着物には、上下に分かれた「二部式着物」というものがあります。
今回の記事では、二部式着物の概要やメリット・デメリットを解説します。具体的な着る手順やコーディネート例も紹介するので、ぜひ最後までお読みください。
二部式着物とは
二部式着物とは、通常の着物とは違い、上下が分かれている着物のことを指します。セパレート着物とも呼ばれます。
洋服に近い感覚で簡単に着られるため、気軽に着物を楽しむためのアイテムとして使われることが多いです。また、日本料理店や旅館の制服として活用されることも少なくありません。
また近年では、上下に分かれていることが認識しづらい仕様の二部式着物も増えており、着用できるシーンも幅広くなってきています。
二部式着物のメリット
二部式着物のメリットは、主に以下の3点が挙げられます。
- 着付けが簡単
- 着崩れしづらい
- 保管しやすい
それぞれ詳しく説明します。二部式着物のメリットを確認し、着るかどうかの判断材料としてみてください。
着付けが簡単
二部式着物は、一般的な着物と比べて着付けが非常に簡単です。洋服を着るような感覚で着用できます。
初めて着る方でも、二部式着物であれば10分程度で着付けが完了するでしょう。
「着物を着てみたいけど、着付けが難しそう…」と感じ、着物の挑戦を躊躇している方にとって、二部式着物はベストな選択です。気軽に着られるため、挑戦のハードルがぐんと下がります。
着崩れしづらい
二部式着物は、着付けが簡単な上に着崩れもしづらいのがメリットです。
通常の着物は、例えば裾が広がると、襟元も緩んでしまったりおはしょりが乱れてしまったりします。また、一箇所が着崩れると全体を直さなければいけません。よって、着物初心者の方は着物で外出することに不安を感じやすい傾向があります。
しかし、二部式着物は上下で分かれているので、上記のような着崩れは起きません。また、万が一着崩れた場合も簡単に直せます。
着物初心者が感じやすい、「外出先で着崩れしたらどうしよう…」という不安を払拭できることは二部式着物の大きな魅力と言えるでしょう。
保管しやすい
二部式着物は上下で分かれているため、保管が簡単です。一般的な着物は畳み方が難しく、保管方法に悩んでしまう方も少なくありません。
一方で、二部式着物は上下に分かれているため簡単に畳んで収納できます。
また、二部式着物は洗える素材のものが多く、自宅で簡単に洗濯できる点もメリットです。専門店でクリーニングが必要な着物が多い中、洗濯機で丸洗いできるのは非常に手間が省けます。
二部式着物のデメリット
二部式着物には上記のメリットがある一方、下記のデメリットがあることも覚えておきましょう。
- 格式高い場には向かない
- デザインの種類が多くない
順番に解説していきます。デメリットを把握することは大切なので、しっかりと読み進めてください。
格式高い場には向かない
二部式着物はカジュアルな着物なので、格式高い場には向きません。結婚式や式典・卒入学式といったフォーマルな場での着用は避けてください。
ちょっとしたお出かけや食事など、普段着の装いとして楽しみましょう。
デザインの種類が多くない
二部式着物は一般的な着物と比べると流通量が少なく、デザインの種類も多くありません。
必ずしも好みのデザインが見つかるとは限らないことに注意してください。
ただし、二部式着物はデザインのバリエーションが少ないとはいえ、組み合わせ次第でコーディネートを楽しむことはもちろん可能です。例えば、スニーカーやパーカーと組み合わせた和洋折衷のコーディネートなども実現できます。
二部式着物の着方
二部式着物は、下記のアイテムを使って着ます。
- 足袋
- 肌襦袢
- タオル
- 長襦袢
- 伊達締め
- 二部式着物の上衣
- 二部式着物の下衣
- 帯や帯周りの小物(帯板・帯枕・帯締め・帯揚げなど)
まずは上記のアイテムを揃えてください。
続いて、二部式着物の着用手順は以下の通りです。まずは着物着用前の準備を行いましょう。
- 足袋を穿きます。
- 肌襦袢を着ます。
- 必要があれば、タオルで体型補正をします。
- 長襦袢を着ます。
- 衣紋を抜き、伊達締めを締めます。
肌襦袢・長襦袢の着方について詳しくは下記の記事を参考にしてください。
次に、二部式着物の下衣を着ます。以下の通り進めましょう。
- 二部式着物の下衣を背中に沿わせます。
- 下衣の位置を決めます。下衣の紐が骨盤より少し上に来る程度、裾が地面にギリギリつかない程度が目安です。
- 左裾が上に位置するよう、右裾を先に体の前に沿わせ、次に左裾を体の前に沿わせます。
- 下衣の左右の紐をそれぞれ後ろに持って行き、体に一周巻き付けます。
- 下衣の紐を体の前で結びます。
- 結んだ紐は下衣の中に収めます。
下衣の次は上衣を着ます。下記の手順を参考にしてください。
- 上衣を羽織ります。
- 左襟が上になるよう、襟を合わせます。
- 襟合わせが体の中心になるよう調整します。
