カジュアルな着物のコーディネートでよく使われる“根付”。
見たことや聞いたことはあっても、具体的にどういった小物なのか知らない方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、着物の根付についての基礎知識を徹底解説していきます。
根付とは何かや、付け方・種類・素材・歴史などを初心者でも分かりやすいように説明するので、ぜひ参考にしてみてください。参考になる根付のコーディネートも紹介します。
着物の根付とは
根付とは、着物の帯に付ける和装用のアクセサリーです。手のひらサイズくらいの大きさで、さまざまなデザイン・素材のものがあります。
根付は、着物が日常的に着用されていた時代には、小物を持ち歩くための実用品として使われていました。巾着や印籠などを、帯から提げて持ち歩くために根付が使われていたのです。
このように実用品としての役割が大きかった根付は、時代とともに装飾品としての色合いを強めていきます。現在では、美術品や骨董品として展示されたり売買されたりすることも増えてきました。
着物の根付の付け方
着物に根付を付けるには、着物に根付けを付けるには、以下の3つのアイテムが必要になります。
- 根付
- 根付紐
- 根付プレート
根付を付ける方法は男女で異なります。それぞれの方法を詳しく見ていきましょう。
女性が着物に根付を付ける方法
女性が着物に根付けを付ける手順は、以下の通りです。
- 根付に根付け紐を通し、結びます。
- 根付プレートに根付紐を通し、結びます。
- 帯の一巻き目と二巻き目の間に、上から根付プレートを差し込みます。
- 根付と根付紐は帯の外に出し、垂らします。
男性が着物に根付を付ける方法
男性の場合、現代でも小物を持ち運ぶための道具として根付を活用する場合が多いです。実用品として使う場合、根付けは以下のように付けます。
- 根付と小物(スマートフォンや小物入れ等)を、根付け紐で結びつけます。
- 根付プレートに根付紐を通し、結びます。
- 根付を帯の下から入れ、帯の上部に引っかけます。
- 小物を帯の下から出してぶら下げます。
上記の手順で根付を付けると、帯から小物を垂れ下げるような形で持ち歩くことができます。
着物の根付のTPO
根付は、カジュアルな小物です。結婚式や式典といったフォーマルな場には適していません。原則、礼装には根付を付けないように注意してください。
また、お茶会に着ていく着物にも根付を合わせてはいけません。根付が茶器に当たり、傷つけてしまう可能性があるためです。
根付は、小紋や紬などのカジュアルなおしゃれ着や普段着着物に合わせて使いましょう。
着物の根付の種類
着物の根付にはさまざまな種類がありますが、今回は特に有名な以下の5種類について紹介していきます。
- 形彫(かたぼり)根付
- 鏡蓋(かがみぶた)根付
- 饅頭(まんじゅう)根付
- 柳左(りゅうさ)根付
- 面根付
それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
形彫(かたぼり)根付
形彫(かたぼり)根付とは、人間や動物・植物などをモチーフとした根付です。金属や木・ガラスといったさまざまな素材に彫刻が施されています。全角度から彫刻をおこなう「丸彫り」という高度な技術を要します。
形彫根付は根付の中で最も主流で、美術品としての人気も高いです。
鏡蓋(かがみぶた)根付
鏡蓋(かがみぶた)根付は、皿に蓋をはめこんだ根付です。皿の部分には木や象牙などの素材を用いることが多くなっています。蓋は金属製である場合が多く、ほとんどの場合は「浮き彫り」といった彫刻の技術が施されています。
饅頭(まんじゅう)根付
饅頭(まんじゅう)根付は、名前の通り饅頭の形をしています。浮き彫りの技術を用いることが多く、饅頭型の中に大胆な絵柄が施されています。
柳左(りゅうさ)根付
柳左(りゅうさ)根付とは、饅頭根付に透かし彫りの技術を施した根付のことです。透かし彫りでは土台となる素材をくりぬき、向こう側が見えるように彫り進めるため、非常に高い技術力を要します。
面根付
面根付とは、能や狂言で使われるお面を題材とした根付です。七福神や般若などの細かな表情が彫られています。
能面師が副業として作り始めたことが面根付の始まりとも言われています。
着物の根付の素材
着物の根付に使われる素材は、主に以下の3つです。
- 木材
- 動物の角・牙など
- 金属
それぞれ詳しく説明します。
木材
根付の素材として最も主流なのが木材です。なかでもよく使われる木材としては、主に黄楊(つげ)や黒檀(こくたん)、檜(ひのき)などが挙げられます。その他に、桜や一位などが用いられることもあります。
木材で作られた根付からは、自然素材ならではの温かみが感じられるでしょう。
動物の角・牙など
根付は、動物の角・牙などを素材とすることも少なくありません。具体的には、象や猪の牙、鹿や水牛・マンモスの角、べっ甲などが使われている根付があります。
ただし、動物の角・牙などが用いられている根付は古くに作られたものがほとんどです。1975年に発効されたワシントン条約により、象牙やべっ甲をはじめとした、絶滅の恐れがある種については国際取引が禁止されるようになったためです。
動物の角や牙を素材とした根付は、独特な色や質感を持ち合わせており、その風合いを存分に楽しむことができます。
金属
金や銀・銅・鉄といった金属製の根付もあります。
