着物にはさまざまな種類があり、それぞれ特徴や着用シーンが異なります。
本記事では、代表的な11種類の着物と、季節別の着物を3種類紹介します。
着物の種類を知りたい方はぜひ参考にしてください。
着物の種類
着物は、以下の11種類が代表的です。
- 打掛(うちかけ)
- 黒紋付(くろもんつき)
- 振袖(ふりそで)
- 黒留袖(くろとめそで)
- 色留袖(いろとめそで)
- 訪問着(ほうもんぎ)
- 付け下げ(つけさげ)
- 色無地(いろむじ)
- 小紋(こもん)
- 紬(つむぎ)
- 浴衣(ゆかた)
それぞれの格や特徴・着用シーンについて紹介していきます。
打掛(うちかけ)
打掛とは、結婚式に花嫁が着る着物のことです。白無垢や色打掛などの種類があります。
白無垢は、結婚式のみで着用できる最高格の着物です。白一色で仕立てられています。
綿帽子(わたぼうし)や角隠し(つのかくし)を合わせるのが特徴です。
色打掛は、結婚式だけでなく披露宴でも着用可能な着物です。鮮やかな色をしており、華やかな模様が入っています。
頭には角隠しを合わせます。綿帽子は合わせられません。
黒紋付(くろもんつき)
黒紋付とは、主に喪服と呼ばれる着物です。不祝儀の際に着ます。
生地は黒一色で、柄はついていません。背中・両後ろ袖・両胸に一つずつ紋が入っています。
帯は、黒一色に染められた「黒喪帯(くろもおび)」を合わせます。
振袖(ふりそで)
振袖は未婚女性の第一礼装で、長い袖丈が特徴です。
袖の長さによって、大振袖・中振袖・小振袖の3種類に分類できます。
- 大振袖:袖丈114cm前後。主に結婚式や披露宴で着用される。
- 中振袖:袖丈100cm前後。主に成人式で着用される。
- 小振袖:袖丈85cm前後。お茶会やパーティで着用される。
振袖には袋帯を合わせるのが基本です。結び方にルールはないので、さまざまな結び方を楽しめます。
黒留袖(くろとめそで)
黒留袖とは、既婚女性が着る最高格の着物のことで、和装の第一礼装とされています。
生地の色は黒色で、五つ紋が入っているのが特徴です。背中・両後ろ袖・両胸に一つずつ紋が入っています。裾には絵羽模様(えばもよう)が施されています。
帯は、錦織(にしきおり)や唐織(からおり)の袋帯か、丸帯を合わせるのが基本です。
なお、黒留袖を着用するのは、結婚式・披露宴に出席する新郎新婦の母親や仲人のみに限られます。
色留袖(いろとめそで)
色留袖とは、生地が黒色以外の留袖のことです。
既婚・未婚問わず着用できる格の高い着物です。色留袖には丸帯や袋帯を合わせます。
上半身は無地で、裾のみに絵柄が広がっている点が特徴です。
格の高さや着用シーンは、紋の数によって変わります。
- 五つ紋:第一礼装。親族の結婚式・披露宴や式典で着用。
- 三つ紋:準礼装。親戚の結婚式・披露宴や祝賀会等で着用。
- 一つ紋:準礼装。親戚の結婚式・披露宴やパーティ、子供の入学式・卒業式等で着用。
紋の数が減るほど格は低くなります。ただし、お食事会などのカジュアルなシーンで着ることはありません。
訪問着(ほうもんぎ)
訪問着は、振袖や留袖の次に格が高い着物です。着物の柄が襟や袖をまたがって続いています。
下半身のみに柄が入っている色留袖とは異なり、上半身にも柄が入っているのが特徴です。
格が高い着物なので、同じく格の高い袋帯を合わせるのが一般的です。
着用シーンは幅広く、結婚式や卒業式といったフォーマルなシーンから、お食事会や観劇といったカジュアルなシーンまで着ていくことができます。
付け下げ(つけさげ)
付け下げとは、左肩にワンポイントの柄が入った着物のことで、訪問着の次に格が高いです。
