の略称です。
そもそも生地の素材は、化学繊維と天然繊維に大きく二分されます。
天然繊維は天然素材から得られる繊維であり、木綿・麻などの植物繊維や、正絹・ウールなどの動物繊維などがあります。
一方で化学繊維が指すものは、人工的に作られた繊維です。化学繊維は、合成繊維・再生繊維・半合成繊維に分けられます。各種類の詳しい解説については後述しています。
化繊着物の魅力
化繊着物の魅力は、主に以下が挙げられます。
- お手頃価格で購入できる
- お手入れしやすい
- さまざまなデザインを楽しめる
それぞれ詳しく説明します。
お手頃価格で購入できる
化繊着物の最大の魅力は、なんといってもその安さです。化繊着物は3千円〜1万円程度で販売されているので、一般的な洋服と同じ感覚で購入できます。
他の着物は数万円から数十万円、もしくは百万円を超えるものもあり、簡単には手を出せません。
しかし、化繊着物の価格帯であれば、着物に興味を持ち始めた初心者の方でも購入しやすいです。そういった意味で、化繊着物は着物・着付け文化の入り口としても大きな役割を果たしています。
お手入れしやすい
化繊着物は自宅で丸洗いできます。色落ちしづらく、シワ・縮みも起きづらいので、劣化を気にせず洗濯できるのは大きな魅力です。
「雨に濡れたらどうしよう…」「汚れないように気をつけないと…」という不安を抱えすぎることなく、気楽に着られるでしょう。
また、化繊着物は虫食いが発生しづらく、湿気にも強いため、保管も簡単です。洋服と同じタンスやクローゼットに畳んでしまっておけます。
さまざまなデザインを楽しめる
化繊着物は、他の着物と比べて製造しやすいためデザイン展開が豊富です。
また、近年登場した着物であることから、現代的なデザインのものも多く揃っています。好みのデザインを見つけるのにはうってつけでしょう。
価格がお手頃なので、コーディネートの幅も広げやすいといった意味でも、デザインを楽しみやすくなっています。
化繊着物の注意点
化繊着物の魅力は上記で説明したとおりですが、下記の注意点にも目を通しておきましょう。
- 着崩れしやすい
- 通気性が悪く、吸湿性・放湿性が低い
- 保温性が低い
一点ずつ詳しく解説していきます。
着崩れしやすい
化繊着物は生地が滑りやすいので、着崩れしやすいという注意点があります。長時間着物を着る用事がある場合は、化繊以外の着物を選ぶのが得策かもしれません。
また、生地が滑りやすいことから着付け自体の難易度も高いので、練習が必要です。反対に考えると、化繊着物での着付けをマスターすれば、その他の素材でも簡単に着付けができるようになります。
通気性が悪く、吸湿性・放湿性が低い
化繊は素材の特性上、通気性があまり高くありません。また、吸湿性や放湿性も低いです。よって、夏場は暑く感じたり、蒸れたりしやすいです。
長襦袢や肌襦袢の素材によって不快感を軽減できるので、夏場に化繊着物を着る際は肌着にこだわってみてください。
保温性が低い
化繊着物は保温性が低いため、冬場は寒く感じるかもしれません。
寒い時期に化繊着物を着る場合は、長襦袢・肌襦袢などの肌着や、コートで寒さ対策を行う必要があります。ウールや木綿など、保温性が高いものを検討すると良いでしょう。
化繊着物に使われる生地の種類
化繊着物に使われる生地は、主に以下の8種類が挙げられます。
- ポリエステル【合成繊維】
- ナイロン【合成繊維】
- アクリル【合成繊維】
- ポリウレタン【合成繊維】
- レーヨン【再生繊維】
- キュプラ【再生繊維】
- アセテート【半合成繊維】
- トリアセテート【半合成繊維】
各種類の特徴を見ていきましょう。
ポリエステル【合成繊維】
ポリエステルは、石油や石炭などを原料に合成される合成繊維の一つです。
世界で最大の生産量を誇ると言われている生地で、着物にもよく使われています。
ポリエステルは化繊の中でも特に耐久性が高く、熱に強いのが特徴です。一方で、毛玉ができやすかったり、静電気が起きやすかったりというデメリットも持ち合わせています。
ナイロン【合成繊維】
世界初の合成繊維である「ナイロン」。伸縮性に優れているため、歩行や起居などの動作が多い場合に向いています。また、ナイロンは軽くて涼感があるため夏にもおすすめです。
他の化繊に比べて変色が起きやすい点には注意が必要です。
アクリル【合成繊維】
アクリルは合成繊維の一種です。生地が比較的柔らかく、それでいて型崩れしづらいのが特徴です。吸湿性が低いので汗ばむ時期にはおすすめできませんが、冬場には活躍するでしょう。
