着物用コートは、主に冬の防寒着として使われます。寒さ対策として購入を検討している方も多いでしょう。
しかし、着物用コートの種類は多く、初めての方は選ぶのが難しいかもしれません。
そこで本記事では、着物用コート7種類と格、防寒方法をご紹介します。着物用コートを正しく選びたい方は、ぜひ参考にしてください。
着物用コートの種類
着物用コートの種類は、大きく以下の7種類に分けられます。
- 羽織
- 道行(みちゆき)
- 道中着(どうちゅうぎ)
- 和装コート
- ショール
- ポンチョ・マント
- 雨コート
それぞれの特徴を紹介します。
羽織
羽織とは、着物の上に羽織るカジュアルなアウターです。洋服で言うカーディガンにあたります。前は羽織紐を使って留めます。
他の着物用コートとは違い、室内でも着用できるのが特徴です。
また、羽織の種類は多く、柄や季節・丈の長さで使い分けられます。
冬は、裏地が付いた「袷羽織(あわせばおり)」や綿が入った「綿入れ羽織(わたいればおり)」を着ると暖かく過ごせます。
夏は、単衣仕立ての「単衣羽織(ひとえばおり)」や、絽(ろ)や紗(しゃ)を用いた「夏羽織(なつばおり)」がおすすめです。
道行(みちゆき)
道行とは、衿が四角形に開いている着物用コートです。前は備え付けのボタンで留めます。
外出用コートなので、室内では脱ぐのがマナーです。
道行きはフォーマルなコートなので、基本的には礼装に合わせて着ます。小紋柄の道行や紬素材の道行は格が下がるので、カジュアルな着物にも合わせられます。
道中着(どうちゅうぎ)
道中着とは、着物と同じように衿合わせをして着るコートです。前は備え付けの紐を結んで留めます。
道中着の名前は「道中お気を付けて」という言葉に由来しており、旅路に着るのが一般的だったため、室内では脱ぐのがマナーです。
また、道中着はカジュアルなコートなので、街着やおしゃれ着などの普段着着物に合わせるのが一般的です。
和装コート
和装コートは、洋装のロングコートとほとんど変わりません。前は備え付けのボタンで留めます。コートなので、室内では脱ぎましょう。
和装コートは、洋装コートよりも衿まわり・袖まわりがゆったりと作られているため、着物の上に羽織りやすい点が特徴です。
着用シーンはカジュアルからフォーマルまで対応します。
ショール
ショールを着物のアウターとして使うこともできます。ショールとは、防寒用の肩掛けのことです。洋装用のショールと同じく、室内では脱ぐのが一般的です。
着物の色・柄に合うものであれば、着物用ではなく洋装用のショールを使用しても問題ありません。
冬は厚手のショールを羽織って寒さ対策を、夏は薄手のショールを羽織って日焼け対策・暑さ対策を講じましょう。
ポンチョ・マント
ポンチョやマントを着物のアウターとして羽織ることもできます。どちらも頭だけを出して着るのが特徴で、袖はありません。
ポンチョは丸みを帯びたフォルムなので、女性らしさを演出できます。
マントは上半身をまるごと隠すような形なので、シャープな印象を残せます。
かわいらしさを重視するならポンチョ、大人らしさを重視するならマントを使うと良いでしょう。
ポンチョ・マントの着用シーンはカジュアルな場面に限られます。
雨コート
雨コートとは、雨天時に羽織るレインコートのことです。
上下がつながっている十分丈の「ワンピースタイプ」と、上下で分かれている「二部式」のものがあります。二部式の雨コートは、上だけを五分丈で着てもOKです。
雨よけのために着るコートなので、室内では必ず脱いでください。
着物用コートの格を決める「衿」
着物用コートの格は、衿の種類で決まります。
- 道行衿(みちゆきえり)
- 都衿(みやこえり)
- 千代田衿
- へちま衿
- 被布衿(ひふえり)
- 着物衿
それぞれの格と特徴を紹介します。
道行衿(みちゆきえり)
四角く開いた衿で、前はボタンで留めます。主にフォーマルな場面で使われます。
道行衿でも、柄が小紋だったり素材が紬だったりすると格が下がり、カジュアルな場面にも使えます。
都衿(みやこえり)
角が丸い道行衿のような形をしています。フォーマルからカジュアルまで活用可能です。
遠くからだと道行衿と見分けるのが難しいですが、近くで見ると都衿の方が柔らかな印象です。
千代田衿
千代田衿は、カーブした衿合わせが特徴です。洋装コートのように前をボタンで留めます。
大正中期に取り入れられた形で、基本的にはセミフォーマルな場面に使います。
へちま衿
へちま衿は、衿が細長くへちまのような形をしています。洋装コートのように、衿を外に折り返している点が特徴です。セミフォーマルからカジュアルまで対応します。
被布衿(ひふえり)
七五三で、三歳の女の子が着る被布(ひふ)に使われる衿の形です。飾り紐が付いている点が特徴です。
