冬に着物を着る機会があると、気になるのは「寒さ」ではないでしょうか。
5~10度前後の中、着物一枚で過ごすのは不安ですよね。
このような不安を解消するために、本記事では冬用着物2種類と着物用コート6種類・着物での防寒方法5つを解説します。
冬にぴったりの着物の柄も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
この記事を読めば、冬でも着物を楽しめるようになるでしょう。
冬に着る着物の種類
冬に着る着物は、袷(あわせ)とウールの2種類に分けられます。
袷(あわせ)の着物
袷とは、裏地が付いた着物のことです。一枚生地の単衣(ひとえ)とは違い、生地が二枚縫い合わさっているので、冬でも暖かく過ごせます。
袷の着物にはさまざまな格があるため、フォーマルからカジュアルまで幅広い場面で活用できます。TPOに適した格の着物を選びましょう。
ウールの着物
ウールの着物は基本的には単衣で仕立てられています。二枚縫い合わせるとボリュームが出過ぎてしまうからです。単衣仕立てでも保温性は十分で、冬の寒さを凌げます。
シワ・汚れがつきづらい点もウールのメリットです。自宅での手洗いも可能です。
その一方で、虫食いが発生しやすいというデメリットがあるため、保管時には必ず防虫剤を使いましょう。
ウールの着物を着用できるのはカジュアルな場面のみに限られます。冬の普段着として使いましょう。
なお、冬に適した着物の着方は着付け教室で習得することができます。冬に着物を楽しみたい方は、教室で習ってみてはいかがでしょうか。
冬におすすめの着物用コート
冬に着物一枚だけで過ごすのは寒くて大変です。着物用コートを着て防寒しましょう。主に以下の6種類があります。
- 羽織
- 道行(みちゆき)
- 道中着(どうちゅうぎ)
- 和装コート
- ショール
- ポンチョ・マント
それぞれの詳細を紹介します。
羽織
着物の上に羽織るカジュアルなアウターです。前が開いているため、羽織紐で留めて着用します。
羽織は洋服で言うカーディガンにあたるので、室内でも着用できます。
丈の長さや柄・季節によって種類が変わるのも羽織の特徴です。
冬は、裏地が付いた「袷羽織(あわせばおり)」や綿が入った「綿入れ羽織(わたいればおり)」を着ると良いでしょう。
道行(みちゆき)
襟が四角形に開いた着物用コートです。前をボタンで留めて着用します。
道行は外用のコートなので、室内では脱ぐのがマナーです。
ややフォーマルなコートなので、礼装に合わせて着るのが一般的です。ただし、小紋柄の道行や紬素材の道行は、カジュアルな普段着にも合わせられます。
道中着(どうちゅうぎ)
着物と同じように襟合わせをするコートです。前は、備え付けの紐を結んで留めます。
“道中着”の名称は「道中お気を付けて」という言葉に由来しており、旅路に着るのが一般的だったため、室内で着ることはありません。
基本的にはカジュアルなコートですが、無地の道中着・絵羽付けの道中着はフォーマルな着物に合わせることもあります。
和装コート
洋装のロングコートとほとんど同じ形をした着物用コートです。前は備え付けのボタンで留めます。室内では脱ぎましょう。
和装コートは洋装コートよりも襟まわりや袖まわりが広く作られているため、着物の上に羽織りやすくなっています。
柄は無地のものが多く、カジュアルからフォーマルまで合わせられます。
ショール
防寒用の肩掛けのことで、コート代わりに使用します。室内では肩から外しましょう。
着物用ショールを選べば間違いありませんが、着物の色・柄に合うものであれば、洋装用のショールを使用しても問題ありません。
ポンチョ・マント
どちらも、頭だけを出して着るアウターのことを指します。袖はありません。
ポンチョは丸みを帯びたフォルムをしており、女性らしさを演出できます。
マントは上半身全体を包み込むフォルムをしており体型が隠れるため、シャープな印象を与えられます。
かわいらしい印象を残したければポンチョ、大人らしい印象を残したければマントを羽織ると良いでしょう。
基本的にはカジュアルな着物に合わせますが、フォーマルな着物に合わせられるポンチョ・マントもあります。
着物以外で防寒する方法
暖かい着物や着物用コートを着ても寒い場合は、以下の防寒対策に取り組みましょう。
- インナーを着る
- マフラーを巻く
- 足袋用インナーを履く
- 防寒草履を履く
- カイロを貼る
順番に詳しく解説します。
インナーを着る
冬用の暖かいインナーを着ると、寒さが和らぎます。
着物用のインナーには、上下でつながっている「ワンピースタイプ」や、シャツとレギンスが分かれている「セパレートタイプ」などがあります。
ユニクロのヒートテックをはじめとした、洋装用のインナーを活用するのもおすすめです。
