「着物に興味があるけど、種類や選び方が分からない」という男性は少なくありません。
そこで本記事では、男性が着物を着るメリットと男性の着物・小物の種類、選び方を初心者向けに紹介します。
着物に興味をお持ちの男性はぜひ参考にしてください。
着物男子になるメリット
男性が着物を着るメリットは、次の3つが大きいです。
- お手頃価格で手に入る
- 人とかぶらず、オシャレな印象を残せる
- 着付けが女性よりも簡単にできる
1つずつ詳しく見ていきましょう。
お手頃価格で手に入る
「着物は価格が高い」と考え、なかなか手を出せない方は多いです。
しかし、普段着としての男性着物の費用はそこまで高くありません。安ければフルセット(※)で20,000円を切ります。
丁寧にお手入れをすれば何年も着続けられるので、とてもコストパフォーマンスが高いです。
※着物・羽織・帯・長襦袢・肌着・履物・足袋・半衿・羽織紐など
人とかぶらず、オシャレな印象を残せる
現代の日本で、着物を着る男性はとても少ないです。
そのため、着物を着れば他人とファッションがかぶることはほとんどないでしょう。
「他人とは違うファッションをしたい」「自分ならではのオシャレをしたい」と考える方にとって、着物は非常に魅力的な服装だと言えるでしょう。
オシャレな色・柄・素材などの組み合わせを考えるのも楽しいですよ。
着付けが女性よりも簡単にできる
男性の着物は女性の着物よりも着付けが簡単です。
おはしょりを作ったり、難しい帯結びをしたりする必要はありません。
肌着・長襦袢・着物の順に着て、腰紐と帯を締めるだけで着付けが終わります。
慣れれば3分前後で着付けられるようになるでしょう。
洋服よりは手間がかかりますが、とりわけ大変というわけでもないので、ぜひ挑戦してみてください。
上記のメリットを見て着付けをしてみたいと思った男性の方は、ぜひ一度着付けを習ってみてはいかがでしょうか。男性でも通える着付け教室を以下の記事で紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
男性の着物の種類
男性の着物の種類は次の4つに分けられます。
- 第一礼装
- 準礼装
- 略礼装
- お洒落着・普段着
1種類ずつ、特徴や着用シーンを紹介します。
第一礼装
男性の着物の礼装は「黒羽二重五つ紋付(くろはぶたえいつつもんつき)」の着物と羽織に、仙台平(せんだいひら)の袴を合わせます。
黒羽二重五つ紋付
黒羽二重五つ紋付は、黒色に染めた羽二重(はぶたえ)に、背中・両袖の後ろ・両胸に一つずつ紋が入っています。羽二重とは、細い経糸2本に緯糸1本を交差させた生地のことです。
仙台平
仙台平とは最高格の袴のことです。頑丈で独自の光沢を放っています。仙台平の多くが縞柄です。
着用シーン
第一礼装は、主に結婚式で新郎が着用します。新郎以外にも、新郎新婦の父親や親族・仲人が着ることもあります。
準礼装
男性の着物の準礼装は「色紋付(いろもんつき)」の着物と羽織に袴を合わせます。
色紋付
色紋付きとは、黒色以外の生地に紋が入った着物・羽織のことです。
五つ紋・三つ紋・一つ紋の3種類があり、紋の数によって格の高さが変化します。
- 五つ紋:第一礼装
- 三つ紋:準礼装
- 一つ紋:準礼装・略礼装
生地は羽二重や綸子(りんず)・縮緬(ちりめん)を用います。
綸子とは、繻子織(しゅすおり)で織られた後染めの絹の生地のことです。
縮緬とは平織の絹の生地のことで、経糸に強く撚(よ)った緯糸を交差させています。
着用シーン
色紋付の着用シーンは紋の数によって変わります。
- 五つ紋:結婚式・披露宴(新郎)、親族の結婚式
- 三つ紋:親戚の結婚式・披露宴や祝賀会等
- 一つ紋:親戚や友人の結婚式・披露宴やパーティ
