「今度訪問着を着る機会があるけど、着付けは自分でできるのかな?」
「自分で訪問着の着付けをしてみたい!」
本記事を開いたあなたは、上記のようにお考えかもしれません。
そこで本記事では、自分で訪問着を着付けする方法を解説します。必要な物も一覧で紹介しますので、すべて揃っているか確認してみてください。
そもそも、訪問着は自分で着付けできる?
訪問着の着付けは自分でできます。
着付けに必要な物をすべて用意し、正しい手順で進めていけば、訪問着は自分一人で着ることができます。ただし、美しく着るためには何度も練習が必要です。
訪問着の着付け方法については後述するので、読みながら何度も練習を重ねましょう。
訪問着の着付けに必要な物
訪問着の着付けに必要な物を一覧で紹介します。
リンクをクリックすると、それぞれの詳しい説明に飛ぶことができます。
- 訪問着:準礼装・略礼装として着用できる格が高い着物。
- 袋帯:フォーマルシーンに適した格の高い帯。
- 長襦袢:着物の下に着るインナーウェア。
- 襟芯:長襦袢の襟に差し込んで形を整える細長い板。
- 半襟:長襦袢に付ける襟。着物や長襦袢の襟を保護する。
- 伊達襟:着物を重ね着しているように見せかける襟。使用は任意。
- 肌襦袢:素肌に直接着るキャミソールのようなもの。
- 裾よけ:素肌に直接着る、下半身用の肌着。
- 腰紐:着崩れを防ぐために、腰部で締める紐。
- 伊達締め:着付けを安定させるために使う、幅広の帯。
- 帯枕:帯結びの際、お太鼓を形作るために使用する小物。
- 帯板:帯の下や間に入れる、シワを防ぐための板。
- 帯締め:帯結びが崩れないように固定する紐。
- 帯留め:帯締めに付けて使う装飾品。使用は任意。
- 帯揚げ:帯枕や帯枕の紐を隠すための布。
- 着物クリップ:主に背中心を合わせる際に使用するクリップ。
- 草履:フォーマルな着物に合わせる履物。
- 足袋:草履の下に履く靴下。
- 羽織:着物の上に羽織るアウター。着用は任意。
- 着物用バッグ:着物に合わせて持つバッグ。
上記アイテムを用意したら、いよいよ訪問着の着付けを始めましょう!
自分で訪問着を着付けする方法
必要な物を全て揃えたら着付けに挑戦してみましょう。
訪問着を着る手順は、大きく以下の4ステップに分けられます。
- 肌着類を着る
- 長襦袢を着る
- 訪問着を着る
- 袋帯を締める
各ステップの詳細を解説します。
最初は難しいかもしれませんが、何度も繰り返し練習することで慣れていきます。難しい箇所は立ち止まってゆっくり練習して構いませんので、分からないまま進まないように気をつけましょう。
肌着類を着る
訪問着を着る前に、まずは足袋や肌襦袢などの肌着類を着ます。
- 足袋の中に足を入れ、こはぜを留めます。
- 肌襦袢を着ます。
足袋は着付けの後に穿くと着崩れの原因になるため最初に穿きましょう。
また、肌襦袢を着た後には、必要に応じて補正をします。ただし、補正をしすぎると太って見える原因になるので注意が必要です。
長襦袢を着る
肌着類を着たら、次は長襦袢を着ます。以下の手順で着用してください。
- 長襦袢に襟芯を通します。
- 長襦袢を羽織り、袖に腕を通します。
- 握りこぶし一個分ていど、衣紋を抜きます。
- 右前になるよう、襟合わせをします。
- 胸下に腰紐をあて、体の周りを一周させます。
- 腰紐をグッと締め、体の正面で蝶々結びをします。
- 背中心を下に引き、長襦袢のシワやたるみを取ります。
- 伊達締めを体の周りに一周させ、一結びします。
長襦袢にシワが寄った状態だと着姿全体に影響が及ぶため、丁寧に着ることを心がけましょう。
最初のうちは背中側を鏡で確認するだけでなく、撮影したり誰かに見てもらったりすることをおすすめします。自分の目線だけでは確認できない細かい箇所に気付くことができます。
訪問着を着る
長襦袢を着たら、いよいよ訪問着を着用します。訪問着の着用ステップは以下の通りです。
- 訪問着を羽織り、袖に腕を通します。
- 左右の掛け衿を揃え、背中心を合わせます。
- 長襦袢の襟と訪問着の襟を着物クリップで留めます。
- 左右の襟先を手に持ち、体の前に引きます。
- 衽線(おくみせん)が右足の甲につく位の長さに、裾の長さを調整します。
- 裾の長さが決まったら、右襟をグッと前に引き訪問着のシワを取ります。
- 左襟を開き、右襟を中に入れます。
- 左襟を、6で決めた位置に合わせます。
- 腰骨の高さに腰紐を巻き付け一周させます。
- 右腰の位置で腰紐をグッと締め、蝶々結びで固定します。
- 左手を身八ツ口に入れ、おはしょりを整えます。
- 左手を身八ツ口に入れたまま、右襟を持ちます。
- 右手で左襟を持ち、両手を外側に引きます。
- 襟を整えたら胸下で腰紐を一周させ、蝶々結びをします。
- 背中心を抑えながら背中側のシワを整えます。
- おはしょりを平らに形作ります。
- 形が崩れないよう、腹部で伊達締めを一周させます。