前は四角形に開いており、左右の衿は外に折り返されています。前はボタンで留めるタイプと紐で留めるタイプの両方があります。
セミフォーマルからカジュアルまで、さまざまな場面で活用できるでしょう。
着物衿
着物衿のコートは、着物のように衿合わせをします。前は紐で留めます。カジュアル向きの衿です。
色・柄・素材も着物用コートの格に影響する
着物用コートの格は、衿の形以外にも「色」・「柄」・「素材」などの要因で決まります。
どんな風に格が変わるのか、以下で見ていきましょう。
着物用コートの色
黒色の着物用コートは格が高いです。結婚式や不祝儀をはじめとし、お子さまの卒業式・入学式などさまざまな場面に着ていけます。
一方で、カジュアルな場面には明るい色の着物用コートを合わせられます。着物に合う色を選んでみてください。
着物用コートの柄
紋付き羽織や絵羽模様・無地のコートは格が高いです。冠婚葬祭に合わせられます。
反対に、小紋柄や縞模様のコートは格が低く、街着・おしゃれ着に向いています。着物の柄に合わせてコーディネートしてみましょう。
着物用コートの素材
着物用コートの素材は、縮緬(ちりめん)が最高格とされています。礼装に合わせて羽織りましょう。
紬や木綿・ウールはカジュアル向きの素材で、街着やおしゃれ着に合わせます。
ビロードやベルベットと呼ばれるなめらかな素材は、カジュアルからフォーマルまでさまざまな場面に対応します。
コート以外で防寒する方法
着物用コート以外で寒さを防ぐこともできます。次の5つの方法に取り組んでみてください。
- インナーを着る
- マフラーを巻く
- 足袋用インナーを履く
- 防寒草履を履く
- カイロを貼る
それぞれ詳しく解説します。
インナーを着る
寒さが厳しい日には、冬用の暖かいインナーを着ましょう。
上半身を守るインナーシャツや、下半身を守るレギンスなどが販売されています。
上下でつながっているワンピースタイプのインナーもあります。
ユニクロのヒートテックなどを着ても問題ありません。着物時だけでなく、洋装時にも活用できて便利です。
ただし、着物用でないインナーを着る際は、胸元や首元・袖口・裾先から見えないようにだけ注意してください。衿元が詰まったインナーや、七分丈~十分丈のインナーはおすすめできません。
マフラーを巻く
着物は衣紋を抜いて着るため、首元が露出しています。防寒のためにマフラーを巻きましょう。
着物の全体のバランス崩さないような、シンプルで上品なマフラーがおすすめです。スヌードやティペットを選ぶと良いでしょう。
フリンジマフラーや大判マフラーを使う場合は、色や柄が着物の美しさを妨げないように注意してください。
なお、着物には洋装用のマフラーを合わせても問題ありません。お持ちのマフラーの中から、着物に合うものを選んでみてください。
足袋用インナーを履く
冬に足袋一枚は薄着すぎます。足袋の中に足袋用インナーを履き、足元を温めましょう。保温・発熱素材の足袋用インナーは500~1,000円程度で購入できます。
また、足を防寒するためには、綿素材・ウール素材の足袋や、裏起毛の足袋を履くことも効果的です。
足は冷えやすい部位なので、十分に寒さ対策を行いましょう。
防寒草履を履く
着物には草履を合わせるのが基本です。しかし、草履はサンダルのような形状をしており、冬に履くと冷気が足先に直撃してしまいます。
足先の冷えを防ぐためには、爪皮(つまかわ)が付いた防寒用の草履を履きましょう。冷気や雪・雨から足を保護できます。
カジュアルな着物であれば、ブーツを履くのもおすすめです。
カイロを貼る
着物の下にカイロを貼り、全身を温めましょう。
背中下部・ふくらはぎ下部・肩甲骨の間・おへその下の4箇所に貼るのが効果的です。大きな血管が通っているため、温めることで全身の血液の循環を促進できます。
上記の他に冷えやすい部位があれば、そちらにもカイロを貼りましょう。
また、着物を着た後にカイロを貼ることはできないので、着付け中に貼ることを忘れないでください。
まとめ
着物用コートについてまとめると、以下のようになります。
- 羽織:着物の上に羽織るカジュアルなアウター
- 道行:衿が四角形に開いているフォーマルな着物用コート
- 道中着:着物と同じように衿合わせをして着るカジュアルなコート
- 和装コート:洋装のロングコートに似たコート
- ショール:防寒用の肩掛け
- ポンチョ・マント:頭だけを出して着るカジュアルなコート
- 雨コート:雨天時に羽織るレインコート
- 着物用コートの格は、色・柄・素材や衿の形によって決まる
- コートの他に、インナー・マフラー・足袋インナー・防寒草履・カイロなどで防寒ができる
TPOに合わせて着物用コートを選び、全身のコーディネートを楽しみましょう。
この記事が、着物用コートについて知りたい方の参考になれば幸いです。