ただし、洋装用のインナーを着る際は、胸元や首元・袖口・裾先から見えないようにだけ注意してください。襟元が詰まったインナーや、七分丈~十分丈のインナーは避けるのが賢明です。
マフラーを巻く
着物は衣紋を抜いて着るため、首元から冷たい空気が入ってきます。
マフラーを巻き、寒さから首を守りましょう。スヌードやティペットのような、小ぶりで上品なマフラーがおすすめです。
フリンジマフラーや大判マフラーを使用する場合は、デザインがシンプルなものを選びましょう。派手なマフラーを巻くと、着物の華やかさと主張し合って全体のバランスが悪くなってしまいます。
マフラーを選ぶ際は、着物の美しさを邪魔しないかどうかをチェックしてみてください。
足袋用インナーを履く
着物時に足袋一枚と草履で外出するのは、洋装時に薄手の靴下一枚とサンダルで外出するのと同じです。想像するだけで寒さを感じます。
寒さから足を守るためには、綿素材・ウール素材の暖かい足袋を履きましょう。裏起毛の足袋などもあります。
保温・発熱素材の足袋用インナーもおすすめです。薄手のインナーであれば重ね履きもできるでしょう。
防寒草履を履く
草履はサンダルのような形状をしているので、冷気が足先に直撃してしまいます。
爪皮(つまかわ)が付いた防寒用の草履を履き、足先の冷えを防ぎましょう。冷気だけでなく、雪や雨からも足を守れます。
天(足を乗せる部分)が起毛している草履・裏に滑り止めが付いている草履などさまざまな種類があるので、好みや目的によって使い分けてみてください。
カイロを貼る
背中下部・ふくらはぎ下部・肩甲骨の間・おへその下にカイロを貼ると、効率的に全身を温めることができます。
上記4箇所に加え、日頃から冷えを感じやすい箇所カイロを貼り、寒さ対策をしましょう。
手先の冷えが気になる方は、貼らないタイプのカイロを持っておくとより安心です。
冬に合う着物の柄
ここまでは、着物の防寒について解説してきましたが、ここからは冬に合う着物の柄を紹介します。冬に合う着物の柄は、以下の5つが代表的です。
- 松竹梅(しょうちくばい)
- 雪輪(ゆきわ)
- 菊(きく)
- 椿(つばき)
- 水仙(すいせん)
それぞれの柄の意味や特徴を見ていきましょう。
松竹梅(しょうちくばい)
植物の松・竹・梅が施されている柄です。それぞれの特徴は以下の通りです。
- 松:冬場でも枯れずに緑の葉を付け、美しい状態を保つ
- 竹:成長が早く、寒い冬でも折れずに真っ直ぐと伸びる
- 梅:冬が終わると、他の植物よりも早く花を咲かせる
冬の寒さに負けず、逆境に耐え忍んでいる点で共通していることから、松竹梅は生命力の強さや忍耐力の高さを表す柄となっています。
また、松竹梅の由来である「歳寒三友(さいかんさんゆう)」は、「冬の寒い季節に友とすべき三つのもの」という意味を持っています。冬にぴったりの柄と言えるでしょう。
雪輪(ゆきわ)
雪を輪っか状で表した柄です。
「雪は豊年の瑞(しるし)」や、「雪は五穀の精」ということわざから分かる通り、雪輪は豊作を表しています。雪が施されている柄のため、冬におすすめです。
菊(きく)
菊の柄は長寿・無病息災の象徴です。菊が、奈良時代~平安時代に中国から薬草として伝来したことに由来しています。
菊は秋から冬にかけて咲く花なので、冬の着用が適しています。
また、菊の柄の種類は豊富で、菊をたくさん集めた「菊尽くし(きくづくし)」や菊を水に浮かべた「菊水(きくすい)」などがあります。同じ菊でも違った印象を楽しめるでしょう。
椿(つばき)
椿は平安時代に化粧品や薬として使われてきた歴史があり、今では不老長寿を意味するおめでたい柄として知られています。
冬から初春にかけて咲く花なので、冬によく合うでしょう。ひとつひとつの柄が大きいので、華やかな印象を残すこともできます。
水仙(すいせん)
水辺にひっそりと咲く花「水仙」。正月頃に満開となる花なので、冬の着用が最適です。
上品なイメージを演出したいときに向いています。柄の意味としては、長寿・知性などが挙げられます。
まとめ
本記事の内容についてまとめると、以下のようになります。
- 冬でも暖かく過ごせる着物は、袷とウールの2種類に分けられる
- 寒さ対策として、着物用コートを着ることも重要
- 着物用コートの種類はさまざまで、それぞれ形状や格が異なる
- コート以外には、インナー・マフラー・足袋インナー・防寒草履・カイロなどを使うと良い
- 冬の着物の柄は、松竹梅・雪輪・菊・椿・水仙など、冬に関連するものがおすすめ
本記事で紹介した寒さ対策を行いながら、冬でも着物を楽しみましょう。着物の柄やコートの形にこだわると、コーディネートの幅が広がりますよ。
この記事が、冬の着物について知りたい方の参考になれば幸いです。