ネットで着物を購入する際は、サイズ確認が重要です。
人によって適切なサイズは異なるため、「大体これくらいかな?」と適当に選ぶと、まったくサイズが合わない可能性が生じます。
とはいえ、初めて着物を購入する方は、自分に合う着物のサイズが分からないでしょう。
本記事ではそんな初めて着物を購入しようと考えている方に向けて、着物の適切なサイズの算出方法を紹介します。
記事後半ではサイズが合わない場合の対処法も解説していますので、大きすぎる・小さすぎる着物をお持ちの方はぜひそちらもお読みください。
着物のサイズを表す単位
着物のサイズは、尺(しゃく)・寸(すん)・分(ぶ)といった単位で表されることがあります。聞き慣れない単位ですが、どのくらいの大きさを表すのでしょうか。以下で説明します。
尺(しゃく)
尺には、鯨尺(くじらじゃく)と曲尺(かねじゃく)の2種類があります。着物で用いられるのは鯨尺です。
鯨尺では、「1尺=約37.8cm」になります。
寸(すん)
1寸は、1尺の1/10のサイズです。
つまり、「1寸=約3.8(3.78)cm」ということになります。
分(ぶ)
1分は、1寸の1/10のサイズです。「1分=約0.38(0.378)cm」と計算できますね。
1尺=10寸=100分なので、サイズが分からなくなったら“尺”にまとめることをおすすめします。
例えば、3尺3寸3分は、3.33尺とまとめられます。
尺にまとめた後は、37.8を掛ければcm表記に変換できます。
「 3尺3寸3分 = 3.33尺 = ( 3.33 × 37.8 )cm = 125.874cm 」です。
着物のサイズ算出表
着物のサイズの算出方法を、一覧表にまとめました。
サイズについての詳しい説明や正しい測り方ついては後述しています。
身丈 | 身長 ± 5cm |
裄(ゆき) | 首の後ろの付け根 ~ 手首のくるぶし の長さ |
袖丈 | (身長 + 5cm) × 0.3 |
前幅 | 腰囲(ヒップ) ÷ 4 + 0~1cm |
後幅 | 腰囲(ヒップ) ÷ 4 + 5~6cm |
身丈とは?適切なサイズの測り方は?
身丈は、肩山から裾まで、もしくは背中の中心の最上部から裾までの長さです。
「身長 ± 5cm」が最適なサイズとなります。該当するサイズがなければ「身長 ±10cm」で計測しても構いません。
【身丈のサイズ一覧表】
身長 | 150cm | 155cm | 160cm | 165cm | 170cm |
身丈 | 145~155cm | 150~160cm | 155~165cm | 160~170cm | 165~175cm |
※あくまで参考サイズです。
裄(ゆき)とは?適切なサイズの測り方は?
裄は、背中の中心から袖口までの長さです。
最適なサイズは、「首の後ろの付け根から手首のくるぶしまでの長さ」になります。
具体的な測り方は下記の通りです。一人では難しいので、誰かにお願いして測ってもらいましょう。
- 腕を45度に開きます。
- 首を前に曲げたときに一番出っ張っている骨にメジャーの0cm目盛りを合わせます。
- 肩の後ろ(肩の出っ張りより2cm下)を通過します。
- 手首のくるぶしにメジャーの目盛りを合わせ、サイズを測ります。
- 左右差があるので、両腕とも計測してください。
【裄のサイズ一覧表】
身長 | 150cm | 155cm | 160cm | 165cm | 170cm |
裄 | 63~65.5cm | 64.5~67cm | 66~68.5cm | 67.5~70cm | 69~71.5cm |
※あくまで参考サイズです。
袖丈とは?適切なサイズの測り方は?
袖丈は、袖山から袖下までの長さです。
適切なサイズは、「(身長 + 5cm) × 0.3」で求められます。
最近では、身長や体型などに関係なく、統一して49cmで仕立てる方も少なくありません。
【袖丈のサイズ一覧表】
身長 | 150cm | 155cm | 160cm | 165cm | 170cm |
袖丈 | 46.5~49cm | 48~49cm | 49cm~50cm | 49cm~51cm | 49cm~53cm |
※あくまで参考サイズです。
前幅とは?適切なサイズの測り方は?