略礼装
男性の着物の略礼装は「お召一つ紋付(おめしひとつもんつき)」の着物と羽織に袴を合わせます。
お召一つ紋付
お召一つ紋付とは、紋が入っているお召や紬の着物を指します。
お召とは、御召糸に撚り(より)をかけて織り上げた先染めの着物のことです。
紬とは、紬糸(つむぎいと)を使った先染めの織物の着物のことです。
着物に紋が入っていなくても、羽織に紋が入っていれば略礼装として着用できます。
ただし、お茶会は羽織を着ないルールになっているので、その場合は紋が入っている着物を選ぶ必要が生じます。
着用シーン
略礼装は、親戚や友人の結婚式・披露宴やパーティ、お茶会などで着用します。
お洒落着・普段着
男性の着物の洒落着・普段着は、「着流し」です。
着流し
着流しとは、男性が着物を着る際に、袴を着用しない格好のことです。紬やお召・木綿などの生地の着物を着用します。
また、着流しの際は、袖のない羽織や着物とセットになっているアンサンブルの羽織を合わせるのが一般的です。普段着の場合は羽織を着ないこともあります。
着用シーン
お洒落着は、同窓会や観劇・お食事会などに着ていきます。
普段着は、街着や室内着として着用します。
男性の着物の素材
男性の着物の生地は、以下の9種類が主流です。
- 絽(ろ)
- 紗(しゃ)
- 綸子(りんず)
- 緞子(どんす)
- 羽二重(はぶたえ)
- 縮緬(ちりめん)
- 縮(ちぢみ)
- 上布(じょうふ)
- 紬(つむぎ)
着物の生地は、素材や織り方・染め方によって呼び方が変わります。
上記9種類についてより詳しくは、「着物の生地9種類と、生地素材・織り方・染め方を紹介」の記事で解説しています。ぜひあわせてお読みください。
男性の着物で使う小物
男性の着物で使う主な小物を6種類紹介します。
- 帯
- 履物
- 足袋
- 長襦袢
- 半衿
- 羽織紐
各小物の特徴と、格ごとの選び方を見ていきましょう。
帯
男性の着物の帯は、角帯(かくおび)と兵児帯(へこおび)の2種類があります。
角帯とは、幅8~11cm、長さ3.8~4.2mの帯です。絹や綿・化学繊維などで織られています。
フォーマルな場面からカジュアルな場面まで柔軟に対応する帯です。
結び方は、貝の口(かいのくち)と浪人流し(ろうにんながし)がよく用いられます。
兵児帯とは、幅74cmもしくは50cm、長さ3.5~4m前後の帯です。生地は縮緬が用いられています。角帯よりも柔らかで取り扱いやすい点が特徴です。
カジュアルな場面のみに適しています。
結び方は、片わな結び(かたわなむすび)が主流です。
以下では、着物の格に合わせた帯の選び方を解説します。
第一礼装
第一礼装には、博多織や西陣織の角帯を合わせます。金や銀の絹糸を用いた帯を使うのが基本です。
準礼装
準礼装には、絹糸を使用した角帯を合わせるのが一般的です。色は着物や羽織に合わせて決めると良いでしょう。
略礼装
準礼装と同じく、絹糸を使用した角帯を合わせることが多いです。
お洒落着・普段着
お洒落着や普段着には木綿・化学繊維の角帯や兵児帯を合わせます。
ゆったりと寛ぎたいときには兵児帯がおすすめです。
履物
男性の着物の履物は、雪駄(せった)と下駄の2種類です。
雪駄とは、い草や竹皮で織った履物のことです。
下駄とは、木製の履物のことです。鼻緒があり、底には歯がついているのが一般的です。
第一礼装
第一礼装には畳表の雪駄を履きます。慶事の際は白い鼻緒の雪駄を、弔事の際は黒い鼻緒の雪駄を選びます。
準礼装
準礼装には雪駄を合わせます。鼻緒は無地や目立たない柄のものが適しています。
略礼装
準礼装と同じく、雪駄を履くのが一般的です。着物や羽織と合わせて鼻緒の色や柄を選んでみましょう。
お洒落着・普段着