袋帯を締めれば格を上げることができ、名古屋帯や洒落袋帯を締めれば格を落とすことができます。
具体的には、袋帯を締めれば子供の卒業式や七五三に着て行けます。名古屋帯や洒落袋帯を締めれば、お食事会や観劇に着て行くことが可能です。
訪問着と間違えられることが多いですが、付け下げの柄は訪問着とは異なりワンポイントで独立しています。
シンプルかつ活用の幅が広い着物なので、着物初心者の方におすすめです。
色無地(いろむじ)
色無地とは、白生地を黒色以外の一色のみで染めた着物のことです。柄は付いていません。
格は、生地自体に織り込まれている柄の「地紋(じもん)」がついているかどうかで変化します。
紋が付いている場合は訪問着と同程度の格となります。袋帯を締めるのが一般的です。
紋が付いていない場合、袋帯を締めれば付け下げと同程度の格に、名古屋帯を締めれば小紋と同程度の格になります。
それぞれの着用シーンの例は以下の通りです。
- 紋付きの色無地:子供の卒業式・入学式・七五三・お宮参りなど。
- 紋無し・袋帯の色無地:同窓会・祝賀会など。
- 紋無し・名古屋帯の色無地:お食事会・観劇など。街着。
小紋(こもん)
小紋とは、生地全体に柄が入っている着物のことで、付け下げや色無地よりも格が低いです。
普段着として着る着物で、名古屋帯や半幅帯を合わせます。
小紋には、代表的な柄が3つあります。
- 江戸小紋:無地に見えるほど細かい柄
- 加賀小紋:一つの模様が大きく、華やかな柄
- 京小紋:自然をテーマとすることが多い柄
3つとも大きく雰囲気が異なるため、同じ小紋でもさまざまな着こなしを楽しめます。
紬(つむぎ)
紬とは、紬糸(つむぎいと)を使った先染めの織物の着物のことです。丈夫でしっかりとした生地が特徴となっています。
結城紬(ゆうきつむぎ)や久米島紬(くめじまつむぎ)など、国の重要無形文化財に指定されている種類が多いのも特徴です。
小紋同様、普段着やおしゃれ着として着ます。例えば、友人とのお食事会やお稽古ごとにぴったりです。
帯は、紬と同格である名古屋帯や洒落袋帯・半幅帯を合わせます。格が高い丸帯や袋帯を合わせることはありません。
浴衣(ゆかた)
浴衣は、最も格が低い着物です。薄手の生地が多く、通気性や速乾性に優れています。帯は半幅帯を合わせます。
長襦袢(ながじゅばん)を着ずに、素肌に直接着るのが特徴です。他の着物とは異なり、おはしょりを作る必要もありません。また、草履ではなく下駄を合わせるのも浴衣ならではの特徴です。
着用シーンとしては、夏祭りや花火大会に着ていくことが多いです。かつては湯上り着や寝巻きとして着られていました。
浴衣以外の着付けの練習台として活用するのにも向いています。
着物の着用シーンまとめ表
着物ごとの着用シーンを表にまとめました。
結婚式 | 不祝儀 | 卒業式・入学式 | 七五三 | お宮参り | 観劇・お食事会 | 同窓会 | 夏祭り | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
打掛 | ◎ | – | – | – | – | – | – | – |
黒紋付 | – | ◎ | – | – | – | – | – | – |
振袖 | ◎ | – | 〇 | – | – | – | – | – |
黒留袖 | ◎ | – | – | – | – | – | – | – |
色留袖 | ◎ | – | 〇 | – | – | – | – | – |
訪問着 | ◎ | – | ◎ | ◎ | ◎ | 〇 | 〇 | – |
付け下げ | △ | – | 〇 | ◎ | ◎ | ◎ | 〇 | – |
色無地 | △ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | 〇 | – |