- 体の前で伊達締めをグッと締め、一結びします。
- 3で付けた着物クリップを外したら、完成です。
袋帯を締める
訪問着を着たら、最後に袋帯を締めます。
訪問着で袋帯を締めるときはほとんどの場合「二重太鼓(にじゅうだいこ)」にするので、今回は二重太鼓の手順を解説します。
- 伊達締めの上に帯板をつけます。
- 帯の手先を半分に折ります。
- 折山を体の外側に向け、手先を後ろから前に向けて肩にかけます。
- 手先の長さを決めます。
- 帯を体の周りに二周させ、グッと引き締めます。
- 背中側の帯をクリップで留め、手先を背中側に向けて離します。
- 手先を帯と平行にして前に持ってきて、クリップで留めます。
- たれを位置づけます。
- 位置づけた“たれ”を仮紐で結んで留めます。
- 背中側にある帯のうち、上の一枚を広げます。
- 開いた一枚目の帯を手で押さえ、仮紐を結びます。
- 帯枕に帯揚げを巻き、ゴムで留めます。
- 垂れている二枚の帯と着物との間に帯枕を入れます。
- 帯枕と帯を両手で持ち、帯の上まで持ち上げます。
- 帯枕の紐を胸の前で結び、帯の中にしまいます。
- 帯揚げを仮結びし、仮紐を外します。
- 仮紐を使ってお太鼓を形作ります。
- 仮紐を体の前で結び、手先を留めているクリップを外します。
- 手先を折り返してお太鼓の中に通します。
- 帯締めをお太鼓の中に通し、体の前で結びます。
- 帯揚げを結び、結び目と余った部分は帯の中にしまいます。
- お太鼓の形を整えます。
- 仮紐を二本とも外したら、完成です。
着用シーンにもよりますが、訪問着に合わせる袋帯は、二重太鼓以外にも「ふくら雀」や「文庫結び」といった結び方をすることもあります。
二重太鼓に慣れてきたら新しい結び方にも挑戦してみてください。
自分で訪問着を着付けする際に、気をつけたいポイント
ここまでは自分で訪問着を着付けする方法を解説してきましたが、上記で説明した手順以外にも気をつけるべきポイントがあるのでチェックしていきましょう。
自分で訪問着を着付けする際に気をつけたい点は、以下の3つです。
- メイクやヘアセットは着付け前に行う
- 着付け中に訪問着が汚れないようにする
- 着る訪問着は前日までに出しておく
それぞれ詳しく説明します。
メイクやヘアセットは着付け前に行う
メイクやヘアセットは、着付け前に行いましょう。着付けしてからだと、着崩れしたり着物が汚れてしまったりする可能性があります。袖がメイクやヘアセットの邪魔になる点もデメリットです。
ただし、リップだけは着付け後に塗りましょう。事前にリップを付けると着付け中に着物に付いてしまう可能性が高く、汚れが目立ってしまいます。その他化粧品や整髪料なども着物につかないように注意してください。
訪問着でのメイクのコツについては以下の記事で詳しく紹介しています。
着付け中に訪問着が汚れないようにする
訪問着が汚れないよう、着付けをする際は衣装敷(いしょうじき)を敷きましょう。
衣装敷とは、着物を着るとき・脱ぐとき・畳むとき・収納するときに使う紙製のシートです。たとう紙とも呼ばれます。
衣装敷を使わずに着付けをすると訪問着が直接床についてしまい、ホコリや髪などのゴミが付着してしまいます。床にこぼした液体などがついてしまうこともあるでしょう。
衣装敷を活用して、訪問着をきれいな状態で着てください。
また、訪問着を汚さないためには手を清潔に保つことも大切です。手を洗ってから着物に触りましょう。ハンドクリームやオイルを塗ると油分が付着してしまう可能性があるので注意してください。
着る訪問着は前日までに出しておく
訪問着や小物は着る前日までに出して広げておきましょう。防虫剤のニオイや畳みジワを取るためです。
出した着物や小物は、ハンガーに掛けて風通しの良いところで陰干ししておくことをおすすめします。
訪問着屋小物を前日までに用意できない場合は、着る2~3時間前から干し始めても問題ありません。
おわりに
本記事で紹介したとおり、訪問着は自分で着付けすることができます。
しかし、テキストや動画を見て一人で練習するとなかなか上達しづらいのも事実です。着姿の美しさは襟元や帯回りなどの細部に宿りますが、それをテキストや動画だけから汲み取るのは、初心者の方にとってかなり難しいのです。
また、誤った方法で着付けを進めていたとしても、それを指摘してくれる人がいないので、着姿がきれいに仕上がらない可能性も大いにあります。
では、訪問着の着付けをマスターするにはどのような方法が適しているのでしょうか?
訪問着の着付けを自分で完璧にできるようになるには、教室で講師から教わるのが最も確実です。着付けの方法をプロから直接指導してもらえますし、気になる箇所はその場で質問して解消していくことができます。誤った方法で進めていたらその都度正してもらえるでしょう。
以下の記事では、筆者厳選のおすすめ着付け教室を7つ紹介しています。訪問着の着付けを自分でできるようになりたい方は、ぜひ一度目を通してみてください。