着物にはさまざまな生地が用いられていますが、今回は「木綿」を用いた着物についてお伝えしていきます。
木綿着物の概要や魅力・注意点を解説するほか、有名な種類やおすすめのコーディネートも紹介します。
木綿着物について詳しく知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。
木綿着物ってどんな着物?
木綿着物とは、その名の通り木綿で作られた着物のことです。生地が厚いため、夏以外の季節で着られることが多くなっています。
価格は比較的お手頃で、2~3万円程度で購入できます。
また、木綿着物は着崩れしづらいため、着付け初心者の方からの人気が高いです。
そもそも木綿とは
木綿は、綿やコットンと同義です。綿やコットンと聞くと、洋服にもよく使われる素材として馴染みがあるのではないでしょうか。
木綿は植物のワタの種子から取れる繊維を織ったもので、肌触りの良さや吸湿性の高さに定評があります。
木綿着物の魅力
木綿着物には、以下のメリットがあります。
- 自宅で丸洗いできる
- 比較的お手頃に購入できる
- 着付けがしやすい
- 肌触りが良く丈夫である
それぞれ詳しく説明します。
自宅で丸洗いできる
木綿着物は自宅の洗濯機で丸洗いできます。正絹やウールの着物は専門店にクリーニングを出す必要があり、自身での洗うことは難しいですが、それと比較して木綿着物はお手入れが簡単です。
簡単に洗えるため、何度も気軽に着やすい点もメリットと言えるでしょう。
比較的お手頃に購入できる
木綿着物の価格帯は2~3万円程度です。着物の中では比較的お手頃なので、さまざまなデザインや産地のものを幅広く着比べられるでしょう。
たくさんの着物を着たい方にとって、価格が安価であることは大きなメリットと言えます。
着付けがしやすい
木綿は素材として滑りづらいので、初心者の方でもきれいに着付けを仕上げられます。
同じく安価なポリエステルの着物は生地が滑りやすく、美しく着付けるには技術力を要しますが、木綿着物であれば簡単に着られて便利です。
着崩れしづらいため長時間の外出にも向いています。
肌触りが良く丈夫である
木綿はふんわりと肌触りの良い点が特徴です。吸湿性・通気性にも優れているので蒸れづらく、着ていて快適に過ごせます。
それでいて生地が丈夫なので、木綿着物は長く愛用できる点も魅力です。
木綿着物の注意点
木綿着物には上記の魅力がある一方で、このような注意点もあります。
- 格式高い場面には着ていけない
- シワ・縮みが起こりやすい
順番に解説します。
格式高い場面には着ていけない
木綿着物を着ていけるシーンは限られています。カジュアルな場に向いている着物なので、結婚式や式典などの格式高い場面には着ていけません。
木綿着物に限らずどの着物もですが、着用が適切なシーンはそれぞれ異なるので、必ず確認しておきましょう。
シワ・縮みが起こりやすい
木綿着物のメリットとして、自宅で丸洗いできることを挙げましたが、洗濯後の着物はシワがつきやすかったり、縮みやすかったりすることには注意が必要です。
乾燥機で乾かすことは絶対に避けてください。また、脱水も長時間行いすぎるとシワ・縮みの原因になるので、短時間で済ませることが重要です。
木綿着物の種類
木綿着物は、産地や織り方・染色方法によって種類が細かく分けられます。
今回は、木綿着物の中でも主な10種類を紹介します。
- 会津木綿
- 伊勢木綿
- 片貝木綿
- 松阪木綿
- 伊予絣
- 久留米絣
- 備後絣
- 弓浜絣
- 阿波しじら織
- デニム着物
一種類ずつ特徴を確認していきましょう。
会津木綿
会津木綿は、福島県の会津地方に伝わる平織りの木綿生地です。伝統工芸品に指定されています。
厚手で丈夫なので傷みづらく、何度も洗って着用できます。それでいて生地はふんわりとしており、着心地は温かいです。鮮やかな縦縞模様のデザインも大きな特徴です。
伊勢木綿
三重県の津市(伊勢地方)で作られる「伊勢木綿」は伝統工芸品に指定されています。江戸時代より長く愛され続けてきた木綿生地であり、最高級の純綿糸のみが用いられている点が特徴です。
現在、国内で伊勢木綿を製造できるのは臼井織布株式会社となっており、希少価値も高まっています。
伊勢木綿は柔らかく薄手であり、他の木綿とは風合いが異なります。また、着るほどに味わいが増していくのも伊勢木綿ならではの楽しみ方です。
片貝木綿
片貝木綿は、新潟県小千谷市片貝町で作られている木綿生地です。太さが異なる3つの綿糸を並べて織られています。
片貝木綿はシワや縮みが起きづらいため、木綿着物のデメリットを解消できます。また、生地表面に凹凸があるため裾さばきが良い点や、さらりとした肌触りとなっている点も特徴です。
松阪木綿
三重県の松阪地方で織られているのが「松阪木綿」です。天然の藍で先染めした綿糸を用いています。松阪縞と呼ばれる縦縞柄のデザインが特徴です。
