着物を着る機会が多くはない現代において、いざ着るとなった際に選び方で悩んでしまう方も多いのではないでしょうか?
特に「縁起が悪い柄を選んでしまったらどうしよう…。」といった内容はよく聞くお悩みです。
そこで本記事では、縁起の悪い着物の柄について、場面と季節に分けて解説します。
記事後半では縁起の良い柄についても紹介するので、ぜひ最後までチェックしてください。
縁起の悪い着物の柄ってあるの?
「着物の柄に縁起の悪いものはあるか?」という質問に対しては、「場面や季節によってはある」といった回答が適切であると言えます。
すべてのシーンにおいて縁起の悪い柄、といったものは存在しません。そもそも縁起の悪い柄は、わざわざ着物のデザインに起こさないですからね。
例えば洋服でも、ドクロ柄はファッションを楽しむ普段着としてであれば縁起が悪いと言われることはありませんが、結婚式や式典などのおめでたい場で正装として用いると縁起が悪いと言われます。
着物も同様で、シーンや季節によって、柄が適切かどうか判断されます。以下で詳しく解説していくので、読み進めていきましょう。
【シーン別】縁起の悪い着物の柄
着物の柄はシーンによって、縁起が悪いと捉えられてしまう可能性があります。着物を着る主なシーンごとに、どういった柄が不適切であるか確認していきましょう。
- 結婚式
- 卒業式・入学式
- お茶会
- 観劇・お食事会
- 成人式
それぞれ詳しく説明します。
結婚式
結婚式に着物で参列する際は、以下の柄を避けるようにしましょう。縁起の悪い柄として知られています。
- 蝶
- 桜
- 梅
- 椿
- 藤
なぜ縁起が悪いと言われているのか、以下で詳しく解説します。
蝶
蝶は真っ直ぐ飛ばず、ひらひらと飛んで花を移るため、「移り気」や「浮気」を表す縁起の悪い柄として見られることが多くなっています。もちろん縁起の良い意味も持ち合わせていますが、多くの方から縁起の悪い柄だと見なされているのです。
特にご高齢の参列者の方が多いと考えられる結婚式では、蝶柄は避けるのが賢明でしょう。着物に慣れ親しんでいるためマナーに厳しい場合があります。
桜
桜はすぐに散ってしまう花であることから、永遠の愛を誓う結婚式では縁起の悪い柄と捉えられることが多いです。特に桜吹雪のような、桜が散っている様子を写実的に表している柄は結婚式に不向きです。
イラスト調の桜が、控えめに描かれている場合は問題ないとされるケースもあります。
梅
「梅はこぼれる」という言葉にあるように、梅は花びらをこぼすように散っていくため結婚式には縁起が悪いとされることが多いです。
梅単体ではなく、松竹梅でまとまった柄であれば「生命力」や「忍耐力」といった意味となり、縁起の良い柄として見られるので問題ありません。
椿
椿は、散る際に首から丸ごとポトリと落ちる花であることから、死を連想させる縁起が悪い柄として知られています。結婚式という晴れやかな場には明らかに不向きであると言えるでしょう。
写実的なものや、椿が落ちる様子を表したデザインは特に縁起が悪いので、結婚式には着ていかないことをおすすめします。
藤
藤の花は垂れ下がるように咲く花なので、未来が下り調子であるといった縁起の悪い印象を与えることがあります。新郎新婦の今後をお祝いする席には不適切な柄だと言えます。
藤自体には長寿や繁栄と言ったポジティブな意味合いもあるため、着るシーンを選べば問題ないでしょう。
卒業式・入学式
卒業式や入学式で、着物の柄の縁起について指摘を受けることはほぼ無いでしょう。
ただし、避けるべき柄はあります。それは「派手な柄」です。
卒業式や入学式の主役はあくまで子どもなので、親が目立ちすぎるような色・柄の着物は避けるべきです。
また、卒業式・入学式が行われる季節に合わせた柄を選ぶと縁起が良いともされています。季節にあわせた柄の選び方については記事後半で解説するので、気になる方はぜひ最後まで読み進めてください。
お茶会
お茶会で着る着物の柄は何を選んでもOKです。初釜・炉開き・利休忌のような、開催される日程が定まっているお茶会においては、季節に合わない柄を避ける方が無難です。
また、お茶会には柄に関する縁起を気にしすぎる必要はないものの、その他のルールやマナーがいくつかあります。
下記の記事で詳しく解説しているので、お茶会に参加予定の方はチェックしてみてください。
観劇・お食事会
観劇やお食事会と言ったカジュアルな場面において、縁起に関するルールはありません。
洋服でカジュアルなお出かけをする際にも、縁起を気にすることはありませんよね。同様に、着物でも色・柄などのデザインは好きなものを選んで問題ありません。
ただし、観劇において縁起に関する規定はないものの、着物の着方におけるマナーは存在します。
観劇で気をつけるべき着物のマナーについては以下の記事で解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
成人式