お洒落着や普段着には下駄が合います。烏表(からすおもて)の雪駄でも良いでしょう。
足袋
足袋とは、着物着用時に足にはく衣類のことです。
着物の格ごとの、足袋の選び方を解説します。
第一礼装
第一礼装には白足袋を合わせるのがルールです。生地はキャラコ木綿か羽二重を選びましょう。弔事の際には黒足袋を合わせる地域もあります。地域ごとに異なるので、親戚や友人に確認しておくと安心です。
準礼装
白足袋を合わせます。
略礼装
白足袋を合わせます。
お洒落着・普段着
お洒落着や普段着には、黒足袋や紺足袋・色足袋を合わせます。
着物や袴・羽織の色に合わせてコーディネートを楽しみましょう。
長襦袢
長襦袢とは、着物の下に着るインナーウェアのことです。
格によって選び方が異なるので、チェックしていきましょう。
第一礼装
第一礼装の場合、白羽二重か色羽二重の長襦袢を着ます。色羽二重の色は白紫やグレーなどの落ち着いた色が向いています。
準礼装
白色か、落ち着いた色の長襦袢を着ます。
略礼装
白色か、落ち着いた色の長襦袢を着ます。
お洒落着・普段着
着物や羽織の色に合わせて長襦袢を選びましょう。お洒落着や普段着の場合は、長襦袢ではなく半襦袢を合わせてもかまいません。
半衿
半衿とは、長襦袢につける衿のことです。格ごとの選び方を紹介します。
第一礼装
第一礼装の際は、塩瀬羽二重(しおぜはぶたえ)の白色の半衿を付けます。
ただし、弔事の場合は黒やグレーの半衿を付けます。
準礼装
白色の半衿を合わせます。
略礼装
白色の半衿・または色衿を合わせます。格式張った場面では、白色を選べば間違いありません。
お洒落着・普段着
お洒落着・普段着の際は、色衿を付けるのが一般的です。着物全体のアクセントとなるような半衿を選ぶとオシャレですよ。
羽織紐
羽織紐とは、羽織の前部が開かないように留める紐のことです。
格ごとの選び方を紹介します。
第一礼装
第一礼装時の羽織紐は白色と決まっています。
また、基本的には房がついている平組や丸組の羽織紐を選びます。
準礼装
白色・もしくは落ち着いた色の羽織紐がおすすめです。
略礼装
着物の色に合わせて、好きな色・形・柄の羽織紐を選びましょう。
お洒落着・普段着
着物の色に合わせて、好きな色・形・柄の羽織紐を選びましょう。
とんぼ玉や天然石を用いた羽織紐などを使い、遊び心を持たせるのがおすすめです。
男性の着物の選び方
男性の着物は次の3点を基準に選びましょう。
- シーンで選ぶ
- 季節で選ぶ
- 素材で選ぶ
それぞれ詳しく説明します。
シーンで選ぶ
出かける場所やシーンに合わせて着る着物を選びましょう。
親族として結婚式に参列する場合は準礼装や略礼装が好ましいですし、食事会に行く場合はお洒落着が向いています。
TPOに合わせて着物の格を選ぶことが重要です。
季節で選ぶ
男性が着物を選ぶ際は季節感も重要です。
暑い夏は絽や紗・麻、寒い冬はウールといった形です。
また、夏は長襦袢を半襦袢に変えたり、冬はコートを羽織ったりなどのアレンジも考えられます。
季節に合う着物を選び、快適に過ごしましょう。
素材で選ぶ
着物を選ぶ上では、素材を考慮することも忘れてはなりません。
素材によって、通気性や保温性・洗濯性・肌触りなどが異なります。
あなた自身の好みや季節・シーンに合わせて適切な素材を選びましょう。
「まずは安価に着物を始めてみたい」とお考えの方は、化学繊維の着物がおすすめです。
着物の生地の素材についてより詳しくは、以下の記事をご参照ください。
まとめ
本記事では、着物男子になるメリットと男性の着物・小物の種類、選び方を紹介しました。
TPOに適した着物を選び、あなただけのコーディネートを楽しんでみてください。
この記事が、男性の着物について知りたい方の参考になれば幸いです。