着物を着ていると、思いがけず汚れてしまうことがありますよね。洋服とは違い着慣れていないので、染みができると焦ってしまう方が多いです。
不安な方は専門業者に任せるのが一番ですが、簡単な染みであれば家庭で落とすこともできます。
本記事では着物の染みの種類を6つ紹介した後に、それぞれの染みの落とし方を説明します。染みの原因を明らかにし、適切な処置をして着物を綺麗な状態に戻しましょう。
記事の後半では専門業者への依頼費用や染みの予防法も紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
着物の染みの種類
着物の染みは、主に以下の6種類に分類できます。
- 【油性】口紅・ボールペンなど
- 【水性】紅茶・コーヒーなど
- 【油性×水性】マヨネーズ・ドレッシングなど
- 【不溶性】泥・墨汁など
- 【タンパク質】汗・皮脂など
- 原因不明
1種類ずつ詳しく説明します。
【油性】口紅・ボールペンなど
口紅・ボールペンなどの染みは油性に分類されます。
油性の染みは水で簡単に落とすことができません。油を溶かす「ベンジン」というアイテムを使うことになります。
よくある油性の染みを一覧で紹介します。
- ボールペン
- マジック
- 口紅
- ファンデーション
- マニキュア
- マスカラ
- ラーメンのスープ
- 食用油
- バター
- チョコレート
着物に付いた染みが上記に含まれる場合は、「【油性】口紅・ボールペンなどの染み抜き方法」で落とし方をチェックしてみてください。
【水性】紅茶・コーヒーなど
紅茶・コーヒーなどの染みは水性です。
水性の染みは、油性の染みと比べると簡単に落としやすいです。
主な水性の染みを一覧で紹介します。
- 紅茶
- コーヒー
- 緑茶
- ジュース
- お酒
- 果汁
- 醤油
- ソース
- ポン酢
- ケチャップ
- 味噌汁
上記の染みの落とし方は、「【水性】紅茶・コーヒーなどの染み抜き方法」でチェックできます。
【油性×水性】マヨネーズ・ドレッシングなど
マヨネーズ・ドレッシングなどの染みは、油性と水性の特徴が組み合わさっています。
着物のトラブルに多い油性×水性の染みを一覧で紹介します。
- マヨネーズ
- ドレッシング
- アイスクリーム
- ミートソース
- カレー
これらの染みが付いてしまった方は、「【油性×水性】マヨネーズ・ドレッシングなどの染み抜き方法」で落とし方を確認してみてください。
【不溶性】泥・墨汁など
泥・墨汁などの染みは不溶性と呼ばれます。
不溶性の染みは水にも油にも溶けません。ブラシを使って落とすことになります。
着物に付きやすい不溶性の染みを一覧で紹介します。
- 泥
- 墨汁
- 砂
- ホコリ
- 粘土
上記の染みの落とし方は、「【不溶性】泥・墨汁などの染み抜き方法」で説明しています。
【タンパク質】汗・皮脂など
汗・皮脂などは、タンパク質の染みとなります。
タンパク質の染みは熱を加えると固まってしまうので、お湯をかけてはなりません。
着物のトラブルで多いタンパク質の染みを一覧で紹介します。
- 汗
- 皮脂
- 血
- 卵
- 牛乳
これらの染みが着物に付いた場合は、「【タンパク質】汗・皮脂などの染み抜き方法」で説明している落とし方を実践しましょう。
原因不明
原因不明の染みは、光にかざすことである程度見分けることが可能です。
染みがくっきりと滲んでいるものは水溶性、染みの線が縦と横に広がっているものは油性、そして染みの輪郭がぼやっとしているものは不溶性だと判断できます。
見た目だけで染みの原因が分からない場合は、染みに水を吹きかけてみてください。
水を吹きかけた結果、染みが滲んだり濃くなったりしたら水性、染みが水をはじいたり滲まなかったりしたら油性と判断できます。
上記の方法で判断が難しい場合は、「原因不明の染み抜き方法」を確認してみてください。
着物の染み抜きを自分で行う方法~種類別~
着物の染み抜きを自分で行う方法を、汚れの種類別に紹介していきます。
- 【油性】口紅・ボールペンなど
- 【水性】紅茶・コーヒーなどの染み抜き方法
- 【油性×水性】マヨネーズ・ドレッシングなどの染み抜き方法
- 【不溶性】泥・墨汁などの染み抜き方法
- 【タンパク質】汗・皮脂などの染み抜き方法
- 原因不明の染み抜き方法
順番に詳しく説明します。
【油性】口紅・ボールペンなど
油性の染みの落とし方は以下の通りです。
- 薄手のタオル2枚
- ゴム手袋
- ベンジン
- 綿棒(数十本)
- 染みがついた面を上に向ける
- 染みがある部分の裏面にタオル①を敷く
- ゴム手袋をつける
- 綿棒にベンジンをつける
- ベンジンをつけた綿棒で染みを軽くたたく
- 綿棒に染みが移ったら、新しい綿棒に取り替える
- 4~6を繰り返す
- 染みが落ちたら、染みのあった場所を中性洗剤で手洗いする
※手洗い不可の素材の場合は、水で軽く濡らす - 乾いたタオル②で水分を吸い取る
- 着物を陰干しし、完全に乾かす
ベンジンは直接手で触ると危険なので、ゴム手袋をつけて取り扱ってください。
