着物の洗濯は難しいイメージがあるのか、多くの方が洗わずに放置してしまうようです。
しかし、汚れを放置すると黄ばみや黒ずみの原因となり、大切な着物を二度と着られなくなる可能性があります。
難しいと考えられがちな着物の洗濯ですが、実はとても簡単にできるんです。
本記事では、自宅で洗濯できる着物の見分け方や洗濯方法・乾かし方を分かりやすく解説します。
最後まで読んで、正しく着物を洗濯できるようになりましょう。
着物は洗濯した方が良い?
汚れや臭いが気にならない場合は、あえて着物を洗濯する必要はありません。
ただし、汗をかいた日や土埃にさらされた日・染みが付いてしまった場合などは洗濯することをおすすめします。
着物の汚れやすい箇所は以下の通りです。それぞれの箇所を確認し、洗濯すべきかどうか判断してみてください。
袖口(そでぐち)
汗・皮脂汚れが付きやすい箇所です。放置すると黄ばみになってしまいます。
また、黄ばんだ箇所に埃などが付着すると黒ずみへと変化し、汚れが落としづらくなるため注意が必要です。外側だけでなく、内側もしっかりとチェックしましょう。
裾
裾は地面から近いため、泥はねや土埃といった汚れがつきやすくなっています。
掛け衿(かけえり)
掛け衿は首元に触れているため、汗や皮脂汚れ・化粧などが付着しやすい箇所です。
ワイシャツの襟元同様、とても汚れやすくなっています。放置すると黄ばみや黒ずみに変化してしまうため注意してください。
前身頃(まえみごろ)
着物の前面である前身頃には、食べこぼしなどの汚れが付着しやすくなっています。染みになっていないかどうか、全体をチェックしてください。
裏地
裏地には背中の汗・皮脂汚れがつきやすいです。裏側だからと放っておくと、着物の表側にも染みが浮き出てしまいます。
少しでも気になる場合は洗濯しましょう。
着物は自宅で洗濯できる?
着物は、自宅で洗濯できるものとそうでないものがあります。
洗濯の可否が分からない場合は、以下の3点をチェックしてみてください。
- 洗濯表示
- 種類
- 素材
それぞれ詳しく説明します。
洗濯表示
洗濯表示を見れば、洗える着物かどうかが一発で分かります。
洗濯不可
洗濯桶に×マークが付いている場合は洗濯不可です。
自宅では洗濯せず、クリーニング店や着物の染み抜き専門店を利用しましょう。
洗濯可
洗濯桶の中に数字が記載されているマークがあれば、洗濯してOKです。
数字は液温の上限を示しているので、その温度を超えないようにだけ注意してください。
また、洗濯桶の下に横線が引かれている場合があります。
横線は0本から2本まであり、本数が多いほど洗う力を弱めなければなりません。横線が0本の場合はコースを気にせず洗濯して大丈夫です。1本の場合は標準コース、2本の場合はドライコースなどを選ぶことを推奨します。
手洗い可
洗濯桶に手が入っているマークは、手洗いOKを示しています。洗濯機は用いず、優しく手洗いをしましょう。
種類
袷の着物は、洗うと縮んでしまう可能性があります。
表地と裏地で水に入れたときの伸縮率がそれぞれ異なるので、縫い目が寄ってしまう可能性があるからです。同様の理由で、お召し・縮緬などのシボがある生地も自宅で洗うのは避けましょう。
自宅で洗濯できるのは、単衣の着物だけだと考えてください。
素材
素材がポリエステル・木綿・ウール・麻の着物は、ほとんど洗濯可能です。
それ以外の素材は、自宅では洗濯しない方が良いです。クリーニング店や着物の染み抜き専門店に依頼しましょう。
また、洗濯できる素材でも、洗うと色落ちしてしまう可能性があります。洗濯・水洗いをする前に、以下のチェックを行ってください。
- 裾周りなどの目立たない箇所に、軽く水と中性洗剤をつけます
- ティッシュで優しく叩きます
- ティッシュに色が移っていなければOKです
色移りが確認された場合は、洗濯を中断し、クリーニング店の利用に切り替えるのが賢明です。
着物の洗濯で必要な道具
着物の洗濯で必要な道具は、主に以下の5つです。
- 中性洗剤
- 洗濯ネット
- 洗濯桶
- 大きめのタオル
- 着物用ハンガー
1つずつ詳しく紹介します。
中性洗剤
着物の洗濯には中性洗剤を使います。
中性洗剤は素材を傷めづらく、繊細な着物に対しても安心して使用できるからです。また、着物の染料と反応して色落ちしてしまうリスクも防げます。
洗濯ネット
洗濯機で着物を洗う際に、絶対に欠かせないアイテムが洗濯ネットです。生地へ与えるダメージを抑えたり、着物の型崩れを防いだりする役割があります。
洗濯桶
着物を手洗いする場合は、洗濯桶を使うのが一般的です。大きめのバケツや浴槽などを用いても構いません。
着物のすすぎ洗いや浸け置きができるサイズの容器を用意してください。
大きめのタオル
着物を手洗いした後に、水気を飛ばすために使います。着物全体を包み込める程度のサイズがおすすめです。