ポリウレタン【合成繊維】
合成繊維のポリウレタンは、ねじりやひっぱりなどの衝撃に耐え得る化繊生地です。
しかし、日光や水分などには弱く、耐用年数は短めとなっています。
レーヨン【再生繊維】
レーヨンは、木材・パルプなどの原料を溶解し、再生することで作られる再生繊維の一つです。化繊のなかでは吸湿性が高いことで知られています。
シワになりやすいといった欠点があるものの、光沢の美しさや肌触りの良さから人気を集めています。
キュプラ【再生繊維】
再生繊維の一つであるキュプラ。レーヨン同様、肌触りが良く、美しい光沢を放ちます。レーヨンよりも吸湿性が高いと言われています。化繊着物の中では高価な方に分類されます。
アセテート【半合成繊維】
アセテートは、木材・パルプに含まれるセルロースの一部を化学改質して作られる半合成繊維の一つです。水や汚れに強いので、雨の日の外出に向いています。
耐久性が低いのでお手入れは丁寧に行いましょう。
トリアセテート【半合成繊維】
トリアセテートは、半合成繊維の一種です。接触冷感性があるため、着ていて涼しさを感じられます。光沢の美しさは絹に匹敵するほどです。
誤るとシワがつきやすい素材なので、洗い方や保管方法は他の化繊着物よりも慎重になる必要があります。
化繊着物の洗い方
化繊着物は、自宅の洗濯機で丸洗いできます。
洗う際は、化繊着物を洗濯ネットに入れて「おしゃれ着モード」で運転を開始してください。
なお、洗濯時に使用する洗剤はおしゃれ着用洗剤や中性洗剤をおすすめします。
洗濯後の脱水については注意が必要で、長く行わないことが大切です。20~30秒程度脱水したら、運転を停止して化繊着物を取り出しましょう。
まだ水分が多く残っているかもしれませんが、その状態で干すことで、水の重みによって着物のシワが伸びていきます。
長く脱水しすぎたり、乾燥機に入れたりすると、シワや縮みの原因となりかねないので注意してください。
化繊着物のコーディネート
化繊着物のお洒落なコーディネートを3つ紹介します。デザイン選びや小物との組み合わせを決める際の参考にしてみてください。
雨の日の化繊着物コーディネート
化繊着物は水に強いため、雨の日に着られることが多いです。本コーディネートもその一つです。深い緑色に控えめな柄が入っており、上品さがあります。ポリ着物とは思えない美しい光沢も見えます。
ランチで着る化繊着物コーディネート
ランチに行く際の化繊着物のコーディネートです。全面に花柄が施された着物に、無地の帯を合わせることで全体が引き締まって見えます。化繊着物は汚れてもすぐに洗えるので、食事のシーンにも最適です。
遊び心溢れる化繊着物コーディネート
化繊着物に猫の帯を巻いた、遊び心溢れるコーディネートです。普段着としての化繊着物であれば、このように帯や小物との組み合わせを想像力豊かに楽しむことができます。
化繊着物のよくある質問
化繊着物に関するよくある質問をまとめました。
※タップで質問の回答に飛べます。
化繊着物は格式高い場面に着ていっても良い?
化繊着物は格式高い場面に着ていっても問題ありません。実際、付け下げや訪問着などの準礼装は化繊で作られていることがあります。
ただし、着物に精通している方が多い場や、地域内・親族間のマナーやルールが設けられている場に行く際は、化繊着物の着用を避けた方が無難です。
化繊の着物の寿命は短い?
化繊の着物の寿命は、短くありません。着る頻度や保管方法にもよりますが、耐用年数は十年~数十年程度と言われています。
正絹や麻・木綿のように百年単位で着ることは難しいですが、寿命が短いとは言えないでしょう。
まとめ
本記事では、化繊着物の基礎知識を徹底解説してきました。
あらためて、化繊着物の魅力と注意点を下記にまとめます。
- お手頃価格で購入できる
- お手入れしやすい
- さまざまなデザインを楽しめる
- 着崩れしやすい
- 通気性が悪く、吸湿性・放湿性が低い
- 保温性が低い
また、一口に化繊着物といっても生地の種類によって特徴や質感が異なったり、さまざまなデザインがあったりするため、さまざまな楽しみ方ができます。
本記事を参考に、化繊着物を楽しんでみてください。
化繊着物についてもっと詳しく知りたい方は、着付け教室でプロから学んでみるのもおすすめです。以下のページで、初心者の方でも通いやすい人気の着付け教室を紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。