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着物のしつけ糸とは?取って良いもの・悪いものがある!

着物のしつけ糸とは?取って良いもの・悪いものがある!

新しい着物を購入した方から、「見たことのない糸が付いている!どうしたら良いの?」と相談を受けることが多々あります。

新しい着物に付いている糸は「しつけ糸」と呼ばれます。しつけ糸には取らなければいけない種類と、取ってはいけない種類があり、初心者の方に見分けるのは難しいです。

そこで今回は、しつけ糸の種類と見分け方、そして取り方を解説します

着物を新調した方・する予定の方はぜひ参考にしてみてください。

着物のしつけ糸とは

しつけ糸とは、着物を仕立てる際、ズレないよう仮留めしておくために使用した糸のことです。しつけ糸で固定した後に本縫いを行い着物を仕立てます。

では、なぜ本縫いの後もしつけ糸を外さないまま着物を販売しているのでしょうか?それは、しつけ糸が型崩れを防ぐ役割も持っているからです。

しつけ糸を付けたままにすることで、余計なシワがついたり立体感を失ったりすることなく、着物はきれいな形を保てるのです。

また、しつけ糸が付いていることで新品の証にもなります。着物が新品か中古品かを見分ける際に役立ちます。

しつけ糸には取って良いものと悪いものがある

しつけ糸には、取って良いものと悪いものがあることをご存じでしょうか。しつけ糸の種類は大きく2つに分けられ、それぞれ役割が異なります。

  • 大小しつけ
  • 飾りしつけ

各しつけ糸の役割と、取って良いか悪いかを解説していきます。

大小しつけ

大小しつけは、着物を着る際に取らなければいけないしつけ糸です。大きな縫い目と小さな縫い目が交互に縫ってあるため大小しつけと呼ばれています。ざっくりとした縫い目になっているので簡単に見分けられるでしょう。

基本的には、袖や裾・襟まわりなどに施されています。初めて着物を着る前は、大小しつけが残っていないか必ず確認しておきましょう。

飾りしつけ

飾りしつけは、取ってはいけないしつけ糸です。「ぐし縫い」という手法で細かく点線のように丁寧に縫われています。

飾りしつけは、基本的に黒留袖や色留袖・振袖・訪問着といった格の高い着物に施されています。

取ってしまうと、着物としての美しさが損なわれることはもちろん、型崩れが起きる原因にもなり得るため注意が必要です。

取って良いしつけ糸の見分け方

「大小しつけ(取らなければいけない)」と「飾りしつけ(取ってはいけない)」を見分ける判断基準は、以下の通りです。

  • 縫い目の粗さ
  • しつけ糸の位置 

それぞれ詳しく説明します。

縫い目の粗さ

縫い目が細かく、サイズや間隔・形状が規則的なものは飾りしつけであるとみなして問題ありません。取ってはいけないので気をつけてください。

一方で、しつけ糸の縫い目が粗く、サイズや間隔・形状が不規則なものは、ほとんどが大小しつけです。外すべきかどうかは、しつけが施されている位置によります。以下で詳しく説明します。

しつけ糸の位置

着物の表に出ている大小しつけは、基本的に外します。

ただし、着物の裏側に付いているしつけ糸は、大小しつけであっても外さないことを推奨します。表から見えない部分に付いているしつけ糸は、型崩れを防ぐために施されている場合が多いので、外さないのが無難です。

外すべきかどうか不安な場合は、着物を購入した呉服店に問い合わせて聞いてみると良いでしょう。

着物のしつけ糸の取り方

着物のしつけ糸を取る手順は以下の通りです。

  1. 手をきれいにする
  2. 着物を衣裳敷の上に広げる
  3. しつけ糸の端を切る
  4. しつけ糸を優しく抜いていく
  5. 再度、端でしつけ糸を切る

各ステップを詳しく解説します。

ステップ1.手をきれいにする

しつけ糸を取るときは着物の生地に何度も触れることになるので、手をきれいな状態に整えましょう。手を洗い、ゴミや汚れ・臭いなどが付いていないか確認してください。

また、手にささくれがないか・爪が割れていないかなども確認すると安心です。生地に引っかかって傷を付けてしまったら元には戻せません。

ステップ2.着物を衣裳敷の上に広げる

次に、着物を衣裳敷の上に広げてください。畳やフローリングに直置きすると、着物に汚れが付いたり、傷が付いたりする可能性があります。

しつけ糸を取る作業は、最初から最後まで衣裳敷の上で行いましょう

ステップ3.しつけ糸の端を切る

着物を広げたら、しつけ糸の端を探しましょう。

大小しつけが付いている箇所と、しつけ糸の始まる箇所は基本的に以下の通りです。

大小しつけの箇所しつけ糸の始まるところ
襟の縫い目
襟下(右)襟先の真下
襟下(左)襟先の真下
袖(右)たもとの振りの下
袖(左)たもとの振りの下
裾の端

しつけ糸が始まる箇所を見つけたら、糸切りバサミで切っていきます。

切る際は、着物の生地を傷つけないようにする必要があります。しつけ糸を指で優しく引っ張り、生地とは重ならない位置で切るのがポイントです。ただし、しつけ糸を生地から離しすぎた位置で切ると残った部分が目立ってしまうので、できるだけ根元部分を切るようにしてください。