小紋 | – | – | – | – | – | 〇 | 〇 | – |
紬 | – | – | – | – | – | 〇 | 〇 | – |
浴衣 | – | – | – | – | – | – | – | ◎ |
着物の着用シーンについては、地域や流派ごとにルール・マナーが設けられている場合があります。
不安な方は、友人や親族に相談した上で着物を選ぶようにしてください。
【季節別】着物の種類
着物は、季節ごとに以下の3種類を着分けるのが一般的です。
- 袷(あわせ)
- 単衣(ひとえ)
- 薄物(うすもの)
それぞれの特徴や生地を紹介します。
袷(あわせ)
袷とは、裏地がついた着物のことです。10月上旬から5月下旬の、比較的寒い季節に着用します。
生地が二枚縫い合わさっているので、冬でも暖かく過ごせます。夏は熱気がこもり暑いため、あまり着用されません。
単衣(ひとえ)
単衣とは、裏地がついていない着物のことです。6月初旬から6月末や、9月初旬から9月末の、暖かい時期に着用します。
通常、7月・8月は薄物を着ますが、暑さによっては単衣を着ても問題ありません。
例外として、ウールが生地の単衣は秋・冬・春の3シーズンで着用可能です。
薄物(うすもの)
薄物とは、裏地がついていない着物の中でも特に生地が薄い着物のことです。7月初旬から8月末の、暑い時期に着用します。
薄物の生地は以下の3つが代表的です。
- 絽(ろ):規則的に目が空いている生地。透け感があり、通気性も良い。フォーマルな場面に向いている。
- 紗(しゃ):等間隔で目が空いている生地。絽よりも透け感・通気性が優れている。カジュアル~セミフォーマルな場面に向いている。
- 麻(あさ):植物の麻から作られた生地。肌触りがさらっとしている。カジュアルな場面に向いている。
着物の季節まとめ表
着物ごとの着用時期を表にまとめました。
1月~5月 | 6月 | 7月・8月 | 9月 | 10月~12月 | |
---|---|---|---|---|---|
袷 | ◎ | – | – | – | ◎ |
単衣 | – | ◎ | 〇 | ◎ | – |
薄物 | – | 〇 | ◎ | 〇 | – |
上記はあくまで目安です。気温や体感温度によって、快適に過ごせる着物を選んでも問題ありません。
まとめ
着物の種類についてまとめると、下記のようになります。
- 打掛:結婚式に花嫁が着る着物。白無垢や色打掛など。
- 黒紋付:不祝儀の際に着る着物。喪服とも呼ばれる。
- 振袖:未婚女性の第一礼装。大振袖・中振袖・小振袖に分類できる。
- 黒留袖:既婚女性が着る最高格の着物。五つ紋が入っている。
- 色留袖:生地が黒色以外の留袖。既婚・未婚問わず着用できる。
- 訪問着:振袖・留袖の次に格が高い着物。柄が襟や袖をまたがって続く。
- 付け下げ:訪問着の次に格が高い着物。左肩にワンポイントの柄が入る。
- 色無地:白生地を一色染めした着物。地紋の有無で格が変化する。
- 小紋:生地全体に柄が入っている着物。街着として着る。
- 紬:紬糸を使った先染めの織物の着物。街着として着る。
- 浴衣:最も格が低い着物。他の着物とは違い、長襦袢やおはしょりが不要。
- 袷:裏地がついた着物。10月上旬から5月下旬に着る。
- 単衣:裏地がついていない着物。6月初旬から6月末、9月初旬から9月末に着る。
- 薄物:裏地がついておらず、生地が薄い着物。7月初旬から8月末に着る。
記事の内容を参考に、さまざまな着物を楽しんでみてください。
本記事が、着物の種類について知りたい方の参考になっていれば幸いです。