卒業式で女性が着ることの多い「袴」。
名前自体は聞きなじみがありますが、次のように考える方も多いのではないでしょうか。
「袴と着物って何が違うの?」
「袴にはどんな種類があるんだろう?」
「卒業式の袴はどうやって選べば良いの?」
そこで本記事では、袴と着物の違いや、袴の種類・選び方・小物について解説します。
袴に関する疑問をお持ちの方は、ぜひ最後までお読みください。
袴と着物の違い
袴と着物の違いを知るために、それぞれの意味や特徴を確認しましょう。
袴とは
袴とは、腰から下に着る和装のことです。洋服でいうズボンやスカートのようなものです。
性別や年齢・結婚の有無にかかわらず着用できます。
男性の場合、フォーマルな場面では袴を穿くのが基本的なルールです。結婚式や成人式で着用する方が多いです。
女性の場合、多くの方が卒業式で袴を着ます。もちろん卒業式以外で着ても問題ありません。
着物とは
着物とは、日本の伝統的な和装の総称です。
袴を始めとし、留袖・振袖・訪問着・付け下げ・色無地・小紋・紬・浴衣などをまとめて着物と呼びます。
着物の種類についてより詳しくは「着物にはどんな種類がある?代表的な11種類と季節別の3種類を紹介」の記事をお読みください。
袴は着物の一種
上記から分かる通り、着物と袴は全くの別物ではありません。袴は着物の一種です。
さまざまな種類の袴を着物と呼ぶことはできても、振袖や留袖などの着物を袴と呼ぶことはできません。
また、袴は「袴+袴以外の着物」を着た姿を指すこともあります。例えば、「袴+振袖」や「袴+訪問着」などです。
袴の種類
袴の種類は、大きく以下の2つに分けられます。
- 行灯袴(あんどんばかま)
- 馬乗袴(うまのりばかま)
1種類ずつ特徴を見ていきましょう。
行灯袴(あんどんばかま)
行灯袴とは、スカートのような形をした袴のことです。内股部分に襠(まち)がなく、行灯のような形をしていることから行灯袴と呼ばれています。
明治時代に行灯袴が女学生の制服として採用されてから、女性の行灯袴文化が広まっていきました。
現代の卒業式でも、女性が着る袴はほとんどがこの行灯袴です。
また、かつては女性が着る袴として知られていましたが、現在では男女関わらず着用します。
襠がないためお手洗いに行きやすいという理由で、女性だけでなく男性にも広まったとされています。
馬乗袴(うまのりばかま)
馬乗袴とは、ワイドパンツのような形をした袴のことです。内股部分に襠があるため、襠有袴(まちありばかま)とも呼ばれます。
元々は男性が馬に乗るための袴として使われていました。江戸時代までの男性の正装と言えば馬乗袴でした。
しかし、馬乗袴はお手洗いの際に紐をほどく等の手間がかかり使い勝手が良くないため、現代ではわざわざ馬乗袴を選ぶ方は多くないようです。
剣道や弓道を行う際は馬乗袴を着用します。
袴の選び方
袴を選ぶ流れは次のようになります。
- まずは着物を選ぶ
- 着物との色合いを見て袴を選ぶ
順を追って解説します。
まずは着物を選ぶ
着物は、「色や柄の意味」・「体型」・「髪色」を基準に選びましょう。
それぞれの詳しい選び方を説明します。
色や柄の意味で選ぶ
着物を選ぶ際は、色や柄に着目してみましょう。
以下で色・柄が持つ意味の例を取り上げますので、参考にしてみてください。
【着物の色が持つ意味】
- 赤:情熱・生命力・魔除け
- 青:知性・高貴さ・若さ
- 緑:調和・安定・健康
- 紫:高貴さ・優雅さ・気品
【着物の柄が持つ意味】
柄の名前 | 柄の意味 |
---|---|
松竹梅(しょうちくばい) | 生命力、忍耐力 |
桜文(さくらもん) | 豊かさ、物事の始まり |
扇(おうぎ) | 繁栄、発展、開運 |
鳳凰(ほうおう) | 平和、幸せ |
七宝文(しっぽうもん) | 円満、ご縁 |
兎(うさぎ) | 飛躍、平和 |
丸文(まるもん) | 力強さ、永遠の幸せ |
観世水(かんぜみず) | 未来永劫(みらいえいごう) |
市松文(いちまつもん) | 発展、繁栄 |
立涌文(たてわくもん) | 上昇、運気アップ |
着物の柄の意味についてより詳しくは、「着物の柄の意味、知っていますか?主な25種類を紹介します」の記事をお読みください。
体型で選ぶ
着物の色や柄は体型から選ぶのも良いでしょう。
背が高い方は、大きめの柄や原色が似合います。大胆で個性的なものを選んでみましょう。
反対に、背の低い方は小さな柄を選ぶと全体のバランスが取りやすくなります。色はパステルカラーなどの可愛らしい印象を与えるものが似合います。
ふくよかな方は、濃い色を選ぶと引き締まった印象を与えやすいです。柄はシンプルなものを選ぶとスッキリと見えます。
その一方で、細身の方は暖色系の色と大きな柄の着物を選ぶと優しい印象に仕上がりやすくなります。
髪色で選ぶ
全体的なバランスを良くするためには、髪色に合わせて着物を選ぶことも重要です。
髪色が明るい方は、水色や薄ピンク色などのパステルカラーを選ぶと優しげな印象に、深緑色や紫色などの深みがある色を選ぶと大人らしい印象になります。