ステップ4.しつけ糸を優しく抜いていく

続いて、端を切ったしつけ糸を抜いていきましょう。端を切ったことで大小しつけが緩むので、生地と糸の間に指を潜り込ませ、上に持ち上げるだけで簡単に抜けます。

しつけ糸を無理に引っ張ると生地が傷む原因になるので注意してください。簡単に抜けない場合はどこかで引っかかっている可能性が高いので、無理に抜こうとせず、糸が詰まっている箇所を見つけましょう。

ステップ5.再度、端でしつけ糸を切る

しつけ糸を優しく抜いていくと、反対側で留めている部分にたどり着きます。しつけ糸の端を糸切りバサミで切りましょう

しつけ糸を軽く上に引き上げ、生地と重ならない箇所で切るのがポイントです。また、できるだけ根元部分でしつけ糸を切ることも見栄えの面では重要です。

しつけ糸の取り方で失敗してしまったら…

「飾りしつけを取ってしまった」「大小しつけを取るときに着物を切ってしまった」など、しつけ糸の取り方で失敗してしまった場合の対処法を紹介します。

飾りしつけを取ってしまった

飾りしつけを取ってしまった場合、仕立屋に縫い付けをお願いできます

ただし、飾りしつけのぐし縫いは非常に繊細な技術を要するため費用が高くなることには注意が必要です。

着物をよく着る方の中には、あえて飾りしつけを取るという方もいます。よって、取ったままでいても大きく問題が生じることはありません。

ただし、黒留袖や色留袖といった格の高い着物の場合、親族間で飾りしつけの有無について言及される可能性も考えられます。あらかじめ周囲に相談し、外したままにするか、修復を依頼するか決めると良いでしょう。

大小しつけを取るときに着物を切ってしまった

しつけ糸を取る際に誤って着物を切ってしまった場合は、「かけつぎ」や「かけはぎ」といった手法で修復することができます。着物の修理専門店、もしくはかけつぎ・かけはぎの専門店に依頼してください。

専門技術がない限り、自身で修復することは非常に困難なので、必ずプロの手を借りましょう。

着物のしつけ糸に関するよくある質問

着物のしつけ糸に関するよくある質問をまとめました。

しつけ糸は男性に取ってもらうのが良いって本当ですか?

着物のしつけ糸は、誰が取っても問題ありません

芸者さんやホステスさんの場合、着物を購入してくれた男性のお客様がしつけ糸を取るという風習があるようです。

しつけ糸と着物の生地には同じ素材を使いますか?

着物のしつけ糸として用いられる素材は、正絹のみです。

よって、しつけ糸と着物の生地に同じ素材が用いられているということはありません。

着物は洋服とは違い、素材表示のタグが付いていないので、素材を知りたい場合は購入元に問い合わせるのが一番です。

中古の着物に大小しつけが残っているのはなぜですか?

リサイクルショップやフリマアプリなどで中古の着物を買った際に、大小しつけが残っている理由としては以下が考えられます。

  • 未使用品である
  • 大小しつけを取り忘れている

リサイクルショップやフリマアプリでは、中古品であっても未使用である着物が売られているケースがあります。購入時に確認しておきましょう。

また、以前の着用者が大小しつけを取り忘れているだけの可能性もあります。

いずれの場合も、表から見える大小しつけであれば取り外した方が良いことには変わりありません。

購入した着物をクリーニングに出す場合、しつけ糸はいつ取るべきですか?

購入した着物をクリーニングしたい場合は、あらかじめしつけ糸を取った上で出すことをおすすめします。付けたままだと予期せぬシワがついてしまったり、中途半端な位置でしつけ糸が切れてしまったりする可能性があります。

まとめ

本記事では、着物のしつけ糸についてひと通り解説してきました。

あらためて内容をまとめると、以下のようになります。

  • しつけ糸とは、着物を仕立てる際、ズレないよう仮留めしておくために使用した糸のこと
  • 大小しつけは、着物を着る際に取らなければいけないしつけ糸。大きなざっくりとした縫い目と小さな縫い目が交互に縫ってある
  • 飾りしつけは、取ってはいけないしつけ糸。「ぐし縫い」という手法で細かく点線のように丁寧に縫ってある
  • 大小しつけの中でも、着物の裏側に付いているものは外さない
  • しつけ糸の外し方で失敗した場合でも、専門業者に依頼すれば修復できる

本記事を通して、しつけ糸に対する理解は深まったでしょうか。この記事が、着物のしつけ糸について知りたい方の参考になれば幸いです。