着物を着こなす上で、おはしょりは欠かせません。
しかし、おはしょりがなぜ必要なのか、どう作るかなど正しく理解できていない方も多いでしょう。
そこで本記事では、おはしょりの概要・役割・長さ目安・作り方・よくある悩みと解決法・歴史などを解説します。記事を読めばおはしょりについてひと通り理解できるようになりますよ。
着物のおはしょりとは
おはしょりとは、着物の着丈を調整するために、腰部の布をたくし上げて折り返した部分のことを指します。下記の画像を参考にしてください。
女性用の着物はすべて着丈よりも長く作られているので、このおはしょりが必要になります。一方で、浴衣や男性用の着物におはしょりは不要です。着丈を調整せずに楽しめます。
着物のおはしょりの役割
おはしょりがあることによって、着物の着用者はこのようなメリットを受けられます。
- 多少体格が異なっても着られる
- 着物を長く愛用できる
- 美しく見える
それぞれ詳しく説明します。
多少体格が異なっても着られる
おはしょりには目安の大きさがあるものの、好きな長さに調整できます。着丈をある程度自由に変えられるので、多少体格が異なる方でも同じ着物を着ることができます。
おはしょりがあることで、着物の友人への譲渡や、親から子への受け継ぎなどが行いやすくなっているのです。
着物を長く愛用できる
同じ着物を着続けていると、裾が擦れて傷んだり擦り切れたりしてしまう場合があります。
しかし、女性用の着物はおはしょりの分だけ着丈に余裕があるので、裾を切って再度美しい着物に仕立て直すことができます。
おはしょりは、着物を長く愛用するための役割を担っていると言えるでしょう。
美しく見える
おはしょりがあると、着姿が美しく見えます。具体的には、下記のような好影響があります。
- 腰紐を隠せる
- 裾の前後の高さを調整できる
- 着崩れしづらくなる
このように、おはしょりには装飾目的としての役割もあります。
着物のおはしょりの長さ目安
おはしょりの目安の長さは、5~6cmと言われています。大体、人差し指と同じくらいの長さです。着付けの際の参考にしてみてください。
着物のおはしょりの作り方
着物のおはしょりの作り方は、以下の通りです。おはしょりとは直接関係の無い動作については、今回は説明を割愛しています。他記事をご参照ください。
- 着物を羽織ります。
- 襟先と背中心を持ち、裾線を決めます。
- 上前と下前を合わせます。
- 腰部で腰紐を結びます。
- 上前・下前のシワを取ります。
- 上前・下前を左右に引き、おはしょりを作ります。
- 手刀でおはしょりを整えます。
- アンダーバストの位置でコーリンベルトを留めます。
- 帯・帯揚げ・帯締めなどの着付けをします。
- 帯結びを一通り終えたら、帯の下から手を入れておはしょりのシワを背中側に寄せます。
- 帯結びの中に隠れる位置にシワが寄れば完成です。
腰紐・コーリンベルトの使い方や、帯・帯揚げ・帯締めの締め方などについては、以下の記事でより詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
>>腰紐の結び方
>>コーリンベルトの使い方
>>名古屋帯の締め方
>>袋帯の締め方
>>帯揚げ・帯締めの締め方
着物のおはしょりのよくある悩みと解決法
着付け初心者にとっておはしょりを作る難易度は高く、多くの悩みが寄せられます。
今回は、特に多い悩みと解決法を解説していきます。
- おはしょりが膨らんでしまう
- おはしょりが長すぎる
- おはしょりが短すぎる
- おはしょりが斜めになってしまう
順番に詳しく解説していきます。同じ悩みをお持ちの方はぜひ参考にしてください。
おはしょりが膨らんでしまう
おはしょりが膨らんでしまい、不格好に見えてしまうと言うお悩みは非常に多いです。たくし上げた布をそのまま全ておはしょりにしてしまうと、どうしても膨らんでしまいます。
そこで行いたいのが「三角上げ」です。三角上げとは、下前の襟を折りあげておはしょりをスッキリとさせる手法のことです。以下で具体的な手順を解説します。
※おはしょりを作る手順の、コーリンベルトを留める前からスタートします。
- 下前のアンダーバストの位置にコーリンベルトを留めます。
- 内側の布(左腰部分)を上に引き出します。
- 引き出した布を襟の中に収めます。
- 留めたコーリンベルトを押さえながら、余った布を右腰に向かって整えます。
- 下前の形が三角形になっていればOKです。
三角上げを行うことで、おはしょりの膨らみが抑えられます。
おはしょりが長すぎる
おはしょりを作り終えた後に、長すぎることに気付くことは少なくありません。また、元々丈の長い着物を着た際にはおはしょりが長くなりやすいです。
長すぎるおはしょりを整える方法は、主に2つあります。
- 帯にしまう
- 伊達締めで押さえる
