着物に興味を持つ方の多くは、「着物を普段着で着るのはおかしいのかな?」と感じるようです。
結論から言うと、着物を普段着で着るのはおかしくありません。
むしろ、メリットが多いためおすすめです。
本記事では、着物を普段着にするメリット・デメリットと、普段着におすすめの着物やその素材・小物をご紹介します。
記事の最後には注意点もお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。
着物を普段着にするメリット
着物を普段着にするメリットは主に次の4点です。
- 服装がかぶらない
- 体型を気にしなくて良い
- 姿勢が良くなる
- 体が冷えづらい
1点ずつ確認していきましょう。
服装がかぶらない
現代の日本で、着物を普段着として着る方はとても少ないです。
そのため、着物を着るだけで他者との差別化を図れます。
着物は、人と違うファッションがしたい方に最適な服装です。1着だけでも持っておくと良いでしょう。
体型を気にしなくて良い
着物は体型を隠せる服装です。
痩身やふくよかな体型で悩んでいる方にとって、体型を気にせず着用できるのは嬉しいポイントとなるでしょう。ヒップラインやバストラインも隠せます。
また、ある程度体重が増減しても同じ着物を使える点もメリットです。
姿勢が良くなる
着物を着ると自然と姿勢が良くなります。
猫背やガニ股などの癖を直せるため、腰痛や首こりの改善に期待できるでしょう。
他にも、姿勢が良くなると体が疲れづらくなったり、代謝が良くなったりします。
着物は健康に良い服装だと言えますね。
体が冷えづらい
帯が胴回りを包んでいるため、着物を着ていると体が冷えづらいです。冷え性などに悩んでいる方からすると安心できますよね。
また、体を温めると血流が良くなったり新陳代謝が活発になったりとメリットが多いです。
このように、着物は健康への効果が高いです。
ここまで読んで、着物を普段着にしてみたいと感じた方はぜひ着付けを習ってみてください。一人で着物を着られるようになれば、いつでも普段着として着物を楽しめるようになります。
以下の記事で初心者におすすめの着付け教室を紹介しているので、参考にしてみてください。
着物を普段着にするデメリット
上記では着物を普段着にするメリットをお伝えしましたが、ここからはデメリットを4つお伝えします。
- 動きが遅くなる
- お出かけの準備に時間がかかる
- 脱ぎ着が難しい
- 視線を集める
それぞれ詳しく説明します。
動きが遅くなる
着物は足元に制限があるため、歩く・階段を上るなどの動きが遅くなります。
そのため、激しく動く予定がある日や、急ぎの予定がある日には向いていません。
お出かけの準備に時間がかかる
着物は、洋服に比べて着るのに時間がかかります。
洋服だと2~3分で済むところが、着物だと20分前後かかります。
慣れた方だと5分以内で着られますが、初心者の方は1時間以上かかることもあるでしょう。
余裕を持った準備が必要なので、スケジュールが詰まっている日は着るのが難しいかもしれません。
脱ぎ着が難しい
着物は、脱ぎ着をして体温調整するのが難しいです。
寒いときにショールやコートを羽織ることはできますが、暑いときは何かを脱いで薄着になることができません。
あらかじめ気温や気候にあった着物を選んで対策する必要があります。
視線を集める
普段から着物を着る人は少ないので、着物を着ていると良い意味でも悪い意味でも大勢の視線を集めます。
注目されるのが得意でない方にとっては大きなデメリットと感じられるかもしれません。
とはいえ、着物を着ていると丁寧に接してもらえたり、嬉しい言葉をかけてもらったりとメリットも大きいです。
視線を集めることで新しい出会いが生まれる可能性もあるので、一概にデメリットとは言えませんね。
普段着におすすめの着物は?
