最高格の帯として知られる「丸帯」。
名前は聞いたことがあったり、存在自体は知っていたりしても、具体的にどのような帯なのかは知らない方が多いのではないでしょうか?
丸帯は使われる機会が非常に限られているため、詳しい特徴を知らなくても当然です。
そこで本記事では、丸帯の特徴や他の帯との違いについて詳しく解説していきます。
丸帯の知識を得ることで、他の帯への理解も深まり、より着付けを楽しめるようになります。ぜひ最後までじっくりとお読みください。
丸帯とは
丸帯は、帯の中で最も格が高いものです。江戸時代中期から使われるようになった帯で、かつては礼装用の帯として使われるのが主流だったようです。
しかし最近では、結婚式で新婦が着る白無垢(しろむく)や色打掛(いろうちかけ)といった、特別な着物に対してのみ使われるように変化しました。
また、丸帯は帯の格が最も高いのでデザインも豪華です。多くの丸帯は、金糸や銀糸を用いた華美な仕上がりになっています。
丸帯の特徴
丸帯には、以下のような特徴があります。
- 非常に重く、結ぶのが難しい
- 表裏どちらにも柄が入っている
- 袋帯よりも短い
それぞれ詳しく説明します。
非常に重く、結ぶのが難しい
丸帯は片縫い袋で仕立てられています。片縫い袋とは、帯地を半分に折って袋状に仕立てる製法を指します。
丸帯の場合は幅およそ70cmと広い帯地のものを半分に折って仕立てるので、重量が非常に重いです。重さは袋帯2本分ともいわれています。
また、丸帯は片縫い袋で仕立てられているため、他の帯と比べて分厚さも2倍になっています。
このように、丸帯は重くて分厚いため結ぶのが非常に大変です。
表裏どちらにも柄が入っている
上記で、片縫い袋で仕立てられている丸帯は重くて分厚いというマイナス面の特徴を紹介しましたが、実はメリットもあります。
そのメリットとは、表裏どちらにも柄が入っている点です。他の帯の場合、裏地には柄が入っていません。しかし丸帯は表裏の両面に同じ柄が入っているため、見た目が非常に華やかです。
袋帯よりも短い
重くて分厚い丸帯ですが、長さは4m前後と袋帯よりも短いです。
よって二重太鼓をするのが難しく、一重太鼓で結ぶ方が多くなっています。
丸帯は重厚さがあるので、一重太鼓でも見た目は十分豪華ですが、中には「二重太鼓で結ぶのがマナーである」という意見を持つ方もいるので注意が必要です。
丸帯を使いたい方は、事前に親族や地域のマナーを確認しておくと良いでしょう。
丸帯と他の帯を比較
丸帯以外の帯は、主に以下の3種類です。
- 袋帯
- 名古屋帯
- 半幅帯
それぞれ丸帯と比較し、共通点や相違点を解説していきます。
袋帯
丸帯と袋帯は間違えられることが多い2つです。それぞれの違いを確認していきましょう。
丸帯 | 袋帯 | |
---|---|---|
サイズ(長さ×幅) | 約4m×約35cm | 約4.2~4.5m×約30cm |
重さ | 約3kg | 約1~2kg |
仕立て方 | 片縫い袋 | 本袋、縫い袋…など |
合わせる着物 | 白無垢、色打掛など | 黒留袖、色留袖、訪問着、色無地、付け下げ、振袖など |
価格 | 数万円から数百万円 | 数万円から数百万円 |
袋帯の方が幅は狭く、長さは長いです。重量は丸帯の半分程度となっています。
しかし、メジャーやはかりがなく、サイズや重量を確認できない場合もあるでしょう。
そのような場合に、丸帯と袋帯を一発で見分ける方法があります。それは、帯の裏地を見ることです。
帯の裏地を見た際に、表地と同じ柄が入っていれば丸帯だと判断できます。
袋帯は本袋・縫い袋という仕立て方をされているため、裏地は無地で、柄が入っていません。
名古屋帯
丸帯と名古屋帯の違いは、以下の通りです。
丸帯 | 名古屋帯 | |
---|---|---|
サイズ(長さ×幅) | 約4m×約35cm | 約3.3~3.6m×約30cm |
重さ | 約3kg | 約0.5~1.5kg |
仕立て方 | 片縫い袋 | 名古屋仕立て、松葉仕立て、東京仕立て、開き仕立て、総かがり仕立て、トンネル仕立て…など |
合わせる着物 | 白無垢、色打掛など | 付け下げ、色無地(紋無し)、小紋、紬、御召など |
価格 | 数万円から数百万円 | 数万円から数十万円 |
名古屋帯はこのように、帯の端が半分に縫われているのですぐに見分けがつくでしょう。
ただし、名古屋帯の仕立て方は非常に豊富なので、中には端が半分に縫われていない種類もあります。形状で判断できない場合は、サイズや重さを比較してください。
また、丸帯が最も格の高い帯であるのに対して、名古屋帯は比較的カジュアルな帯なので、使われるシーンもまったく異なります。
半幅帯
丸帯と半幅帯の違いを見ていきましょう。
丸帯 | 半幅帯 | |
---|---|---|
サイズ(長さ×幅) | 約4m×約35cm | 約3,3~3.6m×約15cm |
重さ | 約3kg | 約0.3~0.5kg |
仕立て方 | 片縫い袋 | 一枚仕立て |
合わせる着物 | 白無垢、色打掛など | 小紋、紬など |