また、染みをこすって落とそうとすると着物が色落ちしてしまうリスクがあるので、たたいて落とすように注意してください。
【水性】紅茶・コーヒーなど
水性の染みは以下の方法で落とせます。
- 薄手のタオル4枚
- 中性洗剤
- 染みがついた面を上に向ける
- 染みがある部分の裏面にタオル①を敷く
- タオル②をぬるま湯で濡らし、軽く絞る
- 軽く絞ったタオル②で、染みをトントンと軽くたたく
- 染みが落ちれば完了
- 染みが落ちなかった場合、タオル②に15倍程度に薄めた中性洗剤をつける
- 中性洗剤をつけたタオル②で、染みをトントンと軽くたたく
- 染みが落ちたら、タオル③をぬるま湯で濡らし、しっかりと絞る
- しっかりと絞ったタオル③で染みがあった場所をたたき、中性洗剤の成分を抜く
- 乾いたタオル④で水分を吸い取る
- 着物を陰干しし、完全に乾かす
染みを落とす際は、こすらないように注意してください。こすると汚れが広がってしまいます。
【油性×水性】マヨネーズ・ドレッシングなど
油性×水性の染みは、油性の成分を処理した後に水性の成分を処理します。
具体的には、以下の手順で染みを落とします。
- 薄手のタオル4枚
- ゴム手袋
- ベンジン
- 綿棒(数十本)
- 染みがついた面を上に向ける
- 染みがある部分の裏面にタオル①を敷く
- ゴム手袋をつける
- 綿棒にベンジンをつける
- 綿棒で染みを軽くたたく
- 綿棒に染みが移ったら、新しい綿棒に取り替える
- 4~6を繰り返す
- タオル②に15倍程度に薄めた中性洗剤をつける
- 中性洗剤をつけたタオル②で、染みをトントンと軽くたたく
- 染みが落ちたら、タオル③をぬるま湯で濡らし、しっかりと絞る
- しっかりと絞ったタオル③で染みがあった場所をたたき、中性洗剤の成分を抜く
- 乾いたタオル④で水分を吸い取る
- 着物を陰干しし、完全に乾かす
油性と水性が混ざっているため工程も増えますが、丁寧に処理しましょう。
【不溶性】泥・墨汁など
不溶性の染みは、以下の手順で落としましょう。
- 毛先の柔らかい歯ブラシ
- 薄手のタオル
- 泥などの染みが完全に乾くまで待つ
- ブラシで染みを軽くなで落とす
- 染みが落ちたら、染みのあった場所を中性洗剤で手洗いする
※手洗い不可の素材の場合は、水で軽く濡らす - 乾いたタオルで水分を吸い取る
- 着物を陰干しし、完全に乾かす
【タンパク質】汗・皮脂など
着物についたタンパク質の染みは、以下の方法で落とします。
- タオル2~4枚
- 霧吹き
- 中性洗剤が必要な場合もある
- 染みがついた面を上に向ける
- 染みがある部分の裏面にタオル①を敷く
- 染みに水を吹きかけ、乾いたタオル②で水分を吸い取る
- 染みが落ちれば完了
- 染みが落ちなかった場合、タオル②に15倍程度に薄めた中性洗剤をつける
- 中性洗剤をつけたタオル②で、染みをトントンと軽くたたく
- 染みが落ちたら、タオル③を水で濡らし、しっかりと絞る
- しっかりと絞ったタオル③で染みがあった場所をたたき、中性洗剤の成分を抜く
- 乾いたタオル④で水分を吸い取る
- 着物を陰干しし、完全に乾かす
タンパク質の染みはお湯を加えると固まってしまいます。必ず水を使ってください。
原因不明
染みの原因が分からない場合、染み抜きは自分で行わない方が良いです。
染み抜きの方法を誤ると、染みを落とせないだけでなく、着物が傷んでしまう可能性もあるからです。
クリーニング店や着物の染み抜き専門店に依頼し、確実に染みを取ってもらいましょう。
以下で着物染み抜きの依頼相場をお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
着物の染み抜きの依頼相場
着物の染み抜きは、クリーニング店や着物の染み抜き専門店に依頼できます。
費用相場は1カ所およそ3,000円~20,000円です。着物の格や素材・シミの大きさによって異なります。
また、年数が浅いものや変色のないものは比較的安く済むので、染みを見つけたらすぐに依頼するのがポイントです。
実績や評判をチェックしながら、納得のいくお店に依頼しましょう。
着物の染みを予防する方法
着物の染みを予防するためには、パールトーン加工を施すのも一手です。
パールトーン加工とは、汚れから着物を守るための防汚・防水加工のことです。
クリーニング店や着物の染み抜き専門店に依頼できます。
パールトーン加工の費用相場は10,000~20,000円前後で、効果は5年程度続きます。
染み抜きを依頼するタイミングと同時に、パールトーン加工の依頼も検討してみてください。
まとめ
本記事では着物の染み抜きの方法を紹介しました。
着物は繊細な衣服なので、染み抜きをする際は丁寧に取り扱いましょう。着物の染みは放置するとどんどん落としづらくなるため、見つけ次第すぐに対処することが重要です。
また、記事内で紹介した処置をして染みが落ちない場合は、無理せず専門業者に相談するのが一番です。費用はかかりますが、着物を守るためにも正しい選択をしましょう。
また、染みを抜いた着物を着こなしたい方は教室で着付けの方法を教わることが可能です。気になる方は、以下のページを参考にしてみてください。