- 背中のシワを広げます。
- 伊達締めを締めます。
上衣を着終わったら、いよいよ帯を締めます。
ワンタッチ帯を使えば簡単に帯結びが終わるのでおすすめです。もちろん、通常通り帯を結んでも問題ありません。
帯結びの具体的な手順については、以下の記事で解説しているので参考にしてみてください。
二部式着物はいつ着る?TPOを紹介
二部式着物は、普段着として着用します。友人との食事やちょっとしたお出かけなど、カジュアルシーンでの着用が適しています。
反対に、格式高い場面で二部式着物を着てはいけません。友人の結婚式や卒業式・成人式などに二部式着物を着ていくことは避けましょう。
また、二部式着物は料亭や日本料理店の制服として着られることも増えてきました。その場合、帯無しでより簡易的に着用できる二部式着物が用いられるケースが多いです。
二部式着物のコーディネート
二部式着物を着てみたい方に向けて、参考になるコーディネート例を4つ紹介します。
ブルーが爽やかな二部式着物コーディネート
爽やかな青色が特徴的な二部式着物のコーディネートです。白とピンクで統一された帯・帯揚げ・草履が良いアクセントとなっています。
最近では、本コーディネートのように、パッと見ただけでは二部式着物だと分からないものが増えてきています。ぜひ気軽に挑戦してみてください。
豊かな柄が目を惹く二部式着物コーディネート
デザイン性のある、豪華な二部式着物のコーディネートです。深い緑と紺色で織りなされた二部式着物のデザインは一般的な着物にも劣りません。
長襦袢や帯揚げ・バッグにもたくさんの柄が入っており、遊び心が感じられます。
帯を締めないラフスタイルの二部式着物コーディネート
こちらのコーディネートのように、帯を締めない二部式着物のスタイルもおすすめです。ワンピースのようにゆるっと着こなすことができます。
ただし、着こなし次第では家着のように見えてしまう場合があるので、少々難易度は高めのコーディネートと言えます。
和洋折衷の二部式着物コーディネート
ベレー帽・タートルネック・ブーツ・ブローチなど、洋装の小物を取り入れた和洋折衷のコーディネートです。
羽織を着て上衣と下衣の境目を分かりづらくすることで、二部式着物のように見えない工夫もされています。
二部式着物は、和洋折衷のコーディネートに向いている着物です。さまざまなアイテムと組み合わせて、あなただけの着こなしを楽しんでみてください。
二部式着物のよくある質問
二部式着物のよくある質問を以下にまとめました。
- 二部式着物はどこで買える?
- 通常の着物を二部式に加工することはできる?
以下で、質問に回答していきます。
二部式着物はどこで買える?
二部式着物は、主に以下の場所で購入できます。
- ネットショップ
- フリマアプリ
- 呉服店
それぞれ詳しく紹介します。
ネットショップ
二部式着物を購入できる場所として、まずAmazon・楽天などのネットショップが挙げられます。
Amazon・楽天など「二部式着物」と検索すると、多くのショップや商品がヒットします。試着ができないのでサイズや質感を試せないというデメリットはありますが、最も多くの種類を見つけることができるでしょう。
フリマアプリ
メルカリなどのフリマアプリで二部式着物は購入できます。
中古品が主なので、安価で購入できる点が魅力です。しかし、個人間の取引であるゆえに、出品者とのトラブルが起こる可能性も高いので、利用する際は十分な対策が必要です。
呉服店
二部式着物を初めて購入する方におすすめの場所が、呉服店です。着物に詳しい店員さんと一緒に、希望に添った商品を選ぶことができます。サイズや質感も試せるので「思っていた感じと違った…」という後悔も生まれません。
ただし、二部式着物を取り扱っていない呉服店も多いので注意が必要です。また、ネットショップやフリマアプリと比べると価格帯が上がる点も覚えておきましょう。
通常の着物を二部式に加工することはできる?
通常の着物を二部式に加工することはできます。加工の専門店があるので、希望の着物を依頼に出してみてください。一着あたり1~3万円程度で依頼可能です。
ただし、一度二部式着物に加工したものは、二度と元に戻すことができません。加工するかどうかは、じっくりと検討することをおすすめします。
また、依頼時にはサイズなどの詳細情報をきちんと伝えるようにしてください。サイズ感を誤ると、丈が合わずに着られない事態になってしまう可能性があります。
まとめ
本記事では、二部式着物の基本的な知識を解説してきました。二部式着物についての理解は深まったでしょうか。
二部式着物は簡単に着られるので、初めて着付けに挑戦する方におすすめです。二部式着物の着付けに慣れ、一般的な着物を着てみたいと思ったときには教室で習うこともできます。
以下のページでおすすめの着付け教室を紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。