「久々に着物を出したらしわが付いていた!」
「もらった着物がしわだらけになっていた…。」
こういった経験をする方は少なくありません。着物をきれいに保管しておくのは難しく、しわが付いてしまうのも仕方ありません。
しかし、着物のしわ取りは洋服と比べても難易度が高いため、なかなか取り組めない方も多いのではないのでしょうか。
そこで本記事では、着物のしわを取る方法を初心者向けにわかりやすく解説します。しわが付きづらくなる畳み方も解説するので、あわせて参考にしてみてください。
着物にしわが付いたときにやってはいけないこと
着物にしわが付いたときに、焦ってしわを取ろうと色々なことを行うと、失敗に終わるリスクが上がります。
絶対にやってはいけないことが5つあるので、まずは1つずつ確認していきましょう。
- 直接熱を加える
- 水をつける
- 日光に当てる
- 干し続ける
- 素材を確認しない
なぜやってはいけないのか、1点ずつ詳しく解説します。
直接熱を加える
着物にしわが付いたとき、直接熱を加えて伸ばそうとすることは絶対に止めてください。
着物の生地はとても繊細なので、熱を加えると縮んだり曲がったり、変色してしまったりする可能性があります。
アイロンをかける場合は、あて布が必須です。具体的なアイロンがけの方法については、記事後半で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
水をつける
着物に水を付けてしわを伸ばそうとすると、「水シミ」ができてしまう可能性が上がります。
水シミとは、記事が水に濡れることによって変色してしまう現象を指します。染料が水に溶け出してしまったり、生地が水によって変形したりすることで、ただの水濡れがシミのように浮き出てしまうのです。
水シミは一度できると落とすのが大変です。着物には直接水を付けないように気をつけてください。
日光に当てる
着物は、直射日光に当てると日に焼けて色褪せてしまいます。
洋服のシャツは天日干しすることでしわが目立たなくなりますが、それと同じように着物を日に当てないように注意してください。
着物を干したい場合は、風通しの良いところで陰干しするのが基本です。
干し続ける
着物にしわを付けないための「虫干し」という方法がありますが、あまりにも長期間干し続けると、着物が伸びてしまう原因になってしまいます。
着物を干すのは1~2日間で十分です。それ以上の期間は、ハンガーに掛け続けないようにしてください。
綺麗に畳んで保管するだけで、十分、しわ防止になります。着物にしわが付きづらい畳み方は後述しますので、併せてチェックしておきましょう。
素材を確認しない
着物は素材によっては、アイロンをかけられないものもあります。
例えば、下記に該当する着物はアイロンの使用が推奨されていません。
- 金箔・銀箔などの箔加工がされている素材
- 刺繍が施されている素材
- 天然染めがされている素材
- 正絹・縮緬・楊柳などの素材
上記の他、染め方や織り方が分からない場合・素材が明らかでない場合は、アイロンを使用しない方が良いです。
自分でしわ取りをするのではなく、専門業者に依頼しましょう。
上記以外の素材であれば、基本的にはアイロンを使ってしわ取りができます。以下で紹介する手順を参考に、アイロンがけをしてみてください。
着物にしわが付いたときはアイロンを使う
着物にしわが付いたときは、アイロンを使いましょう。ただし、着物に直接アイロンを当ててはいけません。アイロンの当て方にも工夫が必要です。
ここでは、着物のアイロンがけに必要なものと手順、そして注意点を解説していくので、ぜひ参考にしてください。
必要なもの
着物のしわ取りでアイロンをかける際には、以下の2つを用意してください。
- タオル2枚(パイル地が好ましい)
- アイロン
タオルは、できればパイル地のものを用意してください。パイル地は、他の生地と比べて構造が複雑で全体的に水を馴染ませやすく、アイロンをかけた際にシミを作りづらいためです。
手順
着物にアイロンをかける手順は、下記の通りです。
- 乾いたタオルを二つ折りにして、着物のしわの上に重ねます。
- もう一枚のタオルは軽く濡らし、しわのサイズに折り畳みます。
- 折り畳んだ濡れタオルを、乾いたタオルの上に重ねます。
- アイロンを高温に設定し、ぬれタオルの上で動かします。
- 着物と乾いたタオルの間に手を入れて、蒸気が行き渡っているか確認します。
- 十分に蒸気が行き渡っていたら、アイロンを外して2~3分蒸らします。
- 濡れタオルを取ります。
- 乾いたタオルが蒸気で湿っているので、上からアイロンをかけて乾かします。
- タオルの表面が乾いたら、二つ折りにしていたタオルを一枚に広げます。
- 開いたタオルの上からアイロンをかけて乾かします。
- 着物を確認し、しわが取れていたら、終了です。
上記の手順で着物のしわ取りができます。