普段着におすすめの着物は、以下の4種類です。
- 付け下げ(つけさげ)
- 小紋(こもん)
- 紬(つむぎ)
- 御召(おめし)
それぞれの特徴を詳しくご紹介します。
付け下げ(つけさげ)
付け下げとは、左肩にワンポイント柄が入った着物のことです。
柄がシンプルで、帯や小物を変えるだけで与える印象を大きく変えられるのが特徴です。
付け下げは、名古屋帯や洒落袋帯などの格が低い帯を締めれば、カジュアルな場面にぴったりな着物になります。街着として着るには格が高いですが、友人とのお食事会や観劇などに着ていけますよ。
また、付け下げは普段着に活用できるのはもちろん、袋帯を締めればフォーマルな場面にも適応します。具体的には、子供の入学式や卒業式・七五三・お宮参りなどに着用できます。
帯を変えるだけでさまざまなシーンに着ていくことができるので、着物初心者の方は一枚持っておいて損はないでしょう。
小紋(こもん)
小紋とは、生地全体に柄が入っている着物のことです。名古屋帯や半幅帯を締めるのが一般的です。
普段着として着用できるだけでなく、友人との食事会や観劇・同窓会などにも着ていけます。
特徴は、柄の種類が豊富な点です。代表的な柄は次の3つです。
- 江戸小紋:無地に見えるほど細かい柄
- 加賀小紋:一つの模様が大きく、華やかな柄
- 京小紋:自然をテーマとすることが多い柄
それぞれ雰囲気が大きく異なるため、同じ小紋でもさまざまなコーディネートを楽しめます。
紬(つむぎ)
紬とは、紬糸(つむぎいと)を使った先染めの織物の着物のことです。基本的には、名古屋帯や洒落袋帯・半幅帯を合わせます。
色を付けた糸を織って柄を作るため、生地は丈夫で硬く、見た目はシックで素朴な印象です。
普段着やおしゃれ着として着ることが多いです。友人とのお食事会やお稽古ごとなどに着ていけます。
紬は、結城紬(ゆうきつむぎ)や久米島紬(くめじまつむぎ)など国の重要無形文化財に指定されている種類が多いため、職人の高い技術力を肌で感じてみたい方におすすめです。
御召(おめし)
御召とは、御召糸に撚り(より)をかけて織り上げた先染めの着物のことです。御召縮緬(おめしちりめん)とも呼ばれます。生地の表面にシボが出ている点が特徴です。
一般的には、名古屋帯や洒落袋帯を締めて着用します。
経済産業省から伝統的工芸品に指定されるほど上質な着物ですが、着用場面は友人とのお食事会や観劇などのカジュアルなシーンに限られます。
普段着から高級な着物を身につけたい方は、ぜひ御召を選んでみてください。
普段着の着物におすすめの素材
着物を普段着として着る場合、お手入れが簡単で価格がお手頃な素材がおすすめです。
具体的には、以下の4素材をおすすめします。
- 木綿
- 麻
- ウール
- ポリエステル
1種類ずつ特徴を説明します。
木綿
木綿の着物は、植物のワタから取れる繊維を使って作られています。
自宅で簡単に洗濯できる上に価格もお手頃なので、普段着用の着物に最適です。
また、生地がすべらないため着崩れが起きづらく、着物初心者の方でも綺麗に着こなすことができます。
生地が厚いので、夏以外の春・秋・冬の時期におすすめです。
麻
麻の着物は、植物の麻の繊維から作られています。
下ろした直後は肌触りがゴワゴワとしていますが、何度も着ると柔らかくなり肌に馴染みます。自宅で洗濯できるため、お手入れが簡単で普段着向きです。
生地が薄手で肌触りがさらっとしているため、夏の普段着に最適です。
ウール
ウールの着物は、羊毛から作られています。
シワや汚れがつきづらい上に、自宅で手洗いができるので非常に使い勝手が良いです。
ただし、ウールの着物は虫食いが発生しやすいです。タンスで保管する際は必ず防虫剤を使いましょう。
生地が厚手で保温性・吸湿性が高いため、冬の普段着として活躍します。
ポリエステル
ポリエステルの着物は、合成繊維から作られています。
着物の素材としては比較的新しく、およそ30年前から作られ始めたと言われています。
当初は見た目が安っぽく通気性も悪かったですが、技術が発展し、現在は正絹と見分けるのが難しいほど美しい着物となりました。
価格が安く、自宅で洗濯もできるため普段着の着物にはぴったりです。
普段着の着物を何枚も着回したい方は、ポリエステルの着物を買うと良いでしょう。
普段着の着物に合わせる小物は?
