「着物を着たいけど、どんな帯を合わせれば良いのか分からない…。」
このようにお悩みの着物初心者の方に向けて、本記事では帯の種類と特徴を紹介します。サイズや歴史・結び方・価格なども細かく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
本記事を読めば、どんな着物にどんな帯を合わせれば良いか分かるようになり、着付けを楽しめるようになりますよ。
着物の帯の種類
着物の帯の種類は、主に「丸帯」「袋帯」「名古屋帯」「半幅帯」の4つに分けられます。
それぞれの帯の特徴を一覧表にまとめました。
帯の種類 | サイズ(幅×長さ) | 合う着物 |
---|---|---|
丸帯(まるおび) | 約30~32cm(約60~64cm)×約400~450cm | 白無垢/色打掛/黒留袖など |
袋帯(ふくろおび) | 約30cm×約400~450cm | 黒留袖/色留袖/訪問着/色無地/付け下げ/振袖など |
名古屋帯(なごやおび) | 約30cm×約330~360cm | 付け下げ/色無地(紋無し)/小紋/紬/御召など |
半幅帯(はんはばおび) | 約15cm×約330~360cm | 小紋/紬など |
以下では、帯の種類をより詳しく紹介します。ぜひ参考にしてください。
丸帯
丸帯は、最も格の高い帯です。結婚式で新婦が着る白無垢(しろむく)や色打掛(いろうちかけ)・黒留袖(くろとめそで)など、格が高い着物に締めます。格の高い帯なので金糸や銀糸を用いた豪華なデザインの物が多いです。
丸帯のサイズ
丸帯のサイズは、幅約30~32cm(約60~64cm)×長さ約400~450cmです。
袋帯の倍幅(幅約60~64cm)で織られた布地を半分に折り、縫い合わせているため表地と裏地のどちらにも柄があります。重量も非常に重いです。
丸帯の歴史
丸帯は江戸時代中期に誕生し、第一礼装に合わせる帯として主流でした。しかし、戦後に袋帯が作られてからは使用される機会が減り、今は結婚式以外ではほとんど使われません。
丸帯の締め方・結び方
丸帯は一重太鼓で結ぶことが多くなっています。
格が高い帯なので「二重太鼓じゃないの?」と思われる方もいるかもしれません。しかし、丸帯は厚みがあるため二重太鼓で結ぶのは難しいのです。また、丸帯は表と裏のどちらにもデザインが施されているため、一重太鼓でも十分豪華に見えるといった側面もあります。
丸帯の価格
丸帯の価格はピンキリです。安いものであれば1万円程度で購入できます。人間国宝の方が手がけた物や伝統工芸品など、レアな物になると100万円を超えるものも少なくありません。
袋帯
袋帯は、丸帯の次に格が高い帯です。フォーマルな場面に合わせる帯として最もよく使用されます。具体的には、黒留袖や色留袖・訪問着・色無地に合わせることが多いです。成人式で振袖に締める帯も袋帯です。
また、少しカジュアルな着物である“付け下げ”に袋帯を締めることもあります。袋帯を締めることで付け下げ自体の格が上がり、セミフォーマルな場面にも着用していけるようになるのです。
デザインはものによって異なりますが、最も格が高くなるのは「金・銀の刺繍が入った織りの袋帯」です。着物の帯は“染め”よりも“織り”の方が格が高くなります。また、金色や銀色も格の高さの象徴です。
そのため、付け下げのようなカジュアル寄りの着物に「金・銀の刺繍が入った織りの袋帯」を締めることはありません。格がチグハグになってしまいます。付け下げには、金・銀色を用いない染めの袋帯を締めるのが一般的です。
袋帯のサイズ
袋帯のサイズは、幅約30cm×長さ約400~450cmです。重さはものによって異なりますが、大体1kg前後です。
袋帯の歴史
袋帯の歴史は比較的浅いです。戦後の物資不足により誕生し、戦前に主流だった丸帯に取って代わるように流行し出しました。
また、時代の流れとともに軽装を好む方が増え、丸帯よりも軽くて締めやすい袋帯はどんどん主流になっていきました。今では、格の高い着物に合わせるスタンダードな帯となっています。
袋帯の締め方・結び方
袋帯は、二重太鼓で結ぶのが一般的です。二重太鼓とは、帯を結んだ際に背中に出る部分(=お太鼓)を二重にする結び方で、“喜びや幸せが重なるように“という願いが込められています。結婚式や式典の際など、お祝い事の席では二重太鼓を選ぶのが無難です。
二重太鼓の結び方についてはこちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
二重太鼓以外にも、袋帯は変わり結びをすることがあります。成人式で振袖を着る際は変わり結びを選ぶ方が多い印象です。変わり結びには、以下のようにさまざまな種類があります。
- 立て矢結び
- 文庫結び
- ふくら雀結び
- 花結び
- 蝶文庫結び
- 花流水矢(はなりゅうすいや)結び
- ダブルリボン結び
- 薔薇結び
- 孔雀(くじゃく)結び
それぞれ見た目や意味合いが異なります。詳しくはこちらの記事で紹介していますので、ぜひあわせてお読みください。
袋帯の価格
袋帯の価格は数万円から数百万円と幅広くなっています。人間国宝が手がけたものや高級素材を用いたもの・伝統工芸品に認定されているものは高価です。一方で、ポリエステル素材のものや機会織りの袋帯は安価な傾向があります。
