「裾除けとは何?どんな種類があるの?」
「裾除けの着方が分からない!」
本記事を開いたあなたは、上記のようにお悩みではないでしょうか。
裾除けは着物を着る上で重要なアイテムですが、種類や着方を正しく理解できていない方は多いです。
そこで本記事では、裾除けの概要や役割・種類・TPO・着方をまとめて解説します。最後まで読み、自分に合う裾除けを選べるようになりましょう。
裾除けとは?
裾除けとは、長襦袢の下に着る下半身用の下着のことです。上半身用の下着である「肌襦袢(はだじゅばん)」と合わせて着用するか、上下一体になっているものを着用するのが一般的です。
江戸時代に考案されたもので、かつては蹴り出して歩くように使われていたことから「蹴出し(けだし)」とも呼ばれます。
また、一口に裾除けといっても形や素材にはさまざまな種類があり、好みのものを使い分けることができます。
裾除けの役割
裾除けが果たす役割は主に4つあります。
- 着物や長襦袢を清潔に保つ
- 裾さばきを楽にする
- 体型を補正する
- 寒さを防ぐ
それぞれ詳しく説明します。
着物や長襦袢を清潔に保つ
裾除けには、着物や長襦袢を清潔に保つ役割があります。というのも、着物や長襦袢は洗濯できないものが多く、一度汗・皮脂汚れが付くと簡単には落とせません。
一方、裾除けは自宅で洗濯できるような素材で作られているため、洗えば何度でも清潔に着用できます。裾除けは、着物や長襦袢を汚れから守る下着として重要な役割を果たしているのです。
裾さばきを楽にする
裾除けを着ると、裾さばきが楽になります。着物の裾が脚に絡んだりまとわりついたりしなくなるため、歩行時のストレスが減少するでしょう。
ただし、自身に合わない裾除けの形や素材を選ぶと、かえって歩きづらくなるケースもあります。裾除けの形や素材の種類については後述するので、読みながらどれが合うか検討してみてください。
体型を補正する
着付け方次第で、裾除けは体型の補正効果を発揮します。裾除けの腰部を体の線にピタッと当て、引き上げるように巻き付けることでヒップと下腹のボリュームを抑えられるのです。
体型が気になる方にとっては大きなメリットでしょう。着物はバストやヒップが目立たないほど似合うので、自身の体型に合わせて補正することをおすすめします。
寒さを防ぐ
着物の裾はスカートのように大きく開いているため、そこから空気が入り込むと体が冷えてしまいます。
しかし裾除けを着れば、その寒さを防ぐことが可能です。防寒グッズとして裾除けを着る場合は、ウールをはじめとした暖かい素材のものを選ぶとより効果を体感できるでしょう。
裾除けの形
裾除けの形は主に4種類あります。
- 腰巻タイプ
- パンツタイプ
- スカートタイプ
- ワンピースタイプ
それぞれの特徴を紹介するので、自身に合うタイプを見つけてみてください。
腰巻タイプ
腰巻きタイプは、昔からある標準的な裾除けです。名前の通り腰に巻いて着用します。
腰部には腰布(こしぬの)と呼ばれる15cm程度の布が付いており、それを使ってヒップや下腹を引き上げることで体型の補正ができます。裾除けで体型を補正したい方におすすめです。
腰巻きタイプは、カジュアルからフォーマルまでどんなシーンにも着用できます。
パンツタイプ
パンツタイプの裾除けはステテコのような形状をしており、スボンのように履くだけで簡単に着用できます。
パンツタイプの裾除けを着用すると脚同士の素肌の触れ合いを防げるため、夏場では汗によるべたつき・かぶれ等を防げるのがメリットです。冬には防寒効果や保湿効果も発揮します。
基本的にはカジュアル向きなので、友人との食事やお出かけの際におすすめです。
スカートタイプ
スカートのように履けるタイプの裾除けです。腰部がゴムや紐で引き締められるようになっています。
簡単に着用できる上に、パンツタイプとは異なりフォーマルシーンにも着ていけるので、着付け初心者の方におすすめです。
ワンピースタイプ
上半身用の肌着である「肌襦袢」と一体になった裾除けで、ワンピースのように着用できます。
前部にファスナーやボタンが付いているタイプや上から被るタイプなど、同じワンピースタイプでもさまざまな形状があります。いずれも着る手間や時間がかからない点が魅力です。
また、ワンピースタイプと似た「スリップタイプ」の裾除けもあります。肌襦袢と裾除けが一体になっているもので、着物のように前で合わせて着用するのが一般的です。
裾除けの素材
裾除けは、形だけでなく素材にもさまざまな種類があります。代表的な5種類を紹介します。
- 正絹
- ポリエステル
- 綿
- 麻
- ウール
1つずつ特徴を見ていきましょう。
正絹
正絹の裾除けは軽くてしなやかで、着心地の良さに定評があります。静電気が起きづらいので裾さばきが良く、快適に着用できるのも特徴です。
正絹は高級素材なので価格は高めですが、質の高さにこだわりたい方にはおすすめです。ただし、素材の特性上洗濯することは難しく、手洗いする必要があるので、毎日着物を着るような方には使い勝手が悪いかもしれません。
ポリエステル
ポリエステルの裾除けが持つ最大の特徴は、価格の安さです。お手頃価格で購入できるので、形や色・柄などさまざまな種類の裾除けを集めたい方に向いています。
ただし、他の素材と比べると通気性や吸湿性の悪さは目立ちます。また、ポリエステルは静電気が起きやすいため裾さばきに影響することも少なくありません。
とはいえ洗濯がしやすかったり、シワがつきづらかったりとメリットも多くあります。
ポリエステル製の裾除けは、一着は持っておくと便利でしょう。
綿
綿素材の裾除けはやさしい肌触りをしているため、着心地が良いです。通気性と吸湿性に優れているため、汗をかきやすい夏でも快適に着用できます。また、保温性が高いため冬は暖かく着ることができます。一年中心地よく着られる優れものです。
綿はシワがつきやすいというマイナスな一面もありますが、裾除けは外から見えないので問題ありません。
ポリエステルと比べると値段は張りますが、着心地を大切にする方にはおすすめです。
麻
麻の裾除けは清涼感のある着心地をしています。繊維が硬く伸びないので肌に貼りつきづらく、真夏でもべたつきません。べたつかないため裾さばきも良くなり、歩行時のストレスも軽減されます。
麻は硬さがあるため、はじめはゴワゴワとした着心地が気になるという方も一定数いますが、何度か着て洗濯していくうちに柔らかくなります。
汗によるべたつきが気になる方はぜひ麻の裾除けを試してみてください。
ウール
冬にピッタリなのがウールの裾除けです。保温性が高いため寒い日でも暖かく過ごせます。吸湿性も高いので、体が温まって汗をかいても蒸れづらく快適です。
一方、ウール素材のデメリットとして、伸びやすく縮みやすい点が挙げられます。洗濯表示のとおりにお手入れしないと、生地が伸びたり縮んだりして使えなくなるリスクがあるので注意してください。
基本的には、ドライコースでの洗濯か、ぬるま湯での手洗いを推奨されています。洗濯に手間がかかる場合が多いので、着物を普段使いする方は日々のお手入れが面倒になるかもしれません。
裾除けのTPO
着物や帯と同じように、裾除けにもTPOがあります。フォーマルとカジュアルでどのように使い分けるべきなのか、詳しく解説します。
フォーマルな場面
フォーマルな場面の場合は、白色の裾除けを着るのがマナーです。色や柄が入ったものは選ばないようにしましょう。
また、留袖や訪問着などのフォーマルな着物にパンツタイプの裾除けは合わせません。腰巻きタイプ・スカートタイプ・ワンピースタイプのいずれかを着用してください。
カジュアルな場面
友人との食事会やちょっとしたお出かけ等、カジュアルな場面ではどのような裾除けを選んでも問題ありません。デザイン性の高いものを選んでもOKです。
ただし、生地が薄い夏用着物の下に濃い色の裾除けを着ると透けてしまう可能性があるので注意してください。裾除けはあくまで下着なので、透けて良いものではありません。
裾除けの着方
裾除けには主に、腰巻タイプ・パンツタイプ・スカートタイプ・ワンピースタイプの4種類があります。4種類の中で、腰巻タイプ以外は洋服のように簡単に着用可能です。
ということでここでは、腰巻タイプの着方を1ステップずつ紹介します。
- 裾除けを体の後ろ側で広げて持ちます。
- 裾除けの裾がくるぶしに位置するよう、高さを調整します。
- 左前が右腰をちょうど隠す位置になるよう、裾除けの場所を調整します。
- 一度、左前を開きます。
- 右前を体にぴたりとあてながら、左腰の少し上をめがけて引きます。
- 左前を体にぴたりとあてながら、右腰の少し上をめがけて引きます。
- 中に入った裾除けの紐を取り出し、腰布を外側に折り返します。
- 体の後ろで紐をクロスさせ、引っ張りながら前に持ってきます。
- 体の中心で紐を蝶々結びします。
- 完成です。
ステップ5と6を行う際、下腹を持ち上げるように引くことで体型の補正ができます。体型が気になる方は試してみてください。
まとめ
本記事では裾除けの役割や種類・TPO・着方を紹介してきました。改めて内容をまとめます。
- 裾除けとは、長襦袢の下に着る下半身用の下着のこと
- 防汚・防寒・補正・裾さばきのサポート等の役割がある
- 裾除けの形は、「腰巻タイプ」「パンツタイプ」「スカートタイプ」「ワンピースタイプ」の4種類に分けられる
- 裾除けの素材は主に、正絹・ポリエステル・綿・麻・ウールの5種類である
- フォーマルシーンでは、白色でパンツタイプ以外の裾除けを着る
- カジュアルシーンでは、どのような裾除けを着ても問題ない
本記事の内容を参考に、自分に合う裾除けを見つけてみてください。裾除けは外から見えるものではありませんが、こだわって選ぶことで快適さが変わりますよ。