着物用ハンガー
洗った着物を干す際は、着物用ハンガーを使います。洋服用のハンガーだと型崩れしやすいので、必ず着物用ハンガーを用意してください。
着物の洗濯方法
上記で紹介した道具を用いて、着物を洗いましょう。
手洗いする方法と、洗濯機を使う方法の2つに分けて手順を紹介します。
また、着物の全体的な汚れではなく、特定の染みが気になる場合は、まずは洗濯ではなく染み抜きを行ってください。染み抜きの方法については「着物の染み抜き方法~6種類に分けて紹介します~」の記事で紹介しています。
手洗いする方法
着物を手洗いする手順は以下の通りです。
- 洗濯桶に水を張り、中性洗剤を溶かします
- 着物を畳み、1の洗濯桶に入れます
- 10分間浸け置きします
- 10分後、洗濯桶の中で着物を押し洗いします
- 汚れが落ちたら、洗濯桶の中の水を捨てます
- 着物を押すようにして、中に含まれている水分を抜きます
- 洗濯桶の中にきれいな水を入れ直し、2・3回すすぎ洗いをします
- 洗剤が出なくなったら、すすぎ洗いを終了します
- 着物を抱え上げ、洗濯桶の外に取り出します
- 着物全体をタオルで包み、水気を飛ばします
- 滴らない程度に水が飛んだら、室内で陰干しをします
※着物の乾かし方については、後述します。
着物を手洗いする際は、基本的に押し洗いをしてください。
こすり洗い・もみ洗い・つまみ洗い等は生地にダメージを与えてしまい、型崩れやシワ・縮みの原因となってしまいます。
洗濯機を使う方法
着物を洗濯機で洗う手順は次の通りです。
- 着物をきれいに畳み、洗濯ネットに入れます
- 洗濯機に、着物と中性洗剤を投入します
- ドライモード(手洗いモード)で洗濯機を回します
- 洗濯が完了したら、約30秒間脱水します
- 脱水後は室内で陰干しをします
※着物の乾かし方については、後述します。
着物を洗濯ネットに入れる際は、できるだけきれいに畳むことが重要です。畳まずに洗濯をすると、型崩れやシワの原因になってしまいます。
また、脱水時間は30秒と短めに設定し、完全に乾かし切らないのがポイントです。脱水機能で乾燥させるとシワがつきやすくなります。まだ少し濡れている状態で、シワになっている箇所を伸ばしながら干すのが定石です。
足袋や長襦袢などの小物を洗濯する方法
足袋や長襦袢・肌襦袢・裾よけなどの小物類は、以下のようにして洗います。
- 小物類を洗濯ネットに入れます
- 洗濯機に、着物と中性洗剤を投入します
- ドライモード(手洗いモード)で洗濯機を回します
- 洗濯が完了したら、約30秒間脱水します
- 脱水後は屋外で天日干しをします
着物の下に着る小物類は、洗濯機で洗えるものが多いです。洗濯ネットに入れて洗いましょう。ただし、中には洗濯できないものもあります。必ず事前に洗濯表示をチェックしてください。
洗濯後の乾かし方
タオルや脱水機能である程度水気が取れたら、着物用ハンガーにかけて陰干しをします。この際、気になるシワがあれば伸ばしながら干しましょう。完全に乾いた際に、きれいにシワが取れます。
着物が乾いた後は、汚れやシワの残りが無いかをチェックしてください。
シワが気になる場合は、中温でアイロンをかけましょう。シワが伸びてきれいに仕上がります。
洗濯の工程がすべて完了したら、着物をきれいに畳んで保管します。着物の保管方法については「着物の保管は重要です~着物をきれいに保つ準備・方法・収納~」の記事をご参照ください。
自宅で洗濯できない着物はどうする?
自宅で洗濯できない着物は、クリーニング店や着物の染み抜き専門店に依頼して洗濯してもらいましょう。
依頼費用の相場は一式あたりおよそ5,000円~10,000円です。着物の格や素材・状態によって上下します。
汚れの程度が浅いものは比較的安く済むので、できるだけ早めに依頼するのがポイントです。
実績や評判をチェックしながら、信頼できるお店に依頼しましょう。
まとめ
本記事の内容をまとめると、以下のようになります。
- 着物は、袖口・裾・掛け衿・前身頃・裏地が汚れやすい
- 自宅での洗濯の可否は、洗濯表示・種類・素材を見れば分かる
- 着物の洗濯に必要な道具は、中性洗剤・洗濯ネット・洗濯桶・大きめのタオル・着物用ハンガーの5つ
- 着物を手洗いする際は、「押し洗い」をするのが基本
- 洗濯機を使う場合は、着物をきれいに畳んでネットに入れる
- 脱水時間は30秒と短めに設定し、乾かし切らないことが重要
- 乾かす際は、着物本体は陰干し・小物類は天日干しをする
- 自宅で洗濯できない着物は、クリーニング店や着物の染み抜き専門店に依頼する
本記事の内容を参考に、ぜひ自宅で着物を洗ってみてください。最後まで読んでも不安な方は、クリーニング店に任せるのも良い決断だと思います。
ご自身が安心できる方法で着物をケアしましょう。
皆様が、大切な着物を長く着続けられることを祈っております。