着物を普段着として着る際は、合わせる小物も重要になります。
項目別に、それぞれ最適な種類を紹介します。
- 帯
- 帯締め
- 帯揚げ
- 長襦袢
- 履物・バッグ
早速見てきましょう。
帯
普段着の着物に締める帯は、名古屋帯と半幅帯・洒落袋帯がおすすめです。
帯 | サイズ(幅×長さ) | 合う着物 |
---|---|---|
名古屋帯 | 約30cm×約330~360cm | 付け下げ/小紋/紬/御召など |
半幅帯 | 約15cm×約330~360cm | 小紋/紬など |
洒落袋帯 | 約30cm×約400~450cm | 付け下げ/御召など |
袋帯や丸帯を締めることはありません。
上記3つの中から好きな帯を選んで、普段着のコーディネートを楽しんでください。
帯締め
帯締めには平組と丸組・角組の3種類があります。
普段着の着物に合わせる際は、最も格の低い角打ちの帯締めを選びましょう。もしくは、シンプルな丸組の帯締めでも構いません。
- 平組:紐が平らに組まれた帯締め。最も格が高い。
- 丸組:紐が円筒状に組まれた帯締め。飾りの多さで格が変化する。
- 角組:紐が直方体状に組まれた帯締め。最も格が低い。
帯揚げ
普段着に合わせる帯揚げは、縮緬(ちりめん)や綸子(りんず)・部分絞りが最適です。
- 縮緬:光沢があり、薄くなめらかな生地
- 綸子:重量感があり、ハッキリとした色が特徴的な生地
- 部分絞り:一部のみが絞られている生地
長襦袢
普段着の着物の中に着る長襦袢に、色や柄の指定はありません。好きな色・柄の長襦袢を着てOKです。
長襦袢は袖口や襟元からちらっと見えるので、着物との色合いが良いものを選ぶと良いでしょう。
履物・バッグ
普段着の着物に合わせる履物・バッグは、好きな物を選びましょう。
礼装時は「金色・銀色ベース」・「高さ5cm以上の草履」などとマナーが決まっているので、普段着の際は好きな色・柄の履物やバッグを選ぶことをおすすめします。
着物を普段着にする際の注意点
着物を普段着にする際は、以下の3点に注意してください。
- 洗濯・クリーニングが大変
- 保管方法に注意
- 着物警察の存在
順番に解説していきます。
洗濯・クリーニングが大変
着物のお手入れは洋服と比べて大変です。
洗濯機に入れるだけで簡単に洗える素材もありますが、綺麗に畳んで洗濯ネットに入れソフトコースで洗濯し、洗濯後は陰干しをするなど、洋服のお手入れと比べると手間がかかります。
また、クリーニング店や着物専門店に出す必要がある素材も多いです。
そのような素材の着物を普段着で着ると、クリーニング代がかさむため注意が必要です。
購入前にお手入れ方法をチェックしておきましょう。
保管方法に注意
着物は、保管方法を誤るとカビが生えたり虫食いが発生してしまったりします。
風通しの良いところで乾かしてから、1枚ずつ綺麗に畳んで“たとう紙“に包み、タンスに保管しましょう。
防虫剤も入れ忘れないようにしてください。
着物警察の存在
着物警察とは、人の着物に文句を言ったり説教をしたりする人物のことです。
町中でいきなり「その着物は季節に合ってない!」「色合いがおかしい!」などと声をかけてくるのです。中には、無許可で着物に触って来る方も居ます。
着物警察のせいで、着物を着るのが怖くなってしまったという方は少なくありません。
着物を普段着として着たい方は、着物警察の存在を理解した上で無視するように心がけましょう。
洋服を着ていて、いきなり見知らぬ人からコーディネートにいちゃもんをつけられたら不審ですよね。着物警察がしていることは、それと同じだからです。
着物は自分の好きなように着て楽しみましょう。
おわりに
本記事では、着物を普段着にするメリット・デメリットや普段着におすすめの着物、その素材・小物、そして着物を普段着にする注意点を紹介しました。
着物を普段着にすることは何もおかしくありません。自信を持って着物を楽しみましょう。
この記事が、「着物を普段着にするのはおかしいのかな?」と悩んでいる方の参考になれば幸いです。