ただし、綺麗にしわを取るためにはいくつかの注意点があるので、以下で詳しく確認していきましょう。
注意点
アイロンで着物のしわ取りをする際は、以下の2点に注意してください。
- アイロンを強く押し当てない
- 縫い目にアイロンを当てない
それぞれ詳しく説明します。
アイロンを強く押し当てない
着物のしわを取るためのアイロンは、強く押し当ててはいけません。なぞるように優しく当てましょう。
アイロンを強く押し当てると、着物の生地が潰されてしまい、安っぽい見た目になってしまいます。一度潰れた生地を元に戻すことは難しいため、注意が必要です。
縫い目にアイロンを当てない
着物の縫い目にアイロンを当てると、縫い目が曲がってしまう可能性があります。
縫い目の付近にしわが付いてしまった場合は、またいでアイロンをかけるのではなく、二度に分けてアイロンをかけるようにしてください。
アイロンがない場合はしわ取りスプレーが使える
自宅にアイロンがない場合、もしくは急ぎでしわ取りをしたい場合などには「しわ取りスプレー」が活用できます。使い方は以下で解説します。
着物のしわ取りスプレーの使い方
着物のしわ取りスプレーは、次のように使用します。
- 着物をハンガーに干します。
- しわが気になる箇所に、20cmほどの距離からしわ取りスプレーを吹きかけます。
- 該当箇所が軽く湿る程度までスプレーしたら、しわを伸ばすように生地を伸ばします。
強く伸ばしすぎないように注意してください。 - ハンガーに干したまま、風通しの良いところで陰干しします。
- スプレーが乾いたら終了です。
簡単、かつすぐに使えるので、急ぎでしわ取りをしたい時におすすめです。
なお、使用するスプレーは洋服用ではなく、できれば着物専用のものを用意してください。1,000円~2,000円程度で購入できます。
着物のしわ取りスプレーを使う際の注意点
着物のしわ取りスプレーは、アイロンと同じように向いていない素材があります。
- 金箔・銀箔などの箔加工がされている素材
- 刺繍が施されている素材
- 天然染めがされている素材
- 正絹・縮緬・楊柳などの素材
上記の素材に対して使用すると、シミや色落ちの原因になりかねません。
また、近距離からスプレーすると変色したり、シミになったりする可能性があるので注意してください。
そもそも着物にしわを付けないためには
そもそも着物にしわが付いてしまうのは、着物を脱ぎっぱなしにしてしまったり、正しく畳めていなかったりすることにあります。
基本的に、着物を脱いだ後はすぐハンガーに干し、しわを付けないようにしてください。汗や皮脂による湿気や臭いを取ることにもつながります。
1~2日程度干した後は正しい方法で畳みましょう。以下で、着物の正しい畳み方を解説します。
着物にしわを付けない畳み方
着物は誤った方法で畳むとしわが付いてしまいます。正しい畳み方を覚え、しわ対策をしましょう。手順は以下の通りです。
- 着物を、表が下・裏が上になるように広げます。
この際、袖は自身からみて左側に位置するように配置してください。 - 裾を両手で持ち、手前から2本目の縫い目で奥に向かって折り畳みます。
- 裾を両手で持ち、手前から1本目にあった縫い目で手前に折り返します。
- 奥側の裾を両手で持ち、手前の裾とピッタリ合わせます。
この際、裾だけでなく襟先同士も重ね合わせてください。 - 奥にある縫い目を両手で持ち、②で折った縫い目に重ねます。
- 両袖は重ねて、手前側に位置させます。
- 重ねた袖のうち、上にあるものは縫い目で折り返して着物の上に重ねます。
- もう一枚の袖は、縫い目で折り返して着物の下に入れ込みます。
- 裾を持ち、元々付いている折り目を目安に折り畳みます。
- 完成です。
上記は、“本だたみ”と呼ばれる着物の畳み方です。テキストだけだと分かりづらい方は、動画で見るとわかりやすいかもしれません。YouTubeやSNSなどで検索し、参考にしてみてください。
おわりに
本記事では、着物のしわを取る方法や、しわが付かない畳み方について解説してきました。
改めて内容をまとめます。
- 着物にしわが付いたときのNG行動は、「直接熱を加える」「水をつける」「日光に当てる」「干し続ける」「素材を確認しない」の5つ
- 「金箔・銀箔」「刺繍」「天然染め」「正絹」「縮緬」「楊柳」などの素材にはアイロンをかけられない
- アイロンをかける際は必ずあて布が必要
- アイロンをする時間が無い場合は、しわ取りスプレーでも代用可能
- 着物にしわが付かないようにするためには、正しく畳むことが重要
着物のしわの取り方や、畳み方などが不安な方は、プロから直接教わるのが一番です。正しい方法を教わることができるので、「これで合っているのかな…」という不安を解消できます。
今回紹介した内容は着付け教室でも学べるので、正しい方法を身につけたい方はぜひ通学を検討してみてください。