価格 | 数万円から数百万円 | 数千円から数十万円 |
上記の比較表から分かる通り、丸帯と半幅帯はサイズ・重さ・仕立て方・合わせる着物・価格などすべての面で異なります。
半幅帯は他の帯と違って幅が15cmしかないので、見分けるのも容易いでしょう。
ただし、価格に関しては注意が必要です。半幅帯はカジュアルな帯として安価に販売されているケースが多いですが、伝統工芸品に指定されている種類は数十万程度の価格になることもあります。場合によっては丸帯より高値になることもあるので、価格だけで帯の種類を判断することは推奨できません。
丸帯を合わせる着物・適切なシーン
丸帯は、主に結婚式で新婦が着る白無垢や色打掛に合わせます。舞妓さんの衣装にも使用されます。これらを見て分かる通り、丸帯が使われるシーンは非常に限られています。
使う機会が少ないからこそ、婚礼衣装にはぜひ丸帯を合わせてみてはいかがでしょうか。ただし、サイズの問題からアレンジの融通は利きづらいので、華やかな結び方をしたい場合は袋帯を使うのが賢明です。
丸帯の結び方
丸帯は分厚くて短いため、結び方の種類も限られています。今回は、丸帯でできる主な結び方を5つ紹介します。
- 一重太鼓
- 二重太鼓
- 引き抜き結び
- 立て矢結び
- だらり結び
それぞれ詳しく解説します。
一重太鼓
一重太鼓とは、帯を結んだ際に背中に出る部分(=お太鼓)が一重になる帯の結び方です。
主に名古屋帯で用いられるカジュアルな結び方ですが、丸帯でも主流な結び方として用いられています。というのも、丸帯は長さが短く生地が分厚いため、複雑な結び方に適していないからです。
しかし、一重太鼓にしたからといってカジュアルライクになるわけではありません。丸帯はその厚さやデザイン性・素材といった要素から重厚感があり、一重太鼓にしても十分に豪華に仕上がります。
二重太鼓
二重太鼓は、お太鼓を二重にした帯の結び方です。結婚式や式典などのフォーマルなシーンで袋帯を結ぶ際は、二重太鼓を用いることが多くなっています。二重太鼓には“喜びや幸せが重なるように“という願いが込められており、おめでたい場にふさわしい結び方だからです。
この二重太鼓は、丸帯にも適しています。しかし、帯の長さ・厚さの問題でお太鼓を二重にするのは非常に難易度が高いです。
よって、白無垢や色打掛に合わせる丸帯を二重太鼓にしたい方は、着付け師の方に、事前に対応可能かどうかを確認しておく必要があります。
引き抜き結び
江戸時代中期から大正にかけて、丸帯の結び方として主に用いられていたのが「引き抜き結び」です。見た目はお太鼓結びに似ているのですが、よく見ると柄が上下反転しています。
引き抜き結びをする用にデザインされた丸帯は「引き抜き帯」と呼ばれています。引き抜き帯でお太鼓結びをすると柄の見え方が反転してしまうため注意してください。
丸帯の仕立て方を見て、お太鼓結びと引き抜き結びのどちらが適しているか判断すると良いでしょう。
立て矢結び
立て矢結びは、ここまで紹介した3種類の結び方とは違い、見た目が豪華です。矢を背負っているような見た目から立て矢結びと名付けられました。
背中側から見ると、立体感のある大きな蝶々結びが斜めに位置していることを確認できます。
重厚感のある丸帯で立て矢結びをすると、非常に存在感があります。お色直しのタイミングで結び方に変化を付けてみるのも良いかもしれません。
だらり結び
だらり結びは、舞妓さんがおこなう帯結びです。帯の両端をだらりと下げて結びます。一般の方が着付けで用いることはありません。
だらり結びに使われる丸帯は「だらり帯」と呼ばれます。長さ約5m・重さ約20kgと、非常に長くて重いのが特徴です。そのため、着付けの際には男衆(おとこし)と呼ばれる着付け師に帯結びをしてもらうことになっています。
丸帯の値段
丸帯は最高格の帯なので値段も手が届かないほど高いと思われることが多いですが、案外そのようなことはありません。価格はピンキリで、安いものは1万円程度で購入できます。
一方で、伝統工芸品の丸帯や、人間国宝の方が手がけた丸帯となると100万円以上の値段がついています。
生産地・素材などの希少価値が高い丸帯の場合は、20~30万円程度で販売されているケースが多いです。
丸帯が主流ではなくなった経緯や理由
丸帯は、発祥した江戸時代中期から大正時代まで、正装に合わせる帯として広く一般的に知れ渡っていました。しかし戦後の昭和からは徐々に廃れてきています。
丸帯が使われなくなった主な理由としては、袋帯の台頭が挙げられます。
昭和初期になると、丸帯よりも軽くて扱いやすい袋帯が誕生し、正装用の帯として多くの方に使われるようになりました。
それに伴って、重くて扱いづらい丸帯を使う人が減っていったというわけです。
まとめ
本記事では、丸帯の特徴や他の帯との違いを徹底解説してきました。丸帯について理解できるようになったでしょうか?
丸帯を結ぶ機会はとても少ないですが、だからこそ使うシーンや合わせられる着物を知っておくことが大切です。この記事を通して、丸帯やその他の帯に対する知識が深まっていれば幸いです。