髪色が暗い方は、明るめの色を選ぶと垢抜けて見えます。反対に、暗めの色をチョイスすると全体的に重たいイメージになってしまうでしょう。暗い色の着物を選ぶ際は、金や黄・白などの明るい柄が入ったものを選ぶことをおすすめします。
着物との色合いをみて袴を選ぶ
着物が決まったら、その着物との色合いを見て袴を選びましょう。
同系色
袴は着物と同系色のものを選ぶ方が多いです。
同系色とは、似た色のことを指します。着物が赤色なら、橙色や茶色などが同系色にあたります。
同系色で揃えると全体にまとまりが出るため、上品で大人らしい印象を与えられるでしょう。
反対色
「派手なコーディネートをしたい」「袴姿でインパクトを与えたい」と考える方は、反対色の袴を選ぶと良いでしょう。
反対色とは、その名の通り反対の色のことを指します。着物がピンク色なら緑色、紺なら黄色、橙色なら青色です。
反対色を選ぶと、コントラストが生まれてそれぞれの色が鮮やかに映えます。はつらつとしたイメージを持ってもらえるでしょう。
柄のバランスも重要
袴選びの際は、色だけでなく柄のバランスも考えましょう。
着物の柄が大きくて派手なのであれば、袴はシンプルで無地のものが合います。
反対に、着物の柄が小さく細かいのであれば、袴にも柄を入れた方がバランスが整います。
袴に合わせる小物
袴に合わせる小物は主に以下の5つです。
- 履物
- 帯
- 長襦袢(ながじゅばん)
- 半襟
- バッグ
各小物の特徴と、袴に適した選び方を紹介します。
履物
袴に合わせる履物は、草履かブーツを選びます。全体のバランスやあなた自身のイメージから、どちらが良いかを決めましょう。
草履
草履を履く場合は足袋(たび)も一緒に履くため、足下の印象は白色になります。
サンダル感覚で簡単に着脱できる点や、どんな着物にもマッチする点がメリットになります。
反対に、デメリットは慣れていないと歩きづらかったり痛かったりする点です。
和装に草履は定番なスタイルなので、迷った場合は草履を選べば無難でしょう。
ブーツ
袴に合わせるブーツは基本的に黒色です。袴に黒色のブーツを合わせると、全体が大正ロマンな雰囲気に仕上がります。
また、ブーツにはヒールがあるので、身長を高く見せることもできます。
さらに、草履とは違って普段から履き慣れているため、当日の歩きづらさや靴擦れの心配もいりません。
ただし、ブーツは草履と比べると着脱がしづらい点や、靴紐がほどけるリスクがデメリットになります。靴紐を結び直す際に着崩れする可能性があるので注意が必要です。
スタイルをよく見せたい方や大正ロマンな雰囲気に仕上げたい方、歩きやすい格好で過ごしたい方におすすめです。
帯
袴に合わせる帯を「袴下帯(はかましたおび)」と呼びます。
袴下帯とは、長さ3.8m程度・幅13cm程度の帯のことです。
袴は他の着物とは異なり、帯結びが袴の下に隠れます。帯が見えるのは、着物と袴の間の5cm程度のみです。
振袖のように派手に帯結びを見せることはありませんが、だからこそ色や柄で与える印象が大きく変わります。
袴の色の反対色を選ぶとアクセントを出せるのでおすすめです。
長襦袢(ながじゅばん)
長襦袢とは、着物の下に着るインナーウェアです。
卒業式などのフォーマルな場面では白色を選ぶのが一般的ですが、薄ピンクやベージュでも問題ありません。
通常、長襦袢のサイズは身長×0.85cm前後で計算されます。他の着物を着る予定がある方は通常の長襦袢を使うと良いでしょう。
しかし、袴以外を着る予定のない方は、袴専用の長襦袢を買った方が着つけが簡単です。
袴専用の長襦袢のサイズは身長×0.65cm前後で、通常の長襦袢よりも短めになっています。
半襟
半襟とは、着物の下に着る長襦袢につける襟です。袴姿の襟元からチラッと見えます。襟元は最も顔に近い場所なので、半襟の色や柄によって袴全体のイメージは大幅に変化します。
柄が刺繍されているものや染めてあるもの、無地のものなど様々な種類があるので、実際に襟元にあてて試してみましょう。
バッグ
袴に合わせるバッグは、巾着やがま口など和装用のバッグがおすすめです。成人式で使ったバッグをそのまま使用しても構いません。
卒業式の場合は、配布物などが多く配られることが予測できるため、大きめのサブバッグも持っておくと安心です。
まとめ
本記事の内容をまとめると、以下のようになります。
- 袴とは、腰から下に着る和装を指す
- 袴は着物の一種である
- 行灯袴は、スカートのような形をした袴。内股部分に襠がない
- 馬乗袴は、ワイドパンツのような形をした袴。内股部分に襠がある
- 女性が卒業式で着るのは行灯袴
- 剣道や弓道を行う際に着るのは馬乗袴
- 袴に合わせる履物は、草履・ブーツの2種類
- 袴に合わせる帯のことを袴下帯という
本記事の内容をもとに、袴のコーディネートを楽しんでみてください。
この記事が、袴の基本的な知識を知りたい方の参考になれば幸いです。