金や銀の根付は華やかな光沢が特徴で、付けるだけで高級感が漂います。銅や鉄の根付はサビによる経年変化などを味わうことが可能です。
その他
根付には、ガラスやアクリル樹脂・珊瑚(さんご)・翡翠(ひすい)・水晶といった素材も用いられます。
ガラスやアクリル樹脂は上からイラストをプリントできるため、現代的なデザインの根付が多くあります。
珊瑚の根付は、赤・ピンク・オレンジ・白など、珊瑚の取れる地域によって色が異なる点が特徴です。また、珊瑚ならではの艶感も味わえます。
翡翠とは、深緑色の宝石のことです。翡翠の根付はシンプルなデザインが多いですが、天然素材だからこその色ムラや質感を楽しめます。
水晶の根付は透明感があるので、純粋さや無垢さが感じられます。涼しげな印象を演出することができるので、夏の絽や紗に合わせるのもおすすめです。
着物の根付の歴史
根付の誕生がいつかは明確には分かっていません。しかし、江戸時代初期の絵画に根付が描かれていることから、江戸時代には既に根付が流通していたものと考えられます。
根付は当初、男性が巾着や印籠といった小物を持ち歩くための道具として流行していました。
しかし明治時代になり、日本にも洋装が取り入れられるようになると、実用品としての根付の文化は徐々に衰退していきました。根付を制作する作家は減少し、日本人からの関心も薄れていったのです。
一方で、装飾品としての根付は諸外国から注目されるようになり、より価値を高めるようになりました。愛好家の間で売買や収集などが行われ、盛んに流通するようになりました。今では、希少価値の高い根付が美術品として展示されることもあります。
着物の根付のコーディネート
根付を使った着物のコーディネートを紹介していきます。色合わせやデザインの参考にしてみてください。
ワンポイントの緑がアクセントになる根付コーディネート
薄紫の色無地に緑の根付を合わせているコーディネートです。着物の色や柄がシンプルな分、緑の根付がワンポイントのアクセントとなっています。コーディネート全体が引き締まった印象です。
着物と同系色の紫の根付は、上品さを演出しています。緑の根付と比べると、全体として柔らかい印象に見えるのではないでしょうか。
根付ひとつでもこのように印象が大きく変わって見えるので、ぜひ色・柄・形状などのデザインにこだわって選んでみてください。
パールが上品に輝く根付コーディネート
素朴な柄の久留米絣に、パールの根付を合わせたコーディネートです。パールの根付があることで、大人の女性らしい着こなしとなっています。
また、着物や帯がシンプルだからこそ、パールの根付がより一層上品に輝いて見えるのも本コーディネートの特徴です。
その日の気分をあげるアイテムとして根付を取り入れるのも良いでしょう。
シルバーの蝶が可愛らしく舞う根付コーディネート
淡いベージュや白色を基調とした着物や帯に、シルバーの根付を合わせたコーディネートです。
淡色でまとめられたコーディネートは、装飾品なしでも高貴な印象ですが、そこにシルバーの蝶の根付を合わせることで、さらに優雅さが感じられるようになります。
渦巻き模様がユニークな根付コーディネート
大きな渦巻き模様の根付は、豪華な色使いで曲線を描いた帯との相性が抜群です。
着物が色・柄ともにシンプルである分、帯や根付のある体の中心部に注目が集まります。
緩急を付けたコーディネートに挑戦してみたい方はぜひ参考にしてみてください。
半襟とリンクした根付コーディネート
紫を中心に用いた奇抜な印象の着物に、差し色として蛍光色の根付を合わせたコーディネートです。根付の色が半襟とリンクしているため、色使い自体は派手ですが全体としてはまとまった印象に仕上がっています。
遊び心たっぷりな本コーディネートは、着物を普段着として楽しむ際の参考になります。
蛙と蝉が彫られた根付の男性コーディネート
本コーディネートで使われているのは、蛙と蝉が彫られた形彫根付です。360度、どこからみても繊細な彫刻が施されており、視覚的に楽しめます。
男性着物における根付の役割は、帯に引っかけて小物を持ち歩くことが主となっていますが、どんなデザインの根付を付けるか選ぶワクワク感を味わうこともできるでしょう。
印籠を持ち歩く根付の男性コーディネート
本コーディネートからは、根付を使って実際に印籠を持ち歩いている様子が分かります。伝統的な日本らしさを感じられるのではないでしょうか。
印籠はかつて朱肉やはんこ・薬などを入れて持ち運ぶためのものだったので、容量は少ないですが、着物を通して日本文化を味わいたい方は一度試してみてはいかがでしょうか。
まとめ
本記事では、着物の根付についての基礎知識を解説してきました。内容をまとめると以下のようになります。
- 根付とは、着物の帯に付ける和装用の実用品・装飾品
- 根付はカジュアルな小物なので、格式高い場面には適さない
- 根付には形彫根付・鏡蓋根付・饅頭根付・柳左根付・面根付などさまざまな種類がある
- 根付の素材は、主に木材・動物の角や牙・金属などが用いられる
本記事を通して、根付に関する知識は深まったでしょうか。根付は実用品としても装飾品としても優秀な小物です。ぜひコーディネートに取り入れてみてください。
また、根付に関してより知識を深めたい方や、コーディネートの幅を広げたい方は着付け教室で学ぶのもおすすめです。着物文化に精通したプロから、着付けの方法や歴史について教わることができます。
以下の記事で、おすすめの着付け教室を一覧形式で紹介しているのでぜひ参考にしてみてください。