着物の名称は複雑なので、何を指しているのか分からないことが多々あるかと思います。
そこで本記事では、着物の名称を要素別に以下の順で紹介していきます。
- 衿に関する名称
- 袖に関する名称
- 身頃に関する名称
- 裾に関する名称
- 小物に関する名称
着物の名称を勉強したい方や、着付けの際に知らない単語が出てきて困っている方はぜひ参考にしてください。
図解付きで紹介しているので、一目見てすぐに分かるようになっています。
【※何度も見返す予定がある方は、ブックマークをおすすめします。辞書のような感覚で、気軽に開けて便利です。】
【衿】着物の名称
衿に関する着物の名称を紹介します。
衿先(えりさき)
衿の先端およそ20cm部分。
着付けの際、衿先を体にしっかりと付けることで着崩れしづらくなります。
衿幅(えりはば)
衿の幅。
衿幅は以下の3種類が主流です。
- 広衿(ひろえり):衿幅およそ11cm。着付ける際は半分に折ります。
- バチ衿(ばちえり):広衿を半分に折って縫い留めたもの。衿先に近づくにつれ、襟幅が広くなります。
- 棒衿(ぼうえり):広衿を半分に折って縫い留めたもの。衿幅は一定です。
掛け衿(かけえり)
地の衿の上から掛けてある衿。共衿(ともえり)とも言います。
長さおよそ90cm。衿の汚れや傷みを防ぐ役割を持ちます。
衿下(えりした)
衿先から褄先までの部分。立て褄(たてづま)・褄下(つました)とも言います。
衿下の長さは、基本的には身長の2分の1前後となっています。
衿肩あき(えりかたあき)
衿をつけるため、肩山に切り込みを開けた部分。
衿肩あきの長さは体型や好みによって変わりますが、通常は首周りの4分の1程度にします。
【袖】着物の名称
袖に関する着物の名称を紹介します。
袖幅(そではば)
袖の横幅。肩の袖付けから袖口までの長さ。
袖口(そでぐち)
着物から腕を出す部分。
モダンな着物では、袖口がレース状になっているものもあります。
肩山(かたやま)
肩の最も高い部分。前身頃と後身頃の境目です。
袖山(そでやま)
袖の最も高い部分。袖の前部と後部の折り目です。
袖丈(そでたけ)
袖山から袖下までの長さ。
袖丈の長さは年齢や好みによって変わりますが、通常は身長の3分の1程度です。
振袖の袖丈は、小振袖が約85cm・中振袖が約100cm・大振袖が約115cmとなっています。
袖付け(そでつけ)
袖と身頃を縫い付けた部分。
着物を仕立てる袖付けの長さによって袖丈が変わります。
振り(ふり)
袖付けの下の開いている部分。
男性の着物は、袖付けの下が縫い付けられており、開いていません。振りに該当する箇所は「人形(にんぎょう)」と呼ばれます。
たもと
袖の下半分の部分。
ハンカチや扇子などを仕舞っておくことができます。
【身頃】着物の名称
身頃に関する着物の名称を紹介します。身頃とは、着物の胴部を指す言葉です。
前身頃(まえみごろ)
身頃の前面の部分。
後身頃(うしろみごろ)
身頃の背面の部分。
上前(うわまえ)
着物を着た際に上に重なる部分。
左襟をはじめとした着物の左部分全体が上前にあたります(死装束を除く)。
下前(したまえ)
着物を着た際に下に重なる部分。
右襟をはじめとした着物の右部分全体が下前にあたります(死装束を除く)。
脇縫い(わきぬい)
前身頃と後身頃を縫い合わせた部分。
身八つ口(みやつくち)
身頃の脇の開いている部分。長さは平均13~15cmです。
男性の着物に身八つ口はありません。縫い合わさっています。
身八つ口には、体温調整の役割や衿元の着崩れを直す役割があります。
身八つ口に手を入れ、衿につながる部分を引っ張ることで着崩れを直すことが可能です。
衽(おくみ)
前身頃に重ねて縫い付ける約15cmの布のこと。衿から裾まで続きます。
衽を付けることで前の身幅が広くなり、着付けをしやすくなっています。
衽幅(おくみはば)
衽の幅。基本的には15cmです。体型によっては、7mm程度幅を広げることもあります。
肩幅(かたはば)
背中の中心から袖付けまでの幅。
裄(ゆき)
背中の中心から袖口までの長さ。肩幅・袖幅の長さの合計と等しくなります。
裄丈(ゆきたけ)とも言われます。
裄は、首の付け根から手首までの長さに1~2cm足した長さが適切です。首の付け根から手首までの長さを計測する際は、必ず肩の最上部を通過させて測るようにしてください。
抱き幅(だきはば)
身八つ口から衽の縫い目までの幅。抱き巾(だきはば)とも表記します。
抱き幅は胸囲を基に決定しますが、前幅マイナス1~2cm程度となることが多いです。
合褄幅(あいづまはば)
衿先の付け止まりから測る、衽の幅。
衽幅よりも7~15mm狭いです。衽幅が通常15cmなので、合褄幅は13.5cm~14.3cmとなります。
身丈(みたけ)
身頃の長さ。
肩山から裾まで、もしくは背中の中心の最上部から裾までを測ります。
身丈は、身長と同じ長さにすることがほとんどです。
【裾】着物の名称
裾に関する着物の名称を紹介します。
褄先(つまさき)
衿下と裾が交差する角。
前幅(まえはば)