成人式では、結婚式で挙げた柄と同じもの(蝶・桜・梅・椿・藤)が縁起の悪いものとして知られています。ただし、成人式においてはあまり縁起を気にしすぎる必要はありません。
成人式は人生に一度しか訪れない大切な日です。自分自身が気に入った柄・デザインの振袖を着て、後悔のないように過ごすことが一番重要です。
縁起が良い・悪いは一旦考えず、気に入る柄の振袖を探してみてください。
【季節別】縁起の悪い着物の柄
シーンだけでなく、季節によっても着物の柄は縁起が悪くなり得ます。春夏秋冬それぞれの季節で、どんな柄は縁起が悪いと言われているか、下記で詳しく解説を進めます。
春
まずは、春の季節に適している柄の一例を以下に記します。
- 桜
- 牡丹
- 薔薇
- 藤
- 菖蒲(あやめ)
ただし、桜柄については注意が必要です。桜柄は、桜の開花状況を先取りする必要があるのです。桜がつぼみの場合は満開の柄を、満開の場合は散っている様子の柄を選ぶのがマナーとされています。
開花状況と同じ柄を選ぶと、自然と競合していると見なされ、縁起が悪いので気をつけましょう。
夏
夏に適している柄を見ていきましょう。
- 朝顔
- あじさい
- とんぼ
- 流水
- 雪輪
流水や雪輪については、暑い夏に涼感を取り入れる柄としておすすめです。
ただし、一緒に描かれている植物によっては季節にそぐわない場合もあります。夏らしいモチーフと一緒に描かれているか、もしくは単体でデザインされている柄を選ぶと無難でしょう。
秋
秋に適している柄は、主に以下が挙げられます。
- 紅葉
- 桔梗
- 葡萄
- 萩
- 菊
秋の植物と一緒に春の植物が描かれている「春秋柄」の着物もあります。例えば、紅葉と桜が一緒に描かれているもの柄が春秋柄にあたります。
春秋柄の着物は通年着ることができ、一緒に描かれているからといって縁起が悪いといったことはありません。安心して着てください。
冬
冬には以下のような柄の着物がおすすめです。
- 雪
- 松
- 椿
- 梅
- 水仙
雪柄は、まだ冬が浅い11月~12月末までの時期に適しています。松・椿は1月初旬~末までがおすすめで、梅・水仙は2月頭~末までにぴったりの柄です。いずれも共通して、季節を先取りすることがポイントです。
なお、冬の着物の柄には春や秋の花が混ざっているケースも少なくありません。そういった場合は、それぞれの季節に寄るよう柄を選んでみてください。
縁起の良い着物の柄は?
縁起の良い着物の柄を25種類ピックアップし、以下の一覧表にまとめました。
柄の名前 | 意味 |
---|---|
松竹梅(しょうちくばい) | 生命力、忍耐力 |
鶴(つる) | 長寿、夫婦円満 |
亀甲文(きっこうもん) | 長寿、健康 |
桜文(さくらもん) | 豊かさ、物事の始まり |
牡丹(ぼたん) | 風格、富貴 |
菊(きく) | 無病息災、長寿 |
扇(おうぎ) | 繁栄、発展、開運 |
鳳凰(ほうおう) | 平和、幸せ |
七宝文(しっぽうもん) | 円満、ご縁 |
御所車(ごしょぐるま) | 高貴さ、華やかさ |
兎(うさぎ) | 飛躍、平和 |
青海波(せいがいは) | 穏やかな暮らし |
藤(ふじ) | 豊作、子孫繁栄 |
紗綾形(さやがた) | 長寿、家の繁栄 |
丸文(まるもん) | 力強さ、永遠の幸せ |
観世水(かんぜみず) | 未来永劫(みらいえいごう) |
花丸文(はなまるもん) | 永遠の幸せ |
蝶(ちょう) | 成長祈願、夫婦円満 |
矢絣(やがすり) | 「出戻らない」という願い |
麻の葉(あさのは) | 厄除け、子どもの成長祈願 |
市松文(いちまつもん) | 発展、繁栄 |
立涌文(たてわくもん) | 上昇、運気アップ |
物語文(ものがたりもん) | 知性、教養 |
鴛鴦(おしどり) | 夫婦円満 |
雪輪(ゆきわ) | 豊作 |
それぞれどういった場面におすすめの柄なのか、またおすすめの季節はいつなのか、といった詳細については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
着物の柄選びで迷っている方はぜひあわせてお読みください。記事を読むことで、シーンや季節に適した柄を選べるようになります。
まとめ
本記事では、縁起の悪い着物の柄について解説してきました。
着物はめったに着ることがないからこそ、縁起について気にしすぎてしまう人も多いかもしれません。しかし現代では、柄によって縁起が悪いと決めつけてしまう風潮は薄れつつあります。
着物に精通している高齢者の世代が多い場に行く際は縁起の良い・悪いを気にした方が安心ですが、そうでなければ好きな色・柄を選んで問題ありません。気負うことなく、楽しんで着物を着ましょう。
また、着物の柄の選び方についてより詳しく知りたい方や自身で着物を着てみたい方は、教室に通ってプロから習うのも一つの手段です。以下の記事で、初心者におすすめの着付け教室を紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。