名古屋帯
袋帯の次に格が高い名古屋帯は、カジュアルな着物に締めることが多いです。具体的には、付け下げや紋無しの色無地・小紋・紬・御召に合わせます。
付け下げや紋無しの色無地の場合、名古屋帯を締めることによって着物の格を落とすことができます。
袋帯 | 名古屋帯 | |
---|---|---|
付け下げ | 子供の卒業式・七五三など (フォーマル) | お食事会・観劇など (カジュアル) |
紋無しの色無地 | 同窓会・祝賀会など (セミフォーマル) | お食事会・観劇など (カジュアル) |
基本的に、名古屋帯は中央以外が縫われている「名古屋仕立て」の形に仕立てられています。両端のみが半分に縫われており、それ以外が開いている「松葉仕立て」や、端が縫われておらず、一本を通して開いて仕立てられている「おそめ仕立て」の名古屋帯もあります。
デザインの種類もさまざまです。お太鼓部分のみに柄が入った「お太鼓柄」や帯全体に柄が入った「全通柄」、表に出ない部分には柄が入っていない「六通柄」の3つがあります。
また、名古屋帯には織りと染めの2種類があります。織りの名古屋帯の方が格が高いので、フォーマルな場面には織りの名古屋帯を締めましょう。反対に、カジュアルな場面には染めの名古屋帯が適しています。
名古屋帯のサイズ
袋帯のサイズは、幅約30cm×長さ約330~360cmです。袋帯よりも40~120cm程度短くなっています。おそめ仕立ての名古屋帯は袋帯と見分けが付きづらいですが、長さを見比べて判断しましょう。
名古屋帯の歴史
名古屋帯の歴史は袋帯よりも浅いです。大正末期に、名古屋女学校の創始者である越原春子氏によって考案されたようです。
袋帯で二重太鼓を結ぶのが大変で、より早く簡単に使用するためにと考えられたのが名古屋帯です。なぜ早く簡単に帯結びをする必要があったのかというと、その背景には女性の社会進出があります。男性に負けず劣らず仕事に邁進するためには、より身支度の時間を短縮する必要があったのです。
名古屋帯の締め方・結び方
名古屋帯の結び方は、お太鼓部分が一重になっている「一重太鼓」が基本です。一重太鼓の結び方はこちらの記事で1ステップずつ詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
名古屋帯の価格
名古屋帯の価格は数万円~数十万円です。素材や作者・生産地などによって価格が前後します。
半幅帯
半幅帯は、名古屋帯よりもカジュアルな帯です。小紋や紬などの普段着着物に締めて使用します。フォーマルな場面に締めていくことは全くありません。
半幅帯はさらに細かく分けると、「小袋帯(こぶくろおび)」と「単衣帯(ひとえおび)」の2種類になります。小袋帯とは、袋状になっている半幅帯です。二枚の生地の端が縫い合わさっています。単衣帯は、一枚仕立ての半幅帯です。夏祭りや花火大会の際、浴衣に締める帯はほとんどが単衣帯となっています。
半幅帯のサイズ
半幅帯のサイズは幅約15cm×長さ約330~360cmです。丸帯や袋帯・名古屋帯の半分程度の幅になっています。
半幅帯の歴史
着物の帯は元々細い物が主流でした。平安時代まで遡ると、紐状の帯が使用されていたことが分かります。
幅広の帯が誕生したのは江戸時代中期で、フォーマルな着物には約30cm程度の丸帯を合わせるのが主流になりました。
しかし、同時代にも半幅帯は使用されていました。湯上り着や寝巻きとしての浴衣が広まり、それに半幅帯を締めていたのです。半幅帯は、江戸時代中期からカジュアルな扱いだったことが分かります。
半幅帯の締め方・結び方
半幅帯の結び方は種類が豊富です。有名な結び方をピックアップしました。
- みやこ結び
- 貝の口結び
- カルタ結び
- リボン結び
- 文庫結び
- 吉弥結び
- 矢の字結び
多彩なアレンジが可能なので、着物の色や柄・その日の気分によって結び方を変えて楽しめます。
半幅帯の価格
半幅帯の価格は、数千円~数十万円です。カジュアルな帯なので基本的にはお手頃ですが、なかには伝統工芸品に指定されている高価なものもあります。ただし、いくら値段が高くても、フォーマルな着物には合わせることはできないので注意してください。
まとめ
今回紹介した4種類の帯の特徴を、あらためて表でまとめます。
帯の種類 | サイズ(幅×長さ) | 合う着物 |
---|---|---|
丸帯(まるおび) | 約30~32cm(約60~64cm)×約400~450cm | 白無垢/色打掛/黒留袖など |
袋帯(ふくろおび) | 約30cm×約400~450cm | 黒留袖/色留袖/訪問着/色無地/付け下げ/振袖など |
名古屋帯(なごやおび) | 約30cm×約330~360cm | 付け下げ/色無地(紋無し)/小紋/紬/御召など |
半幅帯(はんはばおび) | 約15cm×約330~360cm | 小紋/紬など |
表の内容以外にも、歴史や結び方・価格などを紹介しました。
それぞれどのような帯で、どんな特徴を持つか理解できたでしょうか。場面や着物によって帯を使い分け、結び方を工夫しながら全身のコーディネートを楽しんでみてください。