正月に、初詣や挨拶回りなどで着物を着ている方を見かけた経験がある方は多いのではないでしょうか。
しかし、いざ自分が着るとなると、どんな着物を選べば良いか分からず困ってしまいますよね。
そこで本記事では、正月の着物の選び方をTPO別にご紹介します。おすすめの柄や小物の選び方・防寒方法もお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
正月に着る着物の種類
正月に適した着物の種類は、TPOによって異なります。最適な着物の種類を、以下の5場面に分けて紹介します。
- 初詣
- 挨拶回り
- 友人との新年会や食事会
- フォーマルな式典やパーティー
- 自宅
初詣は「振袖」
初詣には振袖がおすすめです。未婚女性の第一礼装で格式高いため、正月というおめでたい日に適しています。晴れ着を着て、一年のはじまりを存分に堪能してみましょう。
振袖には金糸・銀糸を織り込んだ格の高い袋帯を合わせます。
振袖以外に、訪問着や色無地・付け下げ・小紋を着ても構いません。初詣の服装にルールはないので、晴れやかな気持ちになれる着物を選ぶのが一番です。
挨拶回りは「小紋」
親戚やご近所への挨拶回りには、小紋が適しています。
訪問着や付け下げのように畏まりすぎることなく、それでいてきちんとした印象を与えられます。小紋には名古屋帯や半幅帯を合わせてください。
友人との新年会や食事会は「小紋」「紬」
友人との新年会や食事会には、小紋や紬を着て行くと良いでしょう。
どちらもカジュアルな着物なので、好きなように着こなせるのが嬉しいポイントです。お気に入りの色や柄を選んで、新年の幕開けを楽しむことができます。
帯については、小紋には名古屋帯・半幅帯、紬には染めの名古屋帯・紬の洒落袋帯・半幅帯を合わせましょう。
フォーマルな式典やパーティーは「訪問着」
フォーマルな式典やパーティーには訪問着が適しています。格が高い着物なので、フォーマルな場面で正月のおめでたい気持ちを表現できます。
帯は、縁起の良さやおめでたさを際立たせる金・銀の刺繍が入った袋帯がおすすめです。
自宅で過ごすなら「ウールの着物」
正月を自宅で過ごすなら、ウールの着物を着てみてはいかがでしょうか。ウールは保温効果が高いため、気温が低い正月でも暖かく過ごせます。帯は、名古屋帯や洒落袋帯・半幅帯を合わせてください。
外出予定がない方も、着物を着るだけで正月気分を味わえるでしょう。
また、ウールの着物は正月以外の普段着としても活用できます。正月をきっかけに、着物の普段使いを始めるのも良いかもしれません。
正月の着物におすすめの柄
新年の幕開けである正月には、縁起の良い柄・おめでたい柄の着物がよく合います。
- 宝尽くし(たからづくし)
- 松竹梅(しょうちくばい)
- 亀甲(きっこう)
- 鳳凰(ほうおう)
- 七宝(しっぽう)
それぞれの柄の特徴を紹介します。
宝尽くし(たからづくし)
その名の通り、宝を集めた柄です。
打出の小槌(うちでのこづち)や金嚢(きんのう)・巻物をはじめとし、さまざまな宝がちりばめられています。
たくさんの縁起物が集まっているため、新年の幕開けにはもってこいの柄です。
松竹梅(しょうちくばい)
縁起が良い植物の代表である松・竹・梅の柄が施されています。由来は中国の「歳寒三友(さいかんさんゆう)」で、松・竹・梅にはそれぞれ次のような特徴があります。
- 松:冬場でも枯れずに緑の葉を付け、美しい状態を保つ
- 竹:成長が早く、寒い冬でも折れずに真っ直ぐと伸びる
- 梅:冬が終わると、他の植物よりも早く花を咲かせる
冬の寒さに負けず耐え忍ぶ点から、松竹梅は生命力の強さや忍耐力の高さを表す柄となりました。非常に縁起が良く、一年のスタートにふさわしいでしょう。
亀甲(きっこう)
亀の甲羅をかたどった柄で、六角形が連なっています。奈良時代・飛鳥時代に中国から伝来しました。
「鶴は千年、亀は万年」ということわざにあるように、亀甲は長寿や健康を象徴しています。
正月に亀甲柄の着物を着て、一年の健康を願ってみてはいかがでしょうか。
鳳凰(ほうおう)
中国神話に登場する伝説の鳥のことで、さまざまな動物の特徴を持ち合わせています。
日本では、「頭とくちばしが鶏、首が蛇、胴体の前部がキリンで後部が鹿、背が亀、顎がつばめ、尾が魚」だと言い伝えられてきました。
また、鳳凰は「徳の高い君子が位に就く時に現れる」と言い伝えられており、幸せ・平和のモチーフとなっています。正月に適したおめでたい柄です。
七宝(しっぽう)
同じ大きさの円を、4分の1ずつ重ねて並列した柄です。円がつながっている様子から、「円満」や「ご縁」といった意味を持っています。
また、七宝とは、金・銀・瑠璃(るり)・玻璃(はり)・硨磲(しゃこ)・珊瑚(さんご)・瑪瑙(めのう)の7つの宝を指しています。