前幅とは、前身頃(まえみごろ)の裾の幅のことです。
「腰囲(ヒップ) ÷ 4 + 0~1cm」が最適な前幅のサイズです。
【前幅のサイズ一覧表】
身長 | 150cm | 155cm | 160cm | 165cm | 170cm |
前幅 | 22~25cm | 22~25cm | 23~26cm | 23~26cm | 24~27cm |
※あくまで参考サイズです。
後幅とは?適切なサイズの測り方は?
後幅とは、後身頃(うしろみごろ)の裾の幅のことです。
適切なサイズは、「腰囲(ヒップ) ÷ 4 + 5~6cm」で求められます。「前幅 + 5cm」と考えても良いでしょう。
【後幅のサイズ一覧表】
身長 | 150cm | 155cm | 160cm | 165cm | 170cm |
後幅 | 27~30cm | 27~30cm | 28~31cm | 28~31cm | 29~32cm |
※あくまで参考サイズです。
長襦袢のサイズ
長襦袢は、着物の下に着るインナーウェアです。
「身長 – 32cm」が適切なサイズになります。とはいえ、着物の下に着るものなので2~3cm程度の誤差は問題ないでしょう。
ただし、夏着物は生地が薄く中が透けて見えることもあるので、あまりにサイズが小さい長襦袢は避けるのが賢明です。
【長襦袢のサイズ一覧表】
身長 | 150cm | 155cm | 160cm | 165cm | 170cm |
長襦袢 | 118cm | 123cm | 128cm | 133cm | 138cm |
※あくまで参考サイズです。
着物のサイズが合わないときの対処法
お母様やお祖母様から譲り受けた着物や、ネットで購入した着物のサイズが合わなかった場合の対処法を紹介します。
身丈が長すぎる場合
身丈が長すぎると、必然的におはしょりが長く出過ぎてしまいます。
おはしょりの長さは人差し指1本分が最適です。それよりも長くなってしまった方は、以下の方法でおはしょりの長さを短く整えてください。
- 腰紐を、通常通り締めます。
- 長すぎるおはしょりを上に持ち上げ、生地の余りがない状態にします。
- 2の状態のまま、胸下で胸紐①を締めます。
- 2で持ち上げたおはしょりを下げ、形を整えます。
- おはしょりの長さ・形が整ったら、胸紐②を締めて留めます。
- あとは、いつも通りに着付けをすれば完成です。
身丈が短すぎる場合
着物を羽織った際に、裾が約15cm床に余っていれば、十分な長さのおはしょりが作れます。
それより短い場合は、腰紐を普段よりも低い位置で結びましょう。床に余った裾の長さが短いほど、腰紐を締める位置も低くします。限界値としては、腰骨まで下げてOKです。
低い位置で腰紐を締めると、おはしょりをたっぷりと出すことができます。
あとは、いつも通り着付けをするだけです。
裄が長すぎる
裄の長さは、手首のくるぶしが隠れる程度の長さがちょうど良いとされています。
それよりも長い場合は、衣紋の抜き加減をきつめにしたり、襟合わせを詰めたりして長さを短く調整しましょう。
長すぎる裄は、このような微調整しかできません。
あまりにも裄が長いようでしたら、着物屋さんで仕立て直してもらう必要があります。
裄が短すぎる
裄は、実は短すぎる分には問題ありません。日常生活を着物で過ごしていた時代では、動きの妨げにならないよう、裄が短めに作られていたからです。
現代でも、普段着や街着・おしゃれ着として着物を着る場合は、あえて短めの裄を楽しむのも良いかもしれません。
「普段着でも長めの裄が良い!」という方や、礼装の裄が短すぎる場合は、今から紹介する4つの方法を実践してみてください。
- 襟合わせを広めにする
- 衣紋の抜き加減を広めにする
- 羽織を着て袖口を隠す
- 袖口を軽くつまむ
裄が短すぎる着物は、長すぎる場合とは違って仕立て直すことができません。
小さな工夫を重ねて、短い裄の着物でもおしゃれに着こなせると良いですね。
