着物のコーディネートにアクセントを加えられる「羽織」。
季節に関係なく活用できるアイテムですが、実は種類が豊富で、それぞれの特徴は大きく異なります。
本記事では、そんな羽織の種類を全部で10着紹介します。羽織紐の種類・羽織の着脱方法・羽織の代わりに使える着物用アウターなども紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
この記事を読めば羽織の理解を深めることができ、より一層着物のコーディネートを楽しめるようになるでしょう。
着物の羽織とは
羽織とは、着物の上に羽織るアウターのことです。防寒や防汚・おしゃれさの演出といった役割を持っています。
前が開いているため、羽織紐で留めて着用します。
また、羽織は洋服で言うとカーディガンにあたるので、室内での着用も問題ありません。
長さや柄・季節ごとに種類が異なるのも羽織の特徴です。以下で、羽織の種類を紹介していきます。
着物の羽織の種類【長さ別】
羽織の種類を、長さで分類するとこのようになります。
- 長羽織(ながばおり)
- 中羽織(ちゅうばおり)
- 茶羽織(ちゃばおり)
各種類の特徴を詳しく説明します。
長羽織(ながばおり)
長羽織とは、丈が膝下よりも長い羽織です。全身を包み込むため、スタイルが良く見えるのが特徴です。
近年は長羽織を好んで着る方が増えてきています。
中羽織(ちゅうばおり)
中羽織とは、丈が膝上よりも短い羽織を指します。一般的には、羽織といえば中羽織を指すことが多いです。
脇部分に、前身頃(まえみごろ)と後見頃(うしろみごろ)を縫い付けるマチがあるのが特徴です。
茶羽織(ちゃばおり)
茶羽織とは、マチのない羽織です。丈は腰部くらいまでの長さです。
旅館などで浴衣の上に着る羽織というと想像が付きやすいかもしれません。
主に家庭内で防寒のために使われる羽織で、基本的に外出の際には着ません。そのため、色や柄はシンプルで落ち着いたものが多いです。
また、茶羽織は羽織紐を用いず、備え付けの紐を結んで着用します。これは他の羽織にはない特徴です。
着物の羽織の種類【季節別】
羽織は、季節ごとに以下の4種類を着分けるのが一般的です。
- 袷羽織(あわせばおり)
- 単衣羽織(ひとえばおり)
- 綿入れ羽織(わたいればおり)
- 夏羽織(なつばおり)
1種類ずつ紹介していきます。
袷羽織(あわせばおり)
袷羽織とは、裏地が付いた羽織のことです。10月上旬から5月下旬の、比較的寒い季節に着用します。袷の着物に合わせることが多いです。
生地が二枚縫い合わさっているので、冬でも暖かく過ごせます。反対に、夏の着用には向いていません。
単衣羽織(ひとえばおり)
単衣羽織とは、裏地が付いていない羽織のことです。6月初旬~6月末・9月初旬~9月末などの暖かい時期に着用します。
基本的には、単衣の着物に合わせます。例外として、ウール生地の単衣羽織は、袷の着物に合わせて、秋・冬・春に着用することが多いです。
また、7月・8月の盛夏の時期は夏羽織を着るのが一般的ですが、気温によっては単衣羽織を着ても問題ありません。
綿入れ羽織(わたいればおり)
綿入れ羽織とは、その名の通り綿が入っている羽織のことです。
防寒に特化した羽織で、普段着用・家庭用として着用します。
夏羽織(なつばおり)
夏羽織とは、夏用の羽織のことです。7月初旬~8月末の、盛夏の時期に着ます。
生地には絽(ろ)や紗(しゃ)・麻(あさ)が用いられます。
- 絽(ろ):規則的に目が空いている生地。透け感があり、通気性も良い。フォーマルな場面に向いている。
- 紗(しゃ):等間隔で目が空いている生地。絽よりも透け感・通気性が優れている。カジュアル~セミフォーマルな場面に向いている。
- 麻(あさ):植物の麻から作られた生地。肌触りがさらっとしている。カジュアルな場面に向いている。
着物の羽織の種類【柄別】
羽織の種類は、柄別で分けることもできます。主流なのは、次の3種類です。
- 絵羽織(えばおり)
- 紋付羽織(もんつきばおり)
- 黒羽織(くろばおり)
それぞれの詳細を見ていきましょう。
絵羽織(えばおり)
絵羽織とは、絵羽模様が入った羽織を指します。絵羽模様とは、縫い目をまたいで施された柄のことです。
観劇や会食のような、格式張らない華やかな場面に向いています。柄によっては、卒業式などのフォーマルな場面にも合わせられます。
紋付羽織(もんつきばおり)
紋付羽織とは、紋が入った羽織のことです。卒業式・結婚式・成人式などのフォーマルな場面に適しています。
紋付羽織を普段着の上に着用すると、略礼装に格を上げることができます。紋付羽織を着るだけで、普段着着物をフォーマルな場面でも活用でき、非常に便利です。
黒羽織(くろばおり)
黒羽織とは、黒色の羽織のことです。黒羽織は紋付のイメージが強いですが、紋が入っていないものもあります。
紋が入っていない黒羽織は、普段着として着ることができ、自由にコーディネートを楽しめます。