すべて縁起物なので、一年の初めにはぴったりでしょう。
正月の着物に合わせる小物
着物に合わせる小物も、正月に適したものを選びましょう。以下の小物の選び方を紹介します。
- 帯締め
- 帯揚げ
- 帯留め
- 草履
- バッグ
帯締め
着物に合う色・柄の帯締めを選びましょう。赤色・白色の帯締めを選ぶと正月らしさが感じられます。
着物の種類に応じた帯締めの選び方は、こちらの記事で解説しています。マナー違反とならないためにも、確認しておきましょう。
帯揚げ
初詣や式典・パーティーなどのフォーマルな場面には、綸子や総絞りの帯揚げを選びましょう。
反対に、挨拶回りや友人との新年会・食事会といったカジュアルな場面には、縮緬や部分絞りの帯揚げが向いています。
色や柄は、着物や帯で使われているものを選ぶと統一感があります。また、帯締めと帯揚げでは異なる色を選んだ方が洗練された印象を与えられるでしょう。
帯揚げについてより詳しくはこちらの記事をお読みください。
帯留め
干支の動物がデザインされた帯留めを選ぶと、正月らしさを演出できます。縁起物をモチーフとした帯留めも良いでしょう。
草履
初詣や挨拶回りでたくさん歩く予定の方は、歩きやすい草履を選びましょう。鼻緒が太く柔らかい草履だと、足が痛くなりづらいです。
色や素材については、着物の種類ごとに異なります。こちらの記事をご参照ください。
バッグ
バッグの色や柄・素材は草履に合わせるのが一般的です。
クラッチバッグやビーズバッグ・利休バッグなどさまざまな種類があるので、着物の種類にあわせて選んでみてください。選び方はこちらの記事で解説しています。
正月の着物は寒さ対策を!
正月の気温は5度前後と非常に寒いです。外出する際は、以下の寒さ対策を講じましょう。
- コートを羽織る
- インナーを着る
- マフラーを巻く
- 足元を温める
- カイロを貼る
各方法の詳細を解説します。
コートを羽織る
正月は寒く、着物一枚だけで過ごすのは難しいです。コートを羽織り防寒しましょう。
- 羽織
- 道行(みちゆき)
- 道中着(どうちゅうぎ)
- 和装コート
- ショール
- ポンチョ・マント
各コートについての詳細は、「着物 コート(タイトル名とリンク)※11/10 記事を公開し次第設定します」の記事で紹介しています。正月を暖かく過ごしたい方はぜひ参考にしてください。
(リンク ※11/10 記事を公開し次第設定します )
インナーを着る
コートを着ても寒い場合、またはコートを羽織らずに防寒したい場合はインナーを着ましょう。ユニクロのヒートテックのような、冬用の暖かいインナーがおすすめです。
なお、インナーを着る際は胸元や首元から見えないように注意してください。襟元が詰まったインナーは、着物には向いていません。
マフラーを巻く
着物は衣紋を抜いて着るため、首元から寒さを感じやすいです。
マフラーを巻いて首元の暖を取りましょう。スヌードやティペットのような、小ぶりで上品なマフラーがおすすめです。
フリンジマフラーや大判マフラーを巻く際は、シンプルなデザインのものを選びましょう。柄がごちゃごちゃとしていると、着物の美しさを邪魔してしまいます。
足元を温める
着物は裾が開いているので、足元の冷えが大敵となります。
冬用の暖かい足袋や足袋用インナーを履き、足全体を暖めましょう。爪皮(つまかわ)が付いた防寒用の草履を履き、足先の冷えを防ぐことも重要です。
着物の中の脚が寒い場合は、レギンスやレッグウォーマーの着用もおすすめです。裾先から見えないようにだけ注意してください。
カイロを貼る
背中下部・ふくらはぎ下部・肩甲骨の間・おへその下にカイロを貼ると、効率的に全身を温めることができます。
正月が厳しい寒さに見舞われそうであれば、あらかじめカイロを貼って対策しておきましょう。
手先の冷えが気になる方は、貼らないタイプのカイロを持っておくとより安心です。
まとめ
正月の着物についてまとめると、次のようになります。
- 初詣は、晴れ着の振袖を着て行くのがおすすめ。訪問着・色無地・付け下げ・小紋を着てもOK
- 親戚や近所への挨拶回りは、畏まりすぎない小紋が適している
- 友人との新年会や食事会には、小紋・紬のカジュアルな着物が向いている
- フォーマルな式典やパーティーには、格が高い訪問着を着て豪華に仕上げる
- 自宅で過ごす場合は、暖かいウールの着物がぴったり
- 正月には、宝尽くし・松竹梅・亀甲・鳳凰・七宝のような縁起の良い柄・おめでたい柄が合う
- 正月の気温は5度前後なので、アウター・インナー・マフラー等を使った寒さ対策が欠かせない
TPOに適した着物の種類・柄を選び、寒さ対策をして正月を楽しく過ごしましょう。
この記事が、正月の着物について知りたい方の参考になれば幸いです。