身幅(前幅・後幅)が広すぎる
身幅が広すぎる着物をそのまま着ると、生地が余って締まりのない印象になってしまいます。
以下の手順で着付けを行い、スッキリとした着姿を目指しましょう。
- 上前の位置を定めます。右脚がちょうど隠れる程度が好ましいです。
- 脇縫いの位置が体の横に来ているか確認し、上前のバランスを整えます。
- 下前の位置を定めます。左足がちょうど隠れる程度が良いでしょう。
- 余った布は、体に巻き付けるのではなく、手前に折り返して挟み込みます。
- 先ほど決めた位置に上前をかぶせます。
- 腰紐を結びます。
- 両手を身八つ口に入れて、おはしょりを作ります。
- 左手は身八つ口に入れたままに、右手は身八つ口から手を出します。
- 左右の襟を持ち、真横に引いて襟を整えます。
- 胸紐を結びます。
- 背中側に余っている布を手前側に引っ張り、脇の下に持って行きます。
- 脇の下に集まった布を折りたたんで整えます。
- 胸周りの生地が余っていたら、胸紐の下から生地を引っ張りスッキリとさせます。
- 再び、脇の下に集まった生地を折りたたんで整えます。
- あとは、いつも通りに着付けをすれば完成です。
身幅(前幅・後幅)が狭すぎる
着物の身幅が狭すぎると、座った時や歩いているうちに裾が開いてしまいます。
裾すぼまりで美しい着型を保つためには、以下の2つの方法を試してみてください。
着物ベルトを活用する
着物ベルトを活用すると、裾の広がりを抑えられます。
- 長襦袢の上前に、着物ベルトのクリップを留めます。留める箇所は膝の高さあたりです。
- 着物ベルトを、体の後ろから一周まわします。
- 一周回したら、着物の下前で着物ベルトのクリップを留めます。
- 完成です。
着物ベルトの長さには十分な余裕を持ちましょう。キツくしすぎると歩けなくなってしまいます。
下前に足し布をする
下前の襟先・衽の横に足し布をすると身幅の狭さが気にならなくなります。
下前をしっかりと引っ張ることができるようになり、体に巻き付けやすくなるからです。
腰紐で留められるので、裾が開いていくこともありません。裾すぼまりの状態を綺麗に保てます。
まとめ
着物の最適なサイズについてまとめるとこのようになります。
【着物のサイズの算出方法】
身丈 | 身長 ± 5cm |
裄(ゆき) | 首の後ろの付け根 ~ 手首のくるぶし の長さ |
袖丈 | (身長 + 5cm) × 0.3 |
前幅 | 腰囲(ヒップ) ÷ 4 + 0~1cm |
後幅 | 腰囲(ヒップ) ÷ 4 + 5~6cm |
【着物のサイズ例】
身長 | 150cm | 155cm | 160cm | 165cm | 170cm |
身丈 | 145~155cm | 150~160cm | 155~165cm | 160~170cm | 165~175cm |
裄 | 63~65.5cm | 64.5~67cm | 66~68.5cm | 67.5~70cm | 69~71.5cm |
袖丈 | 46.5~49cm | 48~49cm | 49cm~50cm | 49cm~51cm | 49cm~53cm |
前幅 | 22~25cm | 22~25cm | 23~26cm | 23~26cm | 24~27cm |
後幅 | 27~30cm | 27~30cm | 28~31cm | 28~31cm | 29~32cm |
長襦袢 | 118cm | 123cm | 128cm | 133cm | 138cm |
※あくまで参考サイズです。
【着物のサイズの単位】
1尺 = 10寸 = 100分 = 約37.8cm
上記の表を活かして、ぴったりサイズの着物を選んでみてください。
万が一サイズが合わなかった場合も、記事内で紹介した対処法を実践すれば問題ありません。それでも不安な方は、呉服屋に行き、店員さんと一緒にサイズを選ぶと良いでしょう。
この記事が、着物のサイズについて知りたい方の参考になれば幸いです。