現在、松阪木綿を製造しているのは御絲織物株式会社のみとなっています。
伊予絣
伊予絣は、愛媛県(伊予国)の松島市で製造される木綿生地です。日本三大絣の一つです。
複雑な模様や柄を出せる点が特徴で、デザイン性の高いものが多くあります。生地は柔らかく、肌馴染みも良いので、着心地も快適です。
久留米絣
福岡県の久留米地方で作られている「久留米絣」は、重要無形文化財に指定されています。日本三大絣の一つでもあり、高い知名度を誇っています。
久留米絣は職人が手作業で括り・染色・織りの作業を行っており、模様にもその味わい深さが出ています。素朴でありながらも温かみのある生地です。
備後絣
備後絣は、広島県福山市(備後地方)で織られる木綿生地のことで、日本三大絣の一つとして名を連ねています。
藍・柿渋・墨汁などの染料を用いているため、生地は深い色合いをしています。着物だけでなく、洋服や雑貨の素材としても多く用いられています。
弓浜絣
弓浜絣は、鳥取県の米子市と境港市(弓ヶ浜地方)で織られている木綿生地です。無形文化財と伝統工芸品に指定されています。
鳥取県は砂浜が多く農作物の栽培には向いていませんが、そういった環境でも育てられる綿を作り、生地の素材に使用しています。
鳥や花など、自然に関連した模様が多いのが弓浜絣の特徴です。
阿波しじら織
阿波しじら織は、徳島県徳島市(阿波地方)で作られる木綿生地です。表面に浮き出る凹凸のシボが特徴です。
阿波しじら織は風通しが良い上に軽いため、着物だけでなく浴衣の生地としても使われることが多くなっています。木綿着物の中では珍しく、5~9月の暑い時期に向いています。
デニム着物
デニム着物とは、綿糸を使って織られた、厚手のデニム生地の着物です。和と洋が融合した、現代らしいデザインになっています。
コーディネートを楽しみやすい着物として、多くの方に愛用されています。
木綿着物のコーディネート
木綿着物のお洒落なコーディネートを4つ紹介します。デザイン選びや小物との組み合わせの参考にしてみてください。
伊勢木綿のコーディネート
伊勢木綿に半幅帯を合わせたコーディネートです。藍色の縦縞模様が美しく、花柄の帯にもマッチしています。
久留米絣のコーディネート
久留米絣に八寸帯を合わせたコーディネートです。久留米絣ならではの白い模様が目を惹きます。藍色と白の二色でまとめた大人らしい装いです。
阿波しじら織のコーディネート
梅雨のジメジメした時期でも快適に着用できるのが阿波しじら織の良さです。白を基調とした明るい木綿着物に、柄が特徴的な名古屋帯を合わせたコーディネートとなっています。
デニム着物のコーディネート
濃い藍色のデニム着物に半幅帯を合わせたコーディネートです。和を象徴する着物も、デニム生地を用いると洋風な雰囲気を醸し出し、現代的な印象となります。ビシッと決めすぎず、カジュアルな装いの雰囲気を演出できます。
木綿着物のよくある質問
木綿着物に関するよくある質問をまとめました。
※タップで質問の回答に飛べます。
木綿着物は洗濯できる?おすすめの洗い方は?
木綿着物は洗濯できます。洗濯する際は必ずネットに入れて、おしゃれ着用洗剤・中性洗剤を用いてください。洗濯モードは「おしゃれ着モード」を推奨します。
ただし、できるだけ生地を傷めないためには、洗濯ではなく手洗いの方がおすすめです。
大きめの桶に木綿着物を入れ、着物全体に水を浸透させたら押し洗いをするだけで問題ありません。
洗った後の脱水は、長く行いすぎないことが重要です。洗濯機の脱水モードを20~30秒程度回したら、取り出してシワを伸ばしながら干しましょう。水分が多く残っている程度が丁度良いです。
長く脱水しすぎるとシワが跡となって残ってしまうので注意してください。
木綿着物は冬も着て良い?
木綿着物は、冬でも問題なく着用できます。
木綿着物は単衣仕立てのため冬に着て良いか迷う方も多いようですが、生地自体が厚手で保温性も高いため、冬でも温かく着られます。
ただし、阿波しじら織のような薄手の木綿は冬に適さないため注意が必要です。
まとめ
本記事では、木綿着物の基礎知識を徹底解説してきました。
木綿着物には「自宅で丸洗いできる」「比較的お手頃に購入できる」「着付けがしやすい」「肌触りが良く丈夫である」という魅力がある一方、「格式高い場面には着ていけない」「シワ・縮みが起こりやすい」といった注意点もあります。
また、種類によってデザインや風合いを始めとした特徴が異なるため、それぞれ違う楽しみ方があります。
本記事を参考に、これから木綿着物を楽しんでみてください。
木綿着物の知識やコーディネートについてより詳しく学びたい方は、着付け教室で学ぶのもおすすめです。以下ページでおすすめの着付け教室を紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。