それぞれ詳しく説明します。
帯にしまう
着付けが終わった後に、おはしょりが長いと気付いた場合は、帯にしまう方法で長さを調整しましょう。手順は以下の通りです。
- 一度、おはしょりを伸ばしきってシワをとります。
- おはしょりの上部をつまみ、帯の下に入れます。
- おはしょりの長さが5~6cmになるよう長さを調整します。
簡単におはしょりが処理できるのでおすすめです。
伊達締めで押さえる
元々着丈が長い着物を着る際は、伊達締めを用いておはしょりの長さを調整しましょう。以下の通り進めてみてください。
※おはしょりを作る手順の、コーリンベルトを留めた後からスタートします。
- 右手をおはしょりの中に入れます。
- おはしょりの中の生地を上に持ち上げます。
- おはしょりの中に手を入れたまま、腕を上に引き上げます。
- おはしょりの長さが5~6cmになったところで手を抜き、シワを整えます。
- 整えた上から伊達締めを締め、生地を押さえます。
伊達締めで押さえることで、着崩れておはしょりが落ちてくることもなくなります。
おはしょりが短すぎる
上記とは反対に、着付け後におはしょりの短さに気付くこともあります。また、元々着丈の短い着物を着るとどうしてもおはしょりが短く仕上がってしまいがちです。
おはしょりが短すぎる場合の対処法は、下記の2つがおすすめです。
- 布を引き出す
- 腰紐を通常よりも下で結ぶ
順番に説明していきます。
布を引き出す
着付け後におはしょりの短さに気付いた際には、おはしょりの部分を優しい力で下に引っ張りましょう。少しだけおはしょりの長さを伸ばすことができます。
それでも足りない場合は、帯の位置を若干上に上げることでおはしょりを長く見せることが可能です。
ただし、強い力で引っ張りすぎると襟や裾が崩れる原因となるので注意してください。
腰紐を通常よりも下で結ぶ
着丈が短い着物を着る際は、以下の手順でおはしょりを作りましょう。
※おはしょりを作る手順の、腰紐を締める前からスタートします。
- 腰紐を、骨盤の上からへその下の間で結びます。
- 腰紐の結び目が見えないよう、背中側で結びます。
- おはしょりの長さを確認し、短い場合は腰紐の結ぶ位置を下げます。
- おはしょりが5~6cmでるように調整できたらOKです。
骨盤より下で腰紐を結ぶと隠れなくなってしまうので注意してください。
おはしょりが斜めになってしまう
おはしょりが斜めになってしまうという相談もよくあります。多くの場合は、おはしょりが左下がりになってしまいます。
おはしょりが斜めになることの対処法は、下がっている側の腰紐を高く上げることです。
生地の部分が動かないように手で押さえ、腰紐だけを上に引き上げてみてください。おはしょりが真っ直ぐになるまで引き上げれば解決です。
着物をおはしょりなしで着ることはできる?
着物をおはしょりなしで着ることはできます。この着方を対丈(ついたけ)と呼びます。
対丈で着れば、着丈が短くて諦めていた着物も楽しめるようになるでしょう。対丈には脚長効果があるのでスタイルも良く見えます。
ただし、着物を対丈で着ると、通常よりも着崩れしやすくなるので注意が必要です。襟や裾が崩れないように工夫しなければなりません。
また、対丈は格式高い場面には適さないとされることにも気をつけましょう。あくまで普段着として着物を着る場合のスタイルとして楽しんでください。
着物のおはしょりの歴史
おはしょりの文化が発祥したのは明治時代に入ってからと言われています。
江戸時代初期までは、対丈で着物を着るのが一般的でした。地位の高い女性のみが着丈の長い着物を着ていましたが、彼女たちは家の中であまり動かずに済む身分だったので、裾は引きずって歩いていたようです。外出時には裾をたくし上げて歩いていました。
江戸時代中期になると、裾をたくし上げるスタイルが庶民にも広まり始めます。しかし、この時点でまだおはしょりは生まれていません。
明治時代に入ると女性の躍進が目立つようになり、着物で活動しやすくするためにおはしょりで裾の長さを調整するようになりました。このようにして、おはしょり文化はどんどん広まっていきました。
まとめ
本記事では、着物のおはしょりについての基礎知識を解説してきました。
おはしょりは、着物を美しく着こなす上で欠かせない部分です。また、おはしょりがあることによって着物を長く愛用できることも分かりました。
おはしょりの形・長さが崩れてしまった際には、ぜひ本記事を読み直してみてください。
おはしょりが正しく作れているか不安な方は、着付け教室で習い直すのもおすすめです。講師から直接指導を受けられるので、正しく身に付けられているか確認できます。
以下の記事でおすすめの着付け教室を紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。