羽織紐の種類
羽織は前が開いているため、前で留めるための羽織紐が必要になります。
羽織紐の主な種類は次の3つです。
- 女短(めたん)
- 女中(めちゅう)
- 無双(むそう)
それぞれの特徴を説明します。
女短(めたん)
女短とは、約20cm~25cmの一般的な長さの羽織紐を指します。
一重結びやこま結びで前を留めます。
女中(めちゅう)
女中とは、約35cm~40cmのやや長い羽織紐を指します。
長さがあるので、蝶々結びや藤結びで前を留めることができます。
無双(むそう)
無双とは、とんぼ玉・天然石などが中央や全体に配置されている羽織紐です。
他の羽織紐とは違い、S環フックやカニカンフックで羽織の乳(ち)に取り付けます。
結ばなくて良いので、簡単に取り外しができるのが特徴です。
ただし、フォーマルな場面には適していないので注意してください。
羽織の着方・脱ぎ方
羽織の着方は次の通りです。
- 羽織を着物の上から羽織ります。
- 羽織紐を羽織の乳(ち)に取り付けます。
- 好きな結び方で羽織紐を結びます。
- 肩から後ろ部分の襟を、縫い目に沿って外側に折ります。
- 肩より前部分の襟は、④で後ろ部分の襟を折った際にできた折り目に従って、自然に外側に折ります。
- 完成です。
羽織は、襟を外側に折って着るのがポイントです。
続いて、脱ぎ方を見ていきましょう。羽織は脱ぎながら畳めますので、畳み方までまとめて紹介します。
- 羽織から羽織紐を外します。
- 両手を背中側に回し、袖口同士を重ね合わせます。
- 右手で重ねた袖口をつまみ、後ろに引きながら脱ぎます。
- 羽織を体の前に持ってきて、袖口を左手に持ち替えます。
- 右手で左右両方の肩山を重ねて持ちます。
- 肩山を中心に袖を倒し、振りと本体を左手で重ねて持ちます。
- 左手を中心に、羽織を半分に畳みます。
- もう一度半分に畳みます。
- 完成です。
※右手と左手は逆でもOKです。
慣れれば簡単に畳めるようになるので、何度か練習してみてください。
羽織の代わりに使えるもの
着物のアウターとして、羽織の代わりに使えるものは以下の5つが挙げられます。
- 道行(みちゆき)
- 道中着(どうちゅうぎ)
- 和装コート
- ショール
- ポンチョ・マント
1つずつ詳しく見ていきましょう。
道行(みちゆき)
道行とは、襟が四角形に開いている着物のアウターです。洋服で言うとコートにあたります。
前をボタンで留めて着用するのが特徴です。
羽織と同じく、防寒や防汚・おしゃれさの演出といった役割を果たします。
一方で、羽織とは異なり道行は室内で脱ぐのがマナーです。
羽織よりもややフォーマルで、礼装に合わせて着ることが多いです。柄によっては普段着にも合わせられます。
道中着(どうちゅうぎ)
道中着とは、着物と同様の襟合わせをするアウターです。洋服で言うとコートにあたります。
襟が裾まで続くのが特徴です。前は備え付けの紐を結んで留めます。
基本的にはカジュアルな着物に合わせるアウターで、礼装の上には着ません。
役割は羽織・道行と同じで、防寒や防汚・おしゃれさの演出などがあります。
また、道中着という名前は「道中お気を付けて」という言葉に由来しており、旅路に着るのが一般的だったため、室内では脱ぐのがマナーです。
和装コート
和装コートとは、その名の通りコートの形をした着物のアウターです。
素材・形状ともに洋服のロングコートとほとんど同じです。前はボタンで留めます。
違いを挙げるとすれば、和装コートは洋服のコートよりも襟まわり・袖まわりがゆったりとしていて、着物の上に羽織りやすくなっています。
ショール
着物のアウターとして、ショールを合わせることもできます。着物の色や柄に合えば、洋服用のショールでも構いません。
冬は厚手のショールを羽織って寒さ対策を、夏は薄手のショールを羽織って日焼け対策・暑さ対策をしましょう。
ショールのマナーは着物と洋服で共通していて、室内では脱ぐのが一般的です。
ポンチョ・マント
着物の上にはポンチョやマントを羽織っても良いでしょう。
ポンチョは丸みを帯びた可愛らしいフォルムなので、女性らしさを演出できます。
マントは上半身をまるごと包み込んで体型を隠すため、全体的にシュッとした印象を与えられます。
キュートな印象を残したければポンチョ、クールな印象を残したければマントと使い分けるのがおすすめです。
ただし、着用シーンはカジュアルな場面に限られます。フォーマルな場面には使えません。
まとめ
本記事では着物の羽織の種類を始めとし、羽織紐の種類・羽織の着脱方法・羽織の代わりに使える着物用アウターを紹介しました。
羽織についての知識はひと通り網羅できたのではないでしょうか。
着物のコーディネートを楽しむためには、季節やTPOにあわせて正しく羽織を選ぶのはもちろん、自分好みの羽織を選ぶことも大切です。
着物のデザインに合う、お気に入りの羽織を見つけてみましょう。
この記事が、着物の羽織について知りたい方の参考になれば幸いです。