前身頃の裾の幅。基本的にはヒップサイズの4分の1程度となります。
後幅(うしろはば)
後身頃の裾の幅。前幅+5cm程度が目安です。
【小物】着物の名称
ここからは着物本体ではなく、小物の名称を紹介していきます。
半襟(はんえり)
着物の下に着る長襦袢(ながじゅばん)につける襟のこと。
サイズは、幅が15cm~20cm程度、長さが100cm~110cm程度です。
半襟は、着物や長襦袢の襟に汗・皮脂汚れがつかないように保護する役割があります。
伊達襟(だてえり)
着物を重ね着しているように見せるための襟のこと。重ね襟(かさねえり)とも呼ばれます。
サイズは、幅が10cm~12cm程度、長さが120cm~130cmです。
伊達襟は、「喜びが重なりますように」という願いを込めてつけたり、おしゃれ目的でつけたりします。
帯揚げ(おびあげ)
帯枕や帯枕の紐を隠すための布。帯の上辺と着物の間に使うので、コーディネートのワンポイントとしても活用されます。
一文字結びや本結び・カモメ結びなどで結ぶのが主流です。
帯締め(おびじめ)
着物の帯が崩れないように固定する紐。着付けの最後に帯の中央で結びます。
帯締めを使用するのは女性のみで、男性は使用しません。
帯締めには平組・丸組・角組の3つの格があり、着物の格に合わせて使い分けます。
帯留め(おびどめ)
帯締めの上につけるアクセサリー。季節やTPOに合わせてお洒落を楽しむことができます。
ただし、帯締めはあくまで飾りなので着用必須ではありません。
帯留めを付ける際は、三分紐という細くて短い紐を使います。
通常の帯締めが長さ150cm程度・幅12mm程度なのに対し、三分紐は長さ130cm程度・幅9mm程度に留まります。
帯板(おびいた)
帯の形を整える板。伊達締めと帯の間に入れて使います。
帯板には前板と後板の2種類があります。
前板は帯を結ぶ際に必ず使い、後板はお太鼓結び以外の時のみに使うのが特徴です。
フォーマルな着物には幅広で長い帯板を、カジュアルな着物には幅狭で短い帯板を使うのが一般的です。
帯枕(おびまくら)
帯結びの際、お太鼓の形を作るためのアイテム。ガーゼタイプと紐タイプの2種類があります。
通常、お太鼓を華やかに見せたい場合は大きくて分厚い帯枕を、控えめに見せたい場合は小さくて薄めの帯枕を使います。
長襦袢(ながじゅばん)
着物の下に着るインナーウェアのこと。肌襦袢と着物の間に着ます。
露出防止やべたつき防止・防寒の役割を果たします。着物の下から少し覗かせることでオシャレさを演出することも可能です。
生地には絹や木綿・ポリエステルなどが使われます。
肌襦袢(はだじゅばん)
素肌に直接着る肌着のこと。長襦袢の下に着ます。
汗を吸収したり、着物に汚れがつくのを防いだりする役割を持ちます。
長襦袢とは異なり、肌襦袢は外から見えることはありません。
生地にはガーゼや綿・さらしなどが使われます。
裾よけ(すそよけ)
素肌に直接着る下半身の肌着のこと。長襦袢の下に着ます。
裾捌きを良くしたり、汗を吸い取ったりする役割を持ちます。冬は防寒の役割も果たします。
肌襦袢と一緒になっているワンピースタイプの裾よけもあります。
草履(ぞうり)
着物を着る際に履く履き物。底が平らで、鼻緒があるのが特徴です。
素材は革や麻などが主流となっています。
礼装時は色が金・銀・白地で高さが5~7cmある草履を履きます。普段着では色や高さの指定はありません。
足袋(たび)
草履を履く際に履く靴下のようなもの。
親指とその他4本の指を入れる部分が分かれています。
礼装時は白色の足袋を、普段着では色や柄が豊富な足袋をはくのが一般的です。
下駄(げた)
カジュアルな着物を着る際に履く木製の履き物。
鼻緒があり、底には歯がついているのが一般的です。中には平らな下駄もあります。
夏の浴衣や普段着に合わせて履く人が多いです。
衿芯(えりしん)
長襦袢の衿に差し込む板。衿の形を綺麗に整えるために使います。
プラスチック製やナイロン製・紙製のものなど種類が豊富です。
着る方の好みに合わせて、固め・柔らかめを選べます。
腰紐(こしひも)
着付けをする際に使用する紐。腰紐を腰部で締めることで着崩れを防げます。
素材はウールモスリンやポリエステル・絹などが主流です。
腰紐の代わりにウエストベルトを使用することもできます。
伊達締め(だてじめ)
着物や長襦袢の上に締める、幅広の紐です。着物・長襦袢の衿合わせを安定させるために使います。
幅はおよそ10cmで、長さは2m以上にも及びます。
着脱が簡単なマジックテープ型のものやクリップ型のものを使う方も多いです。
まとめ
本記事では、着物の名称を要素別に図解して紹介しました。
一つでも多くの単語を覚えて、着物や着付けをより楽しめるようになりましょう。
また、着物の名称や使い方について実践的に学びたい方は着付け教室に通うのも一つの手です。座学と実践を掛け合わせて、着付けの知識を一から学ぶことができます。
【※何度も見返す予定がある方は、ブックマークをおすすめします。辞書のような感覚